「使える製品」と「選択肢」について
最近、いろいろな家電について調べています。
最近の家電は、液晶のタッチパネルでメニューを選んだり、凹凸のないダイヤルを回してデジタル表示の項目を選んだりするものが主流です。見た目はスタイリッシュで未来的ですが、私たち視覚障害者にとっては、全く操作できないという大きな壁になっています。
操作を声で案内してくれる「音声ガイド」付きの家電は、残念ながら非常に少ないのが現状です。選択肢があったとしてもほぼ一択になってしまい、デザインや他の機能で選ぶ余地はほとんどありません。
「工夫次第で使える」家電もある
どんな家電にどこまでの音声案内を求めるかは人によって違いますが、私が現在特に気にしているのは調理家電の使い勝手です。
電子レンジであれば、ボタンが物理的に浮き出ているタイプなら十分に実用になります。ワット数(強さ)を選べて、時間を入力できれば、それだけで普段の生活には事足ります。
炊飯器のようにメニューボタンを押して切り替えるタイプでも、ちょっとした「仕様」次第で工夫して使えることがあります。たとえば選択肢が6つあるとして、最初の選択肢に戻ったときだけ「ピピッ」と違う音が鳴るタイプ、あるいは一度電源を切ると必ず最初の選択肢(デフォルト)にリセットされるタイプなら、順番をメモして覚えておくことで、音声ガイドがなくても手の感覚と回数を数えながら操作できます。タイマーは最悪使えなくても許容できるかもしれません。
今、迷っているのは
IH調理器については、音声で読み上げてくれる製品がいくつか存在するようで、選択肢が少しあることは分かっています。
悩ましいのはオーブンです。設定する温度の幅が広いため、現在の温度をしっかり読み上げてくれる機能がどうしても必要です。また、最近のオーブンレンジのように多機能な製品であれば、当然その機能をすべて使いこなせるようになりたいと思ってしまいます。
そうなると、オーブンレンジを購入するのか、レンジとオーブンを別々に購入するのかという選択肢が浮かびます。
レンジだけなら物理ボタンがあれば事足りますが、オーブンレンジにするなら、モードの切り替えを自分でできなければ使い物ありません。
スペースに余裕があれば、コンベクションオーブンも選択肢のひとつです。アナログのスイッチが付いている製品も多く、電子レンジと2台別々に購入したとしても、価格はオーブンレンジと大差ない、あるいは安く抑えられる場合もあります。
スマート家電への期待と、その落とし穴
最近話題の「スマート家電」であれば、スマートフォンのアプリやスマートスピーカー(Alexaなど)経由でもある程度操作できるかもしれない、と期待しています。
ただし、ここにも大きなハードルがあります。「その家電の操作アプリが、スマホの画面読み上げ機能(VoiceOverやTalkBack)に正しく対応しているか否か」は、実際にアプリをダウンロードして使ってみるまで分かりません。仮に今は使えていても、アップデートで突然使えなくなるリスクもあります。
情報が少なすぎる——もどかしさの本質
かつて、三菱電機のオーブンレンジには優れた音声読み上げ機能が搭載されており、視覚障害者の間で重宝されていました。しかし現在は生産が終了しています。市場を探せばまだ見つかるかもしれませんが、古い型を追いかけるだけでなく、スマート家電も含めた最新製品を幅広く比較・検討したいというのが本音です。
困っているのは、こうした「盲点」をきちんと理解してくれている人が世の中に非常に少ないことです。家電量販店の店員さんに聞いても、メーカーの相談窓口に問い合わせても、アクセシビリティに関する細かい仕様については「そこまでは分かりかねます」と言われることがほとんどです。視覚障害者が「これなら使える」と判断できる家電の情報をまとめたポータルサイトも、残念ながら見当たりません。
技術は確実に進歩しているはずなのに、置き去りにされているような感覚があります。それ以上にもどかしいのは、何が使えて何が使えないのかを調べるだけで、多大な時間と手間がかかるという現実です。
メーカーへの願い
メーカー側には、「視覚障害者にも使える」と宣言することへの躊躇があるのかもしれません。すべてのメニューを音声で読み上げる機器でなければ、そう言いづらいのだろうということは理解できます。
しかし、完全でなくてもいいのです。音声読み上げを搭載するためには時間もコストもかかるかもしれませんが、電子レンジであれば、物理ボタンがあって取り消しボタンで最初の状態に戻れるなら、私たちにも使えます。オーブンもIHも炊飯器も洗濯機も、ボタンやスイッチ、音声の有無などの仕様を変えるだけで、仮にすべての機能は使えないとしても、少なくとも「工夫次第で」使える製品になります。
「使える」を定義することは、難しいかもしれません。しかし、考えてみてください。目が見えても、現在の多機能な家電を100%使いこなせている人ばかりではないはずです。テレビや雑誌でも、「○○の便利な使い方」といった特集がよく組まれています。
だからこそメーカーさんには、「ここは使える、ここはまだ使えない、こうやれば使える」という情報を、ぜひ恐れずに出していただきたいのです。
現状では、私たちは「使えない」という情報しか得られず、選択すらできません。それほどコストをかけなくても、ちょっとした工夫で、私たちの選択肢は確実に増やせます。
私たちにとってのベストは、すべての電化製品に音声案内がついていることかもしれません。しかしベターは、「どういう工夫をすれば使うことができるか」という情報が、できるだけ多くの家電において開示されていることだと思います。
