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マンションの需給バランスのお話

最近都心マンション市場は「需給バランス」というワードで持ちきりです。
2025年以降はそれ以前に比べ(主に)転売ヤーによる転売物件が中古市場にズラッと並び、高額帯を買える人口(需要)と供給のアンマッチから供給過多になり物件価格が下落するという出来事が局所的に観測されているためです。代表的なものとしては三田ガーデンヒルズ、晴海フラッグなどが主にSNSでは盛んに取り上げられます。

以前は「マンション価格は需給では決まらない」などと言った説もありましたが昨今の状況を見るには需給が強く関係していると言わざるを得ない市況感です。

では、マンションの需給バランスと価格はどのように動いていくのか。
今後を占う上で多くの人が気になっているものの、このような事例は少なかったため多くの人が推察・持論を展開しつつも定説はない状態です。

今回の記事では、私が知っている(けど多くの人が知らない)1つの良い事例があるので、それを取り上げつつ少しでもマンション需給に関する解像度を上げたいというのが趣旨です。その事例は横浜駅直結のタワマン、YOKOHAMA FRONT TOWERです。

事例①横浜フロントタワー

横浜駅にデッキで直結徒歩3分。43階建ての総戸数453戸のタワマンです。
販売していたのは2021年~2022年頃ですが、巨大ターミナル直結タワマンと言う希少性から、当時としては珍しく再販目的の業者や投資家が数多く参戦しており、抽選倍率も当時としてはかなり高水準でした。

その後、2024年夏頃に引き渡しされ、満を持して多くの再販住戸が並ぶことになりましたが、ここからが大変意外な展開でした。そこから1年間殆ど値段が上がらず、むしろ少し値下がっていたのです。2024→2025年と言うのは強烈なインフレ相場であったのは言うまでもなく、都内の物件は数十%の上昇が当然のような市況な一方で横浜フロントタワーは完全に頭打ち感のある値動きで、マンション市況に詳しい人であれば知っていると思いますが「これが横浜の限界かぁ。東京しか勝たん。」という評価を受けていました。(尚、分譲後の1年間が上がらなかったというだけで、分譲価格と比較すると1.5倍程度になっています)。

その後はSNS上で大きく話題になることもなく、価格をウォッチしている人も少なかったと思いますが、かなり広域で不動産価格を追っている私は分譲から1年経った2025年秋頃にふと気づきました。「横浜フロントタワーの価格が反発している」と。

そこから数か月が経ちデータが揃ってくると、どうやら理由は在庫減少による需給バランスの改善の可能性が高いことが見えてきました。以下、私が個人的に生成AIを使って集計・描写した中古の在庫数と価格の推移を重ね合わせたグラフです。(棒グラフが在庫数、折れ線が坪単価)

(棒グラフが在庫数、折れ線が坪単価)

2023年~2024年初頭(折れ線の2つ目の点まで)はサンプルも少なくスケベ価格の売出しが長らく放置されていたのが反映されているので、無視していただくのが良いと思います。2024年5月以降を時系列で追うと以下のような推移です。

  1. 2024年夏頃(分譲時)には在庫数が50を超え、9月にはピーク(55件)となり、総戸数の約12%が販売されている状態に

  2. 2025年初にかけて在庫は40程度に減るものの依然として総戸数の9%が売られている中で価格が下がり始める。

  3. 2025年夏頃(分譲から1年)にかけて、在庫数は大きく減らないまま価格はじりじり下がり、分譲直後のマイナス10%程度に

  4. 2025年秋頃に在庫が急減し20程度(総戸数の4%)になると価格が反発し始め、2026年初頭にはボトムから約6-7%反発(坪916万円 → 942万円 → 971万円)し分譲時に比較的近い水準まで回復。

在庫過多(供給>需要) → 価格下落
在庫減少(供給<需要) → 価格上昇

という市場原理が特定のマンション内で示されており、価格を決める「需給バランス」を見る上で非常に参考になる事例だと考えます。

*在庫数と価格データは一般公開されている情報を基に生成AIで個人的に集計しているものです。価格は売出価格がベースの情報になっているので成約価格を正しく反映できている訳ではないのですが、価格トレンドを見るためのものとしては十分な精度です。実際の成約価格の動き方とも合致しています。

事例②三田ガーデンヒルズ

では、同じ作業を他のマンションに当てはめてみるとどうでしょうか。
ちょうど分譲から1年ほど経つ三田ガーデンヒルズについて同じ作業をしてみます。

参照データ元の4月の価格が出ていなかったのでグラフ上には未描写
  1. 三田ガーデンヒルズの竣工は2025年3月。
    この時はかつてないほどの転売業者が殺到しており、インターネット上で物件情報が出る前に即売れしていたため、在庫数の棒グラフは実態と比べるとかなり少なめに出ています。その頃は需要(業者)>>>供給で価格は釣り上がりまくり2025年7月にピークを付けます。今見ると完全にバブルですね。

    ※ちなみにこの頃、「三田ガー、多数の成約が出ています!」と不動産業者からリストを貰ってみたら買主が再販業者ばっかりで、友人たちとはこれババ抜きっぽいな~崩れないと良いけど(;'∀')という会話をしていました(下記LINE参照w)

  2. 嫌な予感は的中し、年末にかけ在庫が一気に増え、あまりに棟内に競合が多すぎる状況からか値下げが連発され価格は急降下。

  3. それでも下げ止まらず2026年明けには更に在庫が積み上がり2月にはピークの在庫数145戸となります。これは総戸数1,002戸のうちの14.5%に当たりますが、そもそも三田GHは2026年4月以降に引き渡しされる部屋も多数あり、全戸が供給済では無いのでざっと20%程度の部屋が在庫に並んでいる状態だったかと思います。

買い取り再販業者の仕入れ競争がピークだった時の友人とのLINE

三田ガーデンヒルズは横浜フロントタワーと異なり、分譲の買主→買い取り再販業者→転売というプロセスを踏んでいるので在庫のピークがやや後ろに来ています。とは言え分譲直後に買った業者のプロジェクト融資期限(通常1年)が到来した2026年4月に在庫が急減しており、需給バランス上は底打ちが近い可能性もあります。

実際、1~3月頃は条件が悪くない部屋で坪1,400万円台という売出しがあり割安感があったのですが、それらの売出は全て消えて今の成約は概ね1,600万円程度が標準ですし、100㎡を超える部屋に至っては全て坪2,000万円以上です(これも最安時は坪1,600万円台がありました)。もしかしたら既に底打ちしているのかもしれません。最近は割安に感じていた部屋は全部売れて無くなってしまいました。※2026年4月以降に引き渡しされる住戸も多数あるのでまた在庫が積み上がる可能性もあります。

まとめ

このように在庫数と価格の推移を追うと面白いトレンドが見れます。
尚、晴海フラッグはまだ分譲から5か月程度であり十分なサンプルが取れていないので取り上げていません。その上で、個人的な発見は以下です。

  • 在庫が総戸数の約5%になると反発する(横浜フロントタワー)
    これはあくまで横浜フロントタワーがそうであったというだけで他の物件でも同様かは分かりませんが、個人的な感覚としては総戸数の5%程度の売出が出ているだけなら在庫過多な印象はなく、過剰な棟内競合が発生しない水準とは言えそうです。

  • 分譲から1年が経つと在庫が急減する(2物件共通)
    これは恐らく再販業者のプロジェクト融資期限に起因する部分がありそうです。通常再販における宅建業者向けの融資は1年が期限になっており、それまでに売りたいというインセンティブが強いためです。

  • 各エリアの主な検討者層の予算額は竣工後の流動性に影響していそう。
    三田GHの坪2,000万を買える人は都心と言えど次々には現れず、横浜で坪1,000万を出せる人も決して多いわけではない。もし検討者層が多い価格帯に収まる物件であれば違った可能性も。

需給バランスを武器にする

■買主向け

転売ヤーが殺到したマンションは安く買える可能性があります。

  • 周辺相場よりも明確に高額なマンションである

  • 立地などの要素でやや人を選ぶポイントがある

  • 総戸数が多く竣工前から数十件の転売住戸が並んでおり、成約も少ない

などの条件を満たすマンションは、供給が一定期間に多数ある割に需要側のパイが同期間に十分揃うわけではないため、分譲後半年~1年程度までの期間は初期分譲価格からあまり値段が乗らない価格で買える可能性があります。

イラン戦争などもあり建設費が暴騰しているのは事実ですし、今後新築住宅が建てられず、修繕コストなども上がる中では、最新の技術で建設され当面修繕の不要な新築マンションを廉価に手に入れられるのはかなりのチャンスだと思います。需給は時間とともに解消するので、長期でローンを組める人であれば最終的に良い選択になる可能性が高いのではないでしょうか。需給問題に対しては時間を武器にしましょう。

逆に転売住戸がそれほど多くない物件、周辺中古と価格乖離が少ない物件、実需が強い希少立地物件などの要素を満たす物件ではあまり指値は狙えないかもしれません。

■売主向け

逆に、需給バランスが悪くなりやすいマンションを買ってしまったなーとこの記事を読んで不安に思っている人もいるかと思います。大丈夫です、私もそういうマンションを最初から分かった上で買ってます。対応策は、、、

  • 売らない。
    買手に時間を武器にしようと言ったのと同様、売手側も時間を武器にしましょう。本来不動産は長期勝負モノなのに急いで売ろうとするから不利な状況に突っ込むことになるのです。住宅ローンで住むにしても、不動産投資ローンを使うにしても、少なくとも3~5年は持つ前提で買っているべきです。(私は人から相談された時は、最低限その年数は持つ前提で買いましょう。すぐ売りたいなら手付放棄の覚悟を持ってくださいと常に伝えています。)

    幸い2026年現在、新築の減少と賃貸需給の逼迫で都心マンションでは貸し手優位の状況になっています。賃貸仲介曰く定借3年程度であれば引っ切り無しに内見と申込が来るそうです。例としてパークタワー勝どきは販売物件は70件程度あるのに賃貸物件は15件ほどで在庫が総戸数の0.5%しかなく明確に賃貸供給不足です。晴海フラッグのタワー棟でもレインボーブリッジビューだと坪賃料2.5万円というPTK並みの賃料で成約しており借りるより買う方が月支払いが安いケースも。また港区などの高級賃貸では半年で家賃が20%以上も値上がったケースが複数あります。自己居住用でない場合は貸すことを積極的に選択肢に入れるべきです。

  • 手付放棄。
    何らかの理由で長期ローンが組めず短期で売らざるを得ない場合は手付放棄も視野に入れましょう。デベロッパーに迷惑をかける話でもあるので大声でオススメできるわけではありませんが、最大でも分譲価格の10%以上の損失は無いというのは命を守る上で非常に大きなメリットです。私も一時期は約1億円の手付金を預けていたことがありますが、融資の目星は勿論ある程度以上ついているものの、予期せぬ緊急事態などに向けては最悪手付放棄しても致命傷にならない範囲で買っていました。

以上でこの記事を終わりたいと思います。マクロの動向(株価、政策、金利、グローバル動向)にもマンション価格は当然左右はされますが、今話題のミクロの需給要因としては一考の余地のある話では無いかと思っていますので参考にしてもらえると幸いです。

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