月曜日を乗り切った、ご褒美とんかつ劇場
やれやれ、月曜日。長い長い戦いだった。パソコンの画面と睨めっこし、キーボードを叩き続け、気づけば心も体もすっかり干からびてしまっている。こんな夜は、もう自分を甘やかすしかない。そう、今夜は、あの黄金色の鎧をまとった英雄を、我が家に召喚するのだ。
今宵の主役は、とんかつである。
冷蔵庫を開けると、立派な厚切りの豚ロース肉が「待ってました」とばかりに鎮座している。まずは彼の下ごしらえから。赤身と脂身の境を数カ所、ぷすぷすと切ってあげる。「これで揚げた時に反り返らないおまじないだよ」なんて、一人ごちる。塩こしょうを振れば、彼のやる気も高まってきたようだ。
さあ、いよいよ聖なる衣着せの儀式。小麦粉の雪原にそっと寝かせ、余分な粉をはたいたら、次は溶き卵の黄金の泉へダイブ。そして最後に、ザクザクと威勢のいいパン粉のベッドへ。ぎゅっ、ぎゅっと、優しく、しかし大胆に抱きしめてやる。(よし、完璧な鎧だ…!)
鍋の中では、油が静かにその時を待っている。170度。菜箸を入れると、しゅわわ…と小さな泡が立ち上る。準備は整った。豚肉をそっと滑り込ませると、「ジュワァァァーーーッ!」という盛大なファンファーレが鳴り響いた。これだ、この音を聞くために私は今日一日頑張ったのだ。
揚げること数分。キッチンに広がる香ばしい匂いに、胃袋が歓喜の叫びをあげる。最初は低い音でご機嫌に歌っていたのが、次第に軽やかな高い音色に変わっていく。それが、火が通った最高の合図。きつね色の美しい鎧をまとった彼を、網の上で少し休ませてやる。肉汁を落ち着かせる、大事な時間だ。
炊き立てのご飯をよそい、千切りキャベツを山盛りに。ソースを構え、いざ入刀すれば「ザクッ」と小気味良い音が響く。断面から現れる、ほんのりピンク色の艶やかな肉。ああ、もう我慢できない。一切れ頬張れば、サクサクの衣、溢れる肉汁の甘み、ソースの酸味が口の中で一体となって、幸せのビッグバンが起こる。
この一口のために、大変な月曜日も悪くないと思えるから不思議だ。胃袋にガツンとエネルギーを補給して、さあ、明日もきっといい日になる。
簡単ご褒美とんかつレシピ
材料
豚ロース肉(とんかつ用):1枚
塩、こしょう:少々
小麦粉、溶き卵、パン粉:各適量
揚げ油:適量
付け合わせ(キャベツなど):お好みで
作り方
豚肉は揚げた時に縮まないよう、赤身と脂身の間の筋を4〜5ヶ所切っておく。両面に塩こしょうを振る。
豚肉に小麦粉、溶き卵、パン粉の順で、衣をしっかりとつける。
フライパンか鍋に油を170℃に熱し、豚肉をそっと入れる。
片面がきつね色になったら裏返し、もう片面も揚げる。揚げる時間は厚みによるが、合計で5〜6分が目安。
揚がったら網に取り、余分な油を切って少し休ませる。食べやすい大きさに切って、お皿に盛り付けたら完成。
