Netflixドラマ「自由研究には向かない殺人」レビュー〜美しき田舎町で輝く、エマ・マイヤーズの新たな魅力
「自由研究」というには、あまりにも危険で深すぎる――。
大ヒット小説を原作としたNetflixドラマ「自由研究には向かない殺人」。全6話というコンパクトな構成ながら、一度見始めると止まらない、中毒性の高いミステリードラマだ。
スリリングな謎解きが中心であることはもちろんだが、本作の真の魅力は、一見相反するように見える三つの要素――主演エマ・マイヤーズが体現する主人公の強烈な意志、事件の舞台となる「完璧すぎるほど美しい」イギリスの田舎町の風景、そして巧みに構成された骨太な謎解き――にある。
エマ・マイヤーズが演じる「ピップ」という引力
多くの視聴者が『ウェンズデー』の明るくカラフルな「イーニッド」の残像を持って本作を見始めるだろう。しかし、そのイメージは開始数分で完全に覆される。
エマ・マイヤーズが演じる主人公ピップ・フィッツ=アモビは、知的で理性的、そして真実のためなら嘘さえ厭わない「執着」を内に秘めた優等生だ。彼女は、町全体が蓋をした5年前の殺人事件を「自由研究」として再調査し始める。
エマ・マイヤーズは、脅迫に怯え涙するティーンエイジャーの「脆さ」と、危険を顧みず真実に向かって突き進む「強さ」という、アンバランスな魅力をその大きな瞳で見事に表現している。彼女の知的な佇まいと、時に感情を爆発させる姿こそが、この物語の最大の推進力だ。彼女がピップでなければ、このドラマは成立しなかっただろう。
不気味なほど美しい「完璧な村」
本作のもう一つの主役は、物語の舞台となる架空の町「リトル・キルトン」だ。
ロケ地となったのは、イングランド南西部サマセット州に実在する町アクスブリッジ(Axbridge)。石造りの歴史的な街並み、緑豊かな丘陵地帯に囲まれた、まさに「チョコレートボックス・ビレッジ(お菓子の箱に描かれるような完璧な村)」である。
しかし、このドラマにおいて、その「完璧な美しさ」は恐ろしい装置として機能する。
絵に描いたような平和な風景の中で、住民たちは秘密を隠し、嘘を重ねる。この美しい町並みこそが、外部の人間を寄せ付けない「閉鎖性」と、表面下で渦巻く「闇」の象徴となっているのだ。製作陣が『ツイン・ピークス』を参考にしたと語るように、この美しい風景が、物語の不気味さと緊張感を何倍にも増幅させている。
テンポと構成が光る、骨太な謎解き
本作はYA(ヤングアダルト)作品というジャンルでありながら、そのミステリー構成は非常に巧みで骨太だ。
全6話というコンパクトな構成が、謎解きをダレさせることなく、スリリングなテンポを維持している。1話ごとに新たな容疑者や証拠が浮上し、ピップの調査が進むにつれて「解決済み」だったはずの事件が複雑な様相を呈していく。
「誰がアンディを殺したのか?」という本筋の謎は、二転三転する展開と巧みなミスリードによって、視聴者を最後まで惹きつける。SNSの履歴、関係者の食い違う証言、隠された動機など、現代的な要素を盛り込みながら、古典的な「フーダニット(誰が犯人か)」の面白さを見事に描き切っている点も秀逸だ。
美しさと危うさが織りなす、極上のミステリー
「自由研究には向かない殺人」は、骨太なミステリープロットを、エマ・マイヤーズという俳優の魅力と、不穏で美しい映像美という強固な柱で支えた秀作だ。
主演の新たな代表作の誕生を確信させると同時に、テンポ良く「一気見」できるエンターテイメントとしても極めて優秀である。ミステリーファンはもちろん、上質な海外ドラマを求めているすべての人におすすめしたい。
