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人生ルネッサンス in イタリア|第二話

夢を叶えるには、覚悟がいる


「Kazuさん、本当に3ヶ月行くんですね?」

私は、念を押した。

勢いで言っているのではないか。
理想だけで話しているのではないか。
見極めなければならなかった。

3ヶ月。
もとい、90日。
それは、ビザなしでイタリアに滞在できる最大の日数だ。
観光旅行ではない。
暮らすように回る旅。

急がない旅には、余裕がいる。
けれど、余裕には準備がいる。

私は、自分の経験をそのまま伝えた。
以前、
イタリア旅行中に持病で倒れた日本の運送会社の社長さんの入院に10日間ほど付き添ったことがある。

「Kazuさん、持病はありませんか?
海外旅行保険には必ず入ってください。」


私は日本からイタリアに戻る度、
慣れるまでは反対車線に入りそうになったこともある。
山道で対向車が来た瞬間、とっさにハンドルを逆に切り、怒鳴られてヒヤッとしたこともある。

「運転は日本と違って右側通行ですが、できますか?」


イタリア人は、よく喋る。
コミュニケーションを楽しむ国だ。
彼らと喋れた方が心に残る思い出がたくさんの経験となって幸せを生む。

「出発までに、イタリア語は一緒にやりましょう。
喋れたほうが、旅は何倍も豊かになります。」

そして
「行きたい場所は、全部リストにしてください。
下調べは私がします。」


夢は美しい。
けれど、現実は具体的だ。

「楽しい旅にするために、最初に厳しい話をします。」

私はそう言った。
甘いまま出発すれば、途中で壊れる。
だから準備を、軽くしない。
時間も。
お金も。
覚悟も。
先に決める。だから聞く。すると、

「もう働いていないから時間はいくらでもある、
お金も歯が総入れ歯になるくらい食いしばって仕事をした分、
貯金はあるんだから、あなたの分もちゃんと出す。もちろん報酬も。」

実は後から、Kazuさんはこう言ったのだ。
覚悟は、あるように見えた。

けれど。


「あの時、必死でした。」

私に気に入ってもらえなければ、
この夢は終わると思った、と。

私は選ぶ側のつもりでいた。
けれど彼もまた、選ばれようとしていた。

夢は、両方が納得しなければ動かない。

本気の人は、逃げない。

……のはずだった。

実は、あまり上手くない運転の他にも
選ばれるための 嘘 があった。

イタリア語の勉強。

学生じゃないんだから、勉強なんてしたくない。

本当はそう思っていたのに、
「やります」と言ってしまったのだ。

私が出発までのカリキュラムを渡しても、乗ってこない。

「現地で教えてもらうよ。」

そうやって、やんわりかわす。

のちに彼は言った。

「できる人(あなた)がいるんだから、やる必要はないと思った。」

さらに。

行き当たりばったりの旅なのだから、
調べ物もしたくない。私にもしないでくれという。

ふらっと行った先に現れる景色に、感動したい。

それが彼の理想だった。

夢は、他人の経験で叶う。

けれど、それは
すべてにおいて“余裕”があってこそ成立する。
どちらかに寄りかかるものでもない。

私はイタリアを知る立場として、譲れない部分がある。

そしてKazuさんにも、
曲げたくない旅のスタイルがある。

信念と信念が、ぶつかり合った。

それでも
3ヶ月のイタリア一周の旅は
それぞれの中で静かに動き出そうとしていた。

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