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薬剤師が学ぶ、家康公のセルフメディケーション術

「この印籠が目に入らぬか!」
誰もが知る、水戸黄門の名セリフです。
印籠は、もともとは印鑑や朱肉を入れるための容器でしたが、江戸時代になると、丸薬や散薬などの薬を入れて腰に下げる、携帯用の薬入れとしても使われるようになりました。旅先で急な体調不良に備える、いわば昔の「携帯用薬箱」です。

一方、戦国時代から江戸時代にかけては、「兵糧丸」のような丸薬状の携帯保存食もありました。薬としての丸薬と、食料としての兵糧丸は同じものではありませんが、昔の人々が、薬や食を小さく携帯し、必要なときに役立てる知恵を持っていたことは興味深いところです。

現代でいえば、健康を自分で守るためのセルフケアや、サプリメントを携帯する感覚に少し似ているのかもしれません。

セルフメディケーションとは
厚生労働省は、WHOの定義としてセルフメディケーションを、
「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」
と紹介しています。
“人生100年時代”といわれる今、健康寿命を延ばすためにも、まずは自分のからだの変化に気づき、日頃から健康状態を意識して管理することが大切です。
もちろん、何でも自分で治そうということではありません。軽い不調には適切に対処し、必要なときには医療機関や薬剤師など専門家に相談する。その判断もまた、セルフメディケーションの大切な一部です。

家康公のセルフメディケーション
日光東照宮に祀られている徳川家康公も、薬や健康管理に深い関心を持っていた人物として知られています。
家康は本草学を好み、薬草や薬に関心を持っていました。さらに、自ら薬を調合していたと伝えられています。久能山東照宮博物館には、家康が薬を製剤する際に使ったとされる乳鉢や乳棒、自家製の薬が残されたびいどろ壺などが大切に残されています。
また、鷹狩りを好み、晩年まで身体を動かしていました。鷹狩りには、武将としての鍛錬だけでなく、身体を動かすことや気晴らしという側面もあったと考えられています。
食事にも気を配っていたとされる家康。

こうして見ると、薬だけに頼るのではなく、食事や運動、そして自分の体調への関心を持っていた家康は、現代の言葉でいえば「健康管理を意識していた人」と見ることができそうです。

3年前の夏に日光を訪れた際、私は東照宮の境内の最奥にある「奥宮」へ足を延ばしました。
そこへ続く石段は207段。
日頃の足腰の状態を試す、絶好のバロメーターです。
息を切らしながら登る子どもたちの姿を見て、
「疲れているのは自分だけではない」
と、少し胸をなで下ろしたことを覚えています。

日光のおいしいもの
日光の旅には、からだを動かした後に味わいたい、おいしいものもあります。

日光ゆば(湯波)
日光の名物のひとつが「ゆば」です。
ゆばは大豆を原料とする伝統的な食品。大豆には良質なたんぱく質のほか、レシチン、サポニン、大豆イソフラボンなどの成分が含まれています。
現地ならではの生ゆばや、お土産にもできる乾燥ゆばを、旅の楽しみとして味わってみるのもよいでしょう。

乳製品
栃木県は酪農も盛んで、生乳生産量は全国第2位です。
冷たい牛乳をごくりと飲むのも、旅先では格別のおいしさ。
プリンやケーキ、ヨーグルトなど、乳製品を使ったスイーツも豊富です。

石段を登ってしっかり歩いた後は、旅のご褒美としておいしいものを楽しむ。
健康管理も、我慢ばかりしていては長続きしません。
「動いたら、楽しむ」
そんなメリハリも、健康な毎日には大切なのかもしれません。

歴史ある日光の地に思いを馳せながら、昔の人々の知恵に学び、私たちも自分のからだと向き合う時間を持ってみてはいかがでしょうか。

ひとりごと
お仲間の中に、尾張徳川家のお道具係を務めてこられた研究者の方がいらっしゃいます。
徳川家に伝わる道具や歴史について、私が知らないことをたくさんご存じのはずです。
今度ぜひ、じっくりレクチャーを受けてみたいと思っています。

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