言葉は、刃にもなる。
夜、8時過ぎ。
教室の灯りだけが、まだついていた。
机の上には、生徒たちの作文が山になっている。
その隣で、
スマホが光った。
「怪しいDM」の通知だった。
一瞬、
指が止まった。
……最近、多い。
こういう通知を見るたび、
少し身構えるようになった自分がいる。
そんな夜、
ふと目に留まったのが、
一本のnote記事だった。
「怪しいDMに気をつけてください」。
投資詐欺。
情報商材。
ロマンス詐欺。
昔からある話のはずなのに、
SNSのおかげで、
ずいぶん身近になった気がする。
もちろん、
気をつけなければいけない。
それはそうだ。
でも、
記事を読み終えたあと、
私が引っかかったのは、
少し違う場所だった。

「詐欺」の、
「詐」という字。
調べてみると、
「詐」には「言」が入っている。
言葉でだます、
という意味だという。
なるほど、
と思った。
昔の人も、
人をだますのは、
力ではなく、
言葉だと知っていたのだ。
少し、
怖くなった。
――と、
同時に思い出した夜がある。
授業で、ある生徒に言った、
たった一言。
「この言い方、ちょっと変ですよ。」
正しい使い方を教えたつもりだった。
でも、
次の授業、その生徒は、
作文を白紙のまま出してきた。
「先生に、また直されるのが怖かった。」

その一言で、
自分の言葉が、
いつの間にか刃になっていたことを知った。
正しい言葉が、必ずしも、
相手を助けるわけではない。
言葉は、
人をだますこともできる。
でも、
同じ言葉で、
人を安心させることも、
励ますこともできる。
同じ「言」なのに、
使う人によって、
まるで違うものになる。
あの生徒には、
今度は違う言い方をした。
「ここ、面白い表現ですね。もう少し聞かせてください。」
白紙だった作文が、
次の週には、
埋まっていた。
怪しいDMには、
気をつけようと思う。
でも今日、
一番気をつけようと思ったのは、
自分が使う言葉やった。
――こわかとは、
詐欺だけやなかった。
人を傷つける言葉は、
いつも自分の口から出るのかもしれん。

もし今日の記事で、
少し立ち止まっていただけたなら。
普段、どんなことを考えながら書いているのか、
こちらにもまとめています。
▶ 焦って、迷って、比べて。それでも書いています。
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