見出し画像

高層オフィスで働いて気づいた、効率の悪さについて


高層の奴隷

私はオフィスワーカーとして働いている。

若い頃、田舎育ちでブルーカラーに従事していた。あの頃は野心だけが先走り、「いつか、あの高いオフィスで働いてやる」と息を巻く、元気な――いや、無知な人間だった。

程なくして経験とスキルを身につけ、転職は無事に成功した。 まるで『アメリカン・サイコ』のパトリック・ベイトマンのように、肩を風に切って歩いていた気がする。周囲を見渡せば、若手の企業戦士たちも概ね同じ顔をしている。いや、私も含めてだ。

テナントには大手不動産、コンサル、商社、法律事務所――ストイックさを煮詰めたような業種が並ぶ。幸い私はそこに該当しない職種にいるので五体満足だ。サシなら一撃でやられそうな雰囲気の人間ばかりである。

昼休みという名の異界

普段は皆、「俺が会社を回したる」という顔で息巻いている。その反動は、昼休みに顕著に現れる。

こっからは汚い話で申し訳ない。ここの章は苦手な方は飛ばしてください。
男子トイレの個室は、どのフロアも満席だ。同時多発的にウンコしているのかというと、そうではない。スマホをいじる程度ならまだ可愛い。中には飲食をしている者もいる。泣き声やうめき声まで聞こえてくる。なかなかのカオスだ。

高層階という閉鎖空間

高層オフィスは、高層ゆえに上から街を俯瞰できる。しかし、空気やノイズで気を紛らわすことは難しい。正直、外でランチをした方が気分はいい。

冗長性を削ぎ、均一化された各フロアの構造は、人をじわじわ混乱させる。60階でも3階でも、内装はほぼ同じだ。下界の様子も分かりずらい。
その不気味な均質さが、焦燥感を生む。

近年の大規模倉庫も同様で、給湯室、トイレ、エレベーターホールは金太郎飴状態。便利で綺麗なはずなのに、どこか不気味だ。

加えて、気圧の変化は思った以上に顕著で、耳に違和感が残る。偏頭痛持ちの私にとっては、これが地味に効く。

効率という名の非効率

効率の話もしよう。

エレベーターは常に混雑している。満杯で見送ることもしばしばだ。物価高と土地開発の影響で、昼飯代は高い。喫煙所も指定の場所まで時間がかかり、とても「心休まる1時間」とは言い難い。

そこに、職場の人間関係を考慮した昼食の立ち回りが加わる。下手をすると、休憩時間の過ごし方のほうが、勤務時間そのものより重要なのではないかと思えてくる。

地方の昼休みを思い出す

地方勤務の頃は、車の中で昼寝をしたり、ふらっと外出することができた。社食で安い定食を選ぶのも、実に健康的だった。

付きっきりが苦手な人、口下手な人、一人が好きな人には、あの環境は案外優しい。少なくとも、今よりは。

オチのない結論

オチらしいものはない。

もし私が経営者で、会社を構える立場になったとしたら、見栄で高層階のオフィスを選ぶことはしないだろう。低層階で、いつでも地上に降りられる場所がいい。

高層階で失われる移動時間は、確実に機会損失だと思う。

——そんなことを考えながら、今日も今日とてエレベーターを待っている。


いいなと思ったら応援しよう!