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共生の黎明 #34 第11章 第10節:手のひらの灯 連続小説

街の中心にあるコミュニティセンターでは、週末になると静かな説明会が開かれていた。
「アヤ/ユラ」という新しい仕組みを知ってもらうための、小さな集まりだ。

チラシや宣伝ではなく、口コミで集まった人々が、丸テーブルを囲んで耳を傾けている。

そこに立つ説明役の人物は、名乗らない。
ただ淡々と、けれど優しく語る。

「これは、“ありがとう”を送るための仕組みです。
アプリを開いて、相手を選んで、想いを一つ添える。それだけです」

端末の画面には、「ユラを送る」「アヤを確認する」のボタン。

前者は“感謝や賞賛”を伝えるもの、後者は“感謝や共感による、あなたへの信頼の蓄積”を確認するもの。

数値ではなく、やりとりの“記録”と“余韻”が可視化される仕組み。
誰が、どんな気持ちでそれを受け取ったかは、受信者の反応によっても微かに伝わる。
返された「一言」や「光の色」によって、温度感や響き方が浮かび上がってくる。
まるで手紙を受け取ったときのような、やわらかな余白を持って。

ある参加者は、
「開発者は誰なのか」
と尋ねた。

その質問に対し、説明役は明確には語らなかった。
「図書館の掲示板に貼られた“灯火の章句”を見つけ、それに共感した人です。
その人物がこの仕組みを世に送り出してくれました。」とだけ、笑顔で答えた。

説明役は、少しの間を置いてから再び口を開く。
「現在、このアプリは試験運用的な面もあるので、この考えに共感してくれた方を招待制でご案内してます。
こちらのQRコードを読み込んでくだされば、招待ページが表示されます。」

参加者の一人は、QRコードを読み込もうと自身の端末をポケットから取り出した。

説明役は話を続ける。
「もちろん、今日は話を聞くだけでも結構です。
まだ時期は未定ですが、今後はユーザー同士の紹介制へ移行し、
さらに共感の輪が大きく広がったら一般解放を予定してます。
興味はあるけど、今は迷っている方はその時に始めるのでも良いかなと思います。」

こうした説明会が繰り返され、仕組みは少しずつ、街のなかに根を下ろしていった。
アプリへの参加者も、回を重ねるごとに増えていった。

レイとソウも、その日の説明会に足を運んでいた。
参加者の質問に静かに応える者として、
会場の後方から説明役を見守っていた。

ある日、ソウが言った。

「“灯火の章句”、本当に届いたんだね。
あの言葉が、こうして“かたち”になったのなら、私たちはきっと…」

レイは頷いた。

言葉が蒔かれ、それを受け取った誰かが形にし、それをまた別の誰かが広げていく。

アヤ/ユラのアプリは、今も静かに進化を続けている。
必要なとき、必要な場所に、そっと差し出される光。

レイは自分の端末に指を添えた。
今日の説明役に「ありがとう」と一つ、ユラを送る。

それは、はじまりでもあり、継続の証でもあった。


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