「自分には縁のない世界だった」ってね
いつものスーパー。
いつもと同じ通路、同じ棚。
たまたま目に入った店頭の広告ポップに、ひとりの女性が映っていた。30代半ばくらいに見える、褐色がかった肌の色をした二重のアジア人のモデルさん。年齢も外見も、私とそう遠くないように見える人。
私は彼女を知らない。直接会ったこともなければ、どんな人なのかも分からない。それなのに、その広告を見た瞬間、胸の奥を強くえぐられ立ち尽くしてしまった。
理由はすぐに分かった。
これまでの、選ばれなかった経験が一気にフラッシュバックしたからだ。
選考に行って、何度も落ちたこと。やっと受かったと思ったら、結局日の目を見なかった仕事。撮影まで終えたのに、完成した作品の中に自分の姿がなかった、あの日のことも。
思わず目頭が熱くなる。
「なんで彼女は選ばれて、私は駄目だったんだろう。」
見ず知らずの、ただ広告に写っているだけのモデルさんに対して抱いた感情。彼女からしてみれば、とんだとばっちりだろう。
最初は、私が手に入れられなかったものを手にしている彼女への嫉妬だと思った。でも少し落ち着いて考えてみて、違うと気づいた。彼女のことは憎くもなんともない。
あの感情の矛先は、彼女ではなかった。自分だった。
選ばれなかった自分。悔しさを飲み込んで、何事もなかった顔でやり過ごしてきた自分。「私には縁のない世界だった」と言い聞かせながら、ずっと心のどこかで引っかかっていた自分。
そうやって生きてきた自分への、まだ整理しきれていない思いが一気に顔を出した。これが、「まだ諦めきれていない自分と正面から向き合う」というやつなのだろうか。
この煮え切らなさは、どの方向に向ければ良いのだろう。
mari.
あとがき
選ばれない経験をして苦しかった時、鈴木亜美さんのnoteを何度も読みました。選ばれない悔しさや虚しさを赤裸々に綴っていらっしゃり、心に沁みます。私は彼女のようなモデルさんでは全くないですが、毎回興味深く文章を読ませてもらっています。キラキラしているように見えるモデル業界の裏側も面白いです。
