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「予告編妄想かわら版」vol.41〜50

2017年6月から『週刊ポスト』で連載していた「予告編妄想かわら版」というミニコラムをnoteでまとめていきます。気になった作品があったらぜひ配信などで観てもらえるとうれしいです。

「予告編妄想かわら版」vol.41(2018年5月7日)

 ヤクザにしか見えない叩き上げの刑事・大上(役所広司)が主人公の『孤狼の血』(5月12日)。大上と正反対の若いキャリア組の刑事・日岡(松坂桃李)は、署内で容疑者に暴力を振るう彼を止めようとするが、逆に邪魔するなと吹っ飛ばされてしまう。理不尽ですね。
 予告編の中で「極道を法律で押さえつけたところでなあんも変わりはせんわい。奴らを生かさず殺さず飼い殺しにしとくんがワシらの仕事じゃろうが!」と大上は日岡に言い放ち、「極道は顔で飯食うとるんでえ」と暴力団の若頭役の江口洋介が言っています。警察組織vs暴力団。飛び交う広島弁と暴力描写はかつての『仁義なき戦い』を彷彿させます。もうどっちが警察かヤクザなのか見分けつきませんね、ここまでなると。
 ここからは妄想です。北野武監督『アウトレイジ』シリーズが完結してしまい、世の映画好きで暴力団ものやバイオレンス映画に飢えている人たちがたくさんいると思います。だからこそ、この映画はそういう層に熱狂的に受け入れられそうです。予告編を見ると大上は如何にも死にそうにはありません。死闘の末、生き残った彼を暴力団の残党や盃を受けた他の地方からの組が復讐する続編『狐狼の血 ビヨンド』がきっと制作されるはずです。そこには大友(ビートたけし)も現れたりして。


「予告編妄想かわら版」vol.42(2018年5月14日)

 きまじめなエリート藩士・小林寛之進(阿部寛)が殿の逆鱗に触れて左遷され、裏稼業を始める『のみとり侍』(5月18日)。「猫の“蚤とり”になって無様に暮らせ!」と殿に言われた寛之進は蚤とり屋で働くことになる。それはお客の飼い猫の蚤をとって日銭を稼ぐというのが表の顔だが、実際には女性に愛を届ける男娼だった。殿の命令だからという気持ちがどこかにあった寛之進だが、最初の客は亡き妻に瓜二つの女性(寺島しのぶ)だった。二人は一緒の時間を過ごし満たされたかのように思われたのだが、「下手クソが!」と彼女から罵られる。意気消沈した寛之進は、江戸の伊達男(豊川悦司)に出会い、彼に「拙者に女の悦ばせ方を教えてはくれぬか!」と指導を求めているのを予告編で見る事ができます。しかし、物語は蚤とり禁制の世の中になっていってしまうようです。
 ここからは妄想ですが、寛之進が殿に命がけで訴えてなんとか蚤とり禁制は解かれます。そして、実は「下手クソ」だった殿が寛之進に女性の悦ばせ方を手ほどきしてもらうことに。最後には上下関係が逆転! 殿がどっかの事務次官の疑惑みたいに話すことほぼセクハラ発言みたいな人なら、そんなこともないのでしょうが。この映画は笑える喜劇みたいですが現実世界はまったく笑えませんね!


「予告編妄想かわら版」vol.43(2018年5月21日)

 17歳の真っ直ぐすぎる女子高生の橘あきら(小松菜奈)と45歳のさえないファミレス店長(大泉洋)のラブストーリー『恋は雨上がりのように』(5月25日)。橘は短距離ランナーでしたが、ケガをして部活を辞め、ファミレスでバイトをしているようです。
「私たちはいつでもあきらのことを待ってるから」「なんで走らへんのですか」と仲間やライバルに復帰を待たれている橘。「えー、だって、やだ。店長ってなんか臭いんだもん」「バツイチ子持ち、一生店長止まりのタイプ」とファミレスのバイトたちに言われている店長という対照的な二人。しかし、「私店長のことが好きなんです!」と急に橘に言われ、店長は危うく自動車事故を起こしかけます。まあ、可愛い女子高生に告られたらそうなっちゃいますよね。
 ここからは妄想ですが、二人の年の差で浮かぶのは、THE 虎舞竜の高橋ジョージさんと三船美佳さんでした。こちらは高橋さんが40歳で三船さんが16歳の時に結婚してます。そう考えると店長と橘もありえない話でもないですね。橘と店長は付き合うことになりますが、大学生になった橘が店長を振ります。雨上がりの道を走り出した橘を車に乗って追いかける店長というイメージが浮かんでしまいました。男の方が未練タラタラなことが多いですし…。


「予告編妄想かわら版」vol.44(2018年5月28日)

 イカ天バンドと自称アイドルが織りなす映画『馬の骨』(6月2日)。元・馬の骨ボーカルで52歳の熊田(桐生コウジ)は仕事をクビになり格安シェアハウスに住むことになる。そこに住んでいる21歳の地下アイドルのユカ(小島藤子)は、シンガーソングライター志望だった。そんな彼女に音楽学校の講師だと嘘をついてしまう熊田。
「三十年逃げ回って、それじゃあまた同じじゃないですか! 私はもう逃げません」とユカに言われた熊田は、「もう一回やんないか、馬の骨」とメンバーだったらしきサラリーマンに告げているのが予告編で見ることができます。「過去を生きる男」と「未来を生きる女」という対照的な二人の出会いが男を現在に引き戻すようです。
 ここからは妄想ですが、予告の最初に『1989年流行語にもなった伝説の音楽番組「イカ天」』と出てきます。元号が「平成」になってすぐに始まったこの番組は、たった一年の放送でしたが多くのバンドを世に送り出しました。そして、「平成」が終わる最後の数年間はアイドルの時代でした。つまりこの映画は「平成」の最初と最後にブームになった文化を結びつけたある種、批評的な作品と言えるでしょう。そうすることで鳴り響く音は新しい元号へ進んで行く同時代のわたしたちの応援歌なのかもしれません!


「予告編妄想かわら版」vol.45(2018年6月4日)

 リチャード・リンクレイター監督による『30年後の同窓会』(6月8日)。キャッチコピーは「50才のスタンド・バイ・ミー」です。一年前に妻を、二日前に息子を戦死で失ったドク。酒に溺れるバー経営者のサル。牧師になった乱暴者のミューラー。彼らは苦悩を共にしたベトナムの戦友だった。ドクが久しぶりに二人を訪ねてきたことで、みんなでドクの息子の軍葬に参加し、遺体を車で連れて帰ることになります。30年ぶりの友達との時間が、それぞれの空っぽだった心を満たしていく作品のようです。予告編見るだけで泣けそうになってきます。
 ここからは妄想ですが、ベトナム帰還兵の彼らは多くの仲間を戦争で失いました。映画『ペンタゴン・ペーパーズ』で描かれたように、米軍はこれ以上戦争を続けても勝てないことを国民に隠しながら戦争を続けました。イラク戦争では大義名分だった大量破壊兵器は発見されず、自衛隊のイラク派遣の日報では「戦闘」と記載されていました。
 国家は平気で嘘をつき、死んでいくのはいつも戦場の兵士たちと戦地の人々です。ああ、妄想じゃなくなってしまいましたね。いつかはバレるのに嘘に嘘を重ね続けるのって疲れないんですかね、大変ですね政治家も。
 予告編の最後に流れる『涙を見せられる、友はいますか?』のフレーズがささります。


「予告編妄想かわら版」vol.46(2018年6月11日)

 本当は誘拐犯だった”両親”とシェルターに住んでいたジェームスが外の世界を知る『ブリグズビー・ベア』(6月23日)。ジェームスの友達は教育番組の主人公、ブリグズビー・ベアだけだった。彼は25歳のとき警察に救出され、本当の両親と暮らし始める。父親から「なにがしたい?」と聞かれ、「ブリグズビーの新作が見たい」と答えますが、ある女性から「ブリグズビーを忘れて大人になるのよ」と予告編で言われています。それでも彼は友達や両親の協力でブリグズビー・ベアの新作を撮影し始めるようです。
 ここからは妄想ですが、ジェームスはブリグズビーという「ライナスの毛布」を手放せません。それは彼が隔離されていた時の唯一の友達であり、外部だったからです。しかし、シェルターから出た彼は、「ライナスの毛布」を捨てて大人になるのではく、ブリグズビーを通して未知の世界と出会い、自分と他者の関係性を構築できる大人になれるはずです。
 大人になるということは、自分の行動と発言に責任を持つということでしょう。今起きてる様々な問題の根本にあるのは、誰も責任を取る大人がいないということなのかもしれません。上は責任を取らずに下の者が勝手にやったんだと責任をなすりつけ、知らんぷり。戦時中となにも変わってないんですね。


「予告編妄想かわら版」vol.47(2018年6月18日)

 核汚染により壊滅した地球。唯一残された奇跡の谷を舞台にした『死の谷間』(6月23日)。生き残った白人女性のアンが出会った黒人男性は、「滝で水車を動かして発電機を回せる」と言う。しかし、その建築材料は教会を壊すことで作ろうという彼の提案に、信心深いアンは「神のおかげで生きているのに」と否定的です。そんな二人の共同生活が始まる中、もう一人、白人男性が現れます。神を信じる二人の白人と神を信じない一人の黒人という関係性。新しいアダムとイブになるのはどちらの男性とアンなのか、というテーマも潜んでいそうです。
 ここからは妄想ですが、予告編の最初に出てくる核汚染で壊滅し、人がいなくなり廃墟と化した町の描写は、東日本大震災を彷彿させます。それにも関わらず、原発を海外に売り込もうとしてる人がいること自体、現実はディストピアです。
 この映画のテーマはおそらく、人種問題と信仰心だと思います。これって世界から人がいなくなろうが普通にいるとしても、いつも私たちに突きつけられている事柄ではないでしょうか。アンを手に入れるために競い合う二人の男、アンは嫌気がさして二人とも銃殺するでしょう。そして、教会も壊して自分に残っていた世界を終わらし、自らが神になろうと決める、というラストかもしれません!


「予告編妄想かわら版」vol.48(2018年6月25日)

 セックス・ピストルズ「アナーキー・イン・ザ・U.K.」が鳴り響く『パンク侍、斬られて候』(6月30日)。原作は芥川賞作家の町田康。脚本は朝ドラ「あまちゃん」も手がけている宮藤官九郎。監督は『逆噴射家族』などで知られる石井岳龍(2010年石井聰亙から改名)という最強のメンツです。
「拙者、超人的剣客ゆえ」と言う主人公の侍を綾野剛が演じ、彼をはじめとするクセ者たち12人の豪華な面々による、世紀の生き残り合戦が始まる。
 どうやら人だけではなく猿の大軍団も参戦してくるらしく、猿の大将が「今ある現実を破壊し、新たな世界を築こう」と語っているのを予告編で見ることができます。
 ここからは妄想ですが、この流れはまさか、『猿の惑星』みたいなラストなのか? また、12人の豪華なキャストの中で女性は北川景子のみ。彼女に綾野が「戦が終わったら必ず迎えにいく」と告げると、笑顔で「嫌です」と言われるシーンも予告で見れるので、これはまさかのラスボスが北川景子というパターンもあるのか! 倒したら旦那のDAIGOが出てきたりしたら楽しいですね。
 パンク侍である綾野剛と戦う本当のラスボスは、原作者・町田康とも因縁深い、ロンドンから帰ってきたギター侍こと布袋寅泰かもしれません!!


「予告編妄想かわら版」vol.49(2018年7月2日)

 テニスの女子世界ランキング一位のビリー・ジーン・キングと元・男子世界ランキング一位だったボビー・リッグスの、時代を変えた戦いを描いた『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(7月6日)。この作品は実話を元にしたもので、「男子は女子の8倍の賞金よ」「生物学的な差だ」というやりとりや、ボビーの「女をコートに入れるのはいい。でなきゃ球拾いがいない」という発言を予告で見ることができます。
 今、世界で「Me Too」運動が大きく社会を動かしていますが、アメリカでも昔は男尊女卑がここまで露骨だったとわかるシーンがたくさん出てきます。「もしボビーに負けたら彼を止められない。ベストを尽くすわ。そうすれば世界を変えられる」とビリーが言うシーンは予告編だけでも感動的です。
 ここからはただの現実ですが、他人の権利や主義・主張を認めがらない人たちがいます。また、駅で女性だけにぶつかっていく男の動画がニュースになっていました。男性であることや、日本を殊更に誇るような人たちが、女性や他国を見下したり、法を犯していても厚顔無恥なまま居座っています。この「失われた30年」で本当に失われたのは、人間としての尊厳や社会性だったのだと思います。もう、いい加減に変わりませんか、世界から置いていかれるだけですよ。


「予告編妄想かわら版」vol.50(2018年7月9日)

 カメラマン(安藤政信)に下半身を曝けだした女性(永夏子)が、「ここを撮ってください」と告げている矢崎仁司監督作品『スティルライフオブメモリーズ』(7月21日)。予告編では花のモノクロ写真が映り、ピンクの文字で「あなたの写真になりたい。」と浮かびます。また、カメラのシャッターを切る音や女性器を思わせる花や果肉が印象的です。
 裸体の女性の滑らかな曲線、その背後から安藤はカメラを構えて性器を広げるような手つきをしますが、卑猥というよりも気品さのある映像作品のようです。
 ここからは妄想ですが、予告編では亡くなった女性に紅を塗っているシーンや、ボートから遺灰を撒いているようにも見えるシーンもあります。やはりエロスとタナトス(死への衝動)を描いた作品なのでしょう。女性器とはすべてを生み出す唯一の場所、生も死も性もなにもかもそこに含まれているのかもしれません。
「優秀なカメラマンは、優秀なスナイパーになれる」という台詞は、ベトナム戦争を描いた漫画『ディエンビエンフー』からですが、女性器を撮り続けるカメラマンは、その瞬間を永遠にすることで何を殺すのか。そこにあるのは、いや、閉じ込められてしまったものは、僕らにはもう手を触れることができないものなのかもしれません。


最新の「月刊予告編妄想かわら版」は↑「BOOKSTAND映画部!」で毎月下旬に公開しています。

半年前の日記も↑のマガジンにアップしています。

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