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GPSが使えないなら、Starlinkの電波を使えばいい 〜市販機材とアイデアで実現するDIY航法〜


こんにちは、GIS芸人のいりやま です。


スマートフォンの地図アプリ、カーナビ、物流管理——私たちの生活は GPS に支えられています。しかし、その GPS が「使えなくなる」場面が世界で増えているのをご存知でしょうか。

EurekAlert で公開されたオハイオ州立大学の研究によると、GPS が妨害された環境でも、 Starlink や OneWeb といった通信衛星の電波を「流用」 することで位置を測定できることが実証されました。しかも使ったのは市販のソフトウェア無線機とラズベリーパイ。専用機器ではなく、手に入りやすい機材と工夫で難局を乗り切る、まさに「逆転の発想」です。


GPS妨害という現実

GPS の信号は、高度約2万km の軌道を回る衛星から届きます。この信号は非常に微弱で、悪意のある妨害装置(ジャマー)で簡単にかき消されてしまいます。

近年、紛争地域や国境付近では GPS 妨害が日常化しています。民間航空機が航路を見失う事例も報告されており、「GPS に頼りすぎるリスク」が現実の問題になっています。また、北極圏のような高緯度地域では、そもそも GPS 衛星の配置が手薄で、精度が大きく落ちるという弱点もあります。

GPS衛星とStarlink衛星群の軌道高度の比較図

「通信衛星の電波を使えばいい」という発想

ここで登場するのが、Starlink や OneWeb といった「メガコンステレーション」と呼ばれる通信衛星群です。Starlink だけで7,000機以上、OneWeb は約600機が地球を周回しています。

これらは本来、インターネット通信のための衛星です。しかし研究チームは、電波さえ出ていれば位置測定に使えるという逆転の発想で挑みました。

鍵となる技術が「ドップラー航法」です。救急車が近づくとサイレンの音が高く、遠ざかると低く聞こえる——あのドップラー効果を利用します。衛星が頭上を通過するとき、電波の周波数がわずかに変化します。複数の衛星からこの変化を観測すれば、自分の位置を逆算できるのです。

グリーンランド沖での実験

研究チームは、グリーンランド西岸沖を航行する船で実験を行いました。

使用した機材は、市販の SDR(ソフトウェア無線機)とラズベリーパイ。専門家でなくても入手できる、ごく一般的な機材です。GPS を完全に切った状態で、Starlink と OneWeb の電波だけを頼りに航行しました。

その結果、約8km を航行して、誤差はわずか27m。GPS なしでも、十分に実用的な精度で位置を把握できることが示されました。

グリーンランド沖でStarlink電波を受信して航行する調査船のイメージ

なぜ LEO 衛星は妨害に強いのか

低軌道衛星(LEO:Low Earth Orbit)には、GPS にはない強みがあります。

信号が強い:高度550km 程度を飛ぶ Starlink の電波は、高度2万km の GPS より地上に近いため、信号強度が数千倍にもなります。妨害電波でかき消すのが格段に難しくなります。

数が多い:GPS 衛星は約30機ですが、LEO 通信衛星は数千〜数万機。一部が妨害されても、残りの衛星でカバーできます。

予測困難:どの衛星の電波を使っているか外部から特定しにくく、標的を絞った妨害が困難です。

この研究は IEEE Military Communications Conference で発表され、最優秀論文賞を受賞しました。軍事的にも重要な技術として注目されています。

まとめ

「GPS がダメなら、そこら中を飛んでいる通信衛星を使えばいい」——この発想は、既存インフラの「別の使い方」を見つけるという点で示唆に富んでいます。

位置情報技術は日々進化していますが、その本質は「複数の情報源を組み合わせて、より確かな答えを得る」こと。私たちマップクエストも、さまざまな位置情報技術やデータソースを組み合わせ、お客様のニーズに最適なソリューションを提案しています。GPS 一辺倒ではない、柔軟な位置情報活用のヒントがこの研究にはあるように思います。

参考資料


▷いりやまの働くマップクエストは こちら
▷GIS芸人のいりやまをもっと知りたい方は こちら
▷GISソフトウェア比較表は こちら

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