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コンテキストAIができるまで 番外編。復習コース構想を「今の状態」と「目指す状態」から考える

コンテキストAIができるまで 番外編。復習コース構想を「今の状態」と「目指す状態」から考える

研修を受講し終えた人が、確認クイズでいくつか間違えていたとします。そのとき、もう一度すべての教材を受けてもらう必要があるのでしょうか。あるいは、間違えた問題だけをもう一度解けばよいのでしょうか。

実際には、その問題を理解するために必要だった、もっと前の知識まで戻ったほうがよい場合もあります。応用的な問題でつまずいた原因が、その応用部分そのものではなく、前提となる用語や基本ルールの理解にあることもあるからです。

「コンテキストAIができるまで」の連載では、これまで5回にわたって、社内資料から知識を取り出し、学習目標を決め、学ぶ順番を設計し、教材を生成し、その結果を見るところまでをご紹介してきました。

今回は番外編として、そのさらに先にある「復習コース」の構想について書きたいと思います。なお、今回ご紹介する復習コースは、現時点では提供前の構想・開発中の機能です。

ダッシュボードに数字が出た後、何をするのか

前回の「効果測定編」でお伝えした通り、コンテキストAIは現在、受講者の進捗や確認クイズのスコアをダッシュボードで確認するところまでを実現しています。

誰がどこまで受講しているのか、確認クイズでどのような結果が出ているのかを見ることで、フォローが必要な可能性のある受講者や、理解されにくかった可能性のある内容に気づくことができます。

ただし、そこで見えるのは、あくまで「気づくためのきっかけ」までです。

今の仕組みでは、「どこかでつまずいている可能性がある」と気づくことはできますが、その人が次に何を学べばよいのかまでは自動では出てきません。正答率が低い知識ポイントが見つかったとしても、その先に何を、どのように学び直せばよいのかを考え、必要な教材を用意するのは、今のところ研修担当者の役割です。

私自身、教材を作る側にいると、どうしても「教材を完成させること」に意識が向きます。しかし、受講後の結果を見ると、教材を作った時点では見えていなかったものが出てきます。

そこで初めて、「では、この人には次に何を学んでもらえばよいのか」という問題が残ります。

ダッシュボードに数字が出るだけでは、教育はまだ終わっていません。その数字を見た後に何をするかまで考えて、初めてフォローにつながるのではないかと思っています。

「終わらせなきゃ」と「理解してほしい」の間にあるもの

この復習コースを考える背景には、必須研修で起こりやすい課題があります。

必須研修は受講することが決められているため、受講者にとっては「やらなければならないもの」という意識が先に立つことがあります。忙しい業務の中で、「今月中に受講してください」という案内が届けば、まず期限までに終わらせようと考えるのは自然なことです。

その結果、内容を理解すること以上に、受講を完了すること自体が目的になってしまうこともあります。

一方で、研修を企画する側には、「この内容は、きちんと理解してほしい」という意図があります。ここに、受講者の「終わらせなきゃ」という意識と、企画する側の「理解してほしい」という意図の間にギャップが生まれます。

復習コースは、このギャップを少しでも小さくするための一つの試みです。

一度受講を終えた人でも、確認クイズの結果から、もう一度確認したほうがよい可能性のある内容が見つかった場合には、その部分を学び直す機会を用意します。

ここで大切なのは、すべての教材を最初から受講し直してもらうことではありません。すでに理解できている可能性の高い内容まで繰り返すのではなく、必要なところへ復習を絞ることで、受講者の負担を増やしすぎずに、理解が十分ではなかった可能性のある知識へ戻る道筋を作りたいと考えています。

「終わらせること」で止まっていた学習を、もう一歩「理解すること」へ近づける。そのための仕組みです。

間違えた問題だけを、もう一度出せばよいのか

復習というと、間違えた問題をもう一度解いてもらう方法が、まず思い浮かびます。もちろん、それで確認できる場合もあります。

しかし、応用的な問題を間違えたからといって、原因がその応用部分にあるとは限りません。

たとえば、ある業務上の判断を問う問題に間違えたとします。その判断に、複数のルールや条件を理解していることが必要だった場合、判断方法だけをもう一度説明しても、うまく理解できない可能性があります。

そもそも前提となる用語の意味を誤って理解していたり、基本ルールの一部を見落としていたりすれば、そこまで戻る必要があります。

これは、シーケンス設計で扱った「知識同士の依存関係」と同じ考え方です。ある知識を理解するために、先に何を知っておく必要があるのか。その関係をたどりながら、学び直す場所を考えます。

そのため、復習コースでは、間違えた問題そのものへ戻るだけではなく、その問題を理解するために必要だった前提知識まで戻る流れを作りたいと考えています。

「今の状態」と「目指す状態」の間を考える

この復習コース構想を考えているとき、以前書いた「圏論から考える教材設計」という記事とのつながりに、後から気づきました。

その記事では、対象そのものだけを見るのではなく、対象同士の関係性に注目するという考え方について書きました。今回の復習コースにも、それと重なる部分があります。

もちろん、圏論そのものをコンテキストAIへ実装しているという意味ではありません。数学的な圏論の仕組みを使って、受講者の理解状態を計算しているわけでもありません。

発想として重なっているのは、「今どこにいるのか」と「次にどこへ行きたいのか」の関係から、その間に必要なものを考えるという部分です。

確認クイズの結果から見える理解状況を、「現在の状態」を考えるための一つの手がかりとして扱います。そして、学習目標として設定した「目指す状態」との間に、どのような知識が必要なのかを考えます。

たとえば、「基本的なルールを覚えている」という状態から、「実際の業務で状況に応じて判断できる」という状態へ進むためには、ルールを知っているだけでは足りません。

ルールが必要な理由を理解し、通常時の対応を知り、例外となる状況を見分ける必要があるかもしれません。その途中のどこかが抜けているのであれば、そこを復習するという考え方です。

クイズの結果から受講者を一つの点数として見るのではなく、目指す状態へ向かう途中の、どこをもう一度確認すべきなのかを見る。復習コースでは、そのような捉え方をしたいと考えています。

クイズの点数は、その人の理解そのものではない

ここで注意しなければならないのは、確認クイズの結果が、その人の理解状態を完全に示すわけではないということです。

問題に間違えた理由は、知識が不足していたからかもしれませんし、問題文の意味を取り違えたのかもしれません。業務経験が少なく、問題に書かれた状況をうまく想像できなかった可能性もあります。

反対に、正解していても、選択肢を覚えていただけかもしれませんし、偶然正解した可能性もあります。

そのため、復習コースは「この人は理解できていない」と判定するためのものではありません。クイズの結果から、もう一度確認したほうがよい可能性のある知識を見つけ、その人が学び直すための案を示すものです。

前回の効果測定編でも書きましたが、数字が示すのは、あくまで結果です。その数字の背景に何があったのかまでは、AIにもダッシュボードにも完全には分かりません。

復習コースの案が出たからといって、機械的にその教材を送り直せばよいわけではありません。なぜ間違えたのかを確認し、人による説明が必要なのか、実務での練習が必要なのかを考える場合もあります。

ここには、引き続き人の関わりが必要です。

AIが作るのは、復習の「答え」ではなく案

現在開発を進めている構想では、確認クイズの結果から正答率が低い知識ポイントを検出し、その知識と関係する前提知識をもとに、復習コースの案を作ることを考えています。

AIが作った復習コースの案を管理者が確認し、元資料や業務上の重要性、受講者の状況に照らして、必要に応じて内容を調整する。そのうえで、対象となる受講者へ復習の機会を用意するという流れです。

この役割分担は、これまでのコンテキストAIと変わりません。

ナレッジ抽出、学習目標設計、シーケンス設計、コンテンツ生成でも、AIが案や教材の土台を作り、人が確認してきました。復習コースでも、AIが「あなたはこれを理解していない」と断定し、すべてを自動的に決めるものにはしたくありません。

AIが得意なのは、複数の情報を整理し、関係する知識をたどり、復習内容のたたき台を作ることです。

一方、その人がなぜつまずいたのか、今どのような業務を担当しているのか、その知識がどの程度重要なのかを見るのは、人の役割です。

この機能で減らしたいのは、人の関与ではありません。研修担当者が毎回ゼロから復習内容を考える負担です。

効果測定を、次の学習につなげる

これまでの連載では、社内資料から教材として扱う知識を整理し、誰に何を学んでもらうのかを考え、到達点へ向かう順番を設計し、スライド、音声ナレーション、確認クイズへ変えるところまでをご紹介してきました。

そして、教材を配信した後には、進捗やクイズ結果を見ることで、どこに課題がある可能性があるのかを確認します。

現在のコンテキスト化メソッドは、ここまでが一つの大きな流れです。

復習コースは、その流れをさらに先へ進めようとする構想です。

教材を作り、配信し、結果を測り、その結果を見て見直す。そして、必要であれば、もう一度学ぶ機会へつなげる。

この循環を途中で止めない仕組みにしたいと考えています。

効果測定で「この部分はもう一度確認したほうがよさそうだ」と気づいても、その後の対応に大きな手間がかかれば、すべての受講者へ丁寧にフォローすることは難しくなります。

だからこそ、AIによって、次に確認すべき知識の案まで出す。そうすることで、研修担当者は教材を一から作り直すことではなく、その人に本当に必要な支援を考えることへ時間を使えるようになります。

教材を作ることから、学びを回すことへ

教材を作る工程は、AIによって大きく支援できるようになってきました。

しかし、企業の教育は、教材を作って配信すれば終わるものではありません。実際に学ばれた結果を見て、十分ではなかった可能性のある部分があれば、もう一度学ぶ機会を作る。その結果をまた見て、必要であれば教材や説明方法を見直します。

教材を一つ完成させることよりも、この循環を回し続けられることのほうが、企業の教育では重要なのではないかと思っています。

私たちが掲げているのは、「教育設計のない会社をなくす」という目的地です。

そのためには、教材を作るところだけを効率化しても十分ではありません。何を教えるかを考え、どこまで学んでほしいかを決め、学ぶ順番を設計し、教材として届ける。そして、その結果を見て、必要な人にはもう一度学ぶ機会を作る。

この循環を、より多くの企業が、より少ない負担で回せるようにすることが必要だと考えています。

AIによって教育担当者を不要にしたいわけではありません。むしろ、AIが教材づくりや復習案の作成を支援することで、人は受講者の状況を見て、「ここが分かりにくかったですか」「もう一度ここを確認してみましょう」と、必要な声をかけることに時間を使えるようになります。

この役割分担を、効果測定の先にある学び直しまで広げたいと考えています。

「コンテキストAIができるまで」の連載は、今回で一区切りとなります。

復習コース構想の詳細については、会社ブログでご紹介しています。

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