ジェフ・ベゾスが挑むスペースⅩの牙城!?ブルーオリジン「TeraWave」について|最新テックニュース深掘り
テクノロジー関連の最新ニュースについて、個人的な見解や感想を踏まえて発信していきます。
少し難しいことも書くかもしれませんが、ひとりごとと思ってご勘弁を。
1月21日(日本では22日)それは突然発表されました。
ブルーオリジンが5400機もの衛星からなる、「TeraWave」という衛星通信ネットワークを構築するという発表。
Introducing TeraWave: a satellite communications network designed to deliver symmetrical data speeds up to 6 Tbps anywhere on Earth.
— Blue Origin (@blueorigin) January 21, 2026
This network will service tens of thousands of enterprise, data center, and government users who require reliable connectivity for critical… pic.twitter.com/xTHtItpGEh
ブルーオリジンといえば、Amazon創業者であるジェフ・ベゾス氏が率いる宇宙開発企業。
ベゾス氏は、すでにAmazon Leo(旧プロジェクトカイパー)という衛星ネットワーク構築に向けて衛星の打ち上げを開始しているはず。。。
🔷Amazon Leoと何が違う?
すでにいろいろなニュースでも大きく報じられていますが、その違いは明白です。
ブルーオリジンの公式サイトでもまず目を引く
「データ速度は最大6Tbpsで、重要な業務のための信頼性の高い接続」
という導入からも分かるとおり、そのターゲットとする顧客は「エンタープライズ」。つまり、政府機関や大企業、データセンターを直接の顧客として、既存の光ファイバー網による基幹ネットワークを補完するサービスに限定しているということです。
Amazon Leoも、エンタープライズ顧客向けのサービスは予定されているものの、一般消費者向けのサービスがメインです。
つまり、同じ衛星通信でも用途が違うってことですね。
🔷TeraWaveの概要
サプライズ的に発表されたブルーオリジンのTeraWave。
最初の打ち上げは2027年のQ4(10月~12月)に予定されていますが、その概要はどんなものなんでしょうか?
◾LEOとMEOが混在する衛星コンステレーション
衛星コンステレーションは計画では5,408機の衛星で構成されます。そして内訳は、下の図でもわかるように以下のようになっています。
LEO(低軌道)衛星[高度520~540km]:5,280機
MEO(中軌道)衛星[高度8,000~24,200km]:128機

一般的な通信衛星コンステレーションでは、LEO衛星のみ、もしくはGEO(静止軌道)衛星のみというのがほとんどなのに対し、LEOとMEOが混在している珍しい構成になっています。
◾スループット(通信速度)は最大6Tbps??
「最大6Tbps」というスループットは衝撃的ですが、これはMEOとの光通信によるもの。LEOとの通信は電波によるもので最大144Gbpsとなっています。
それでも、現在のスターリンクが最大300Mbps(1Gbpsまでアップする計画あり)であることを考えると、その500倍というスペックは十分衝撃的。
更に注目なのは、光通信、電波通信のいずれもアップリンクのスループットがダウンリンクと同じということ。通常はダウンリンクのほうが高速なのが一般的なので、特徴的なスペックとなっています。
◾ユーザー数は上限10万人
ユーザー数の上限が10万人までと発表されています。
スターリンクのユーザーが、現在(2026年1月時点)900万人であることを考えると少ないように感じますが、TeraWaveは顧客が政府や企業に限定されているので、これで十分ということかもしれません。
性能面でも、最大6Tbpsのスループットをユーザーに提供するには、これくらいのユーザー数に絞る必要があったとも考えられます。
🔷ちょっと深掘り
ということで、ここまでは発表されている内容の概要を並べてみましたが、もうちょっと深掘りしてみましょう。
(ここからは、個人的な予想や見解も含むので、事実と異なる場合もあるかもしれません。)
◾ユーザー端末はかなり大がかり&高価?
今回の発表では、地上で利用するユーザー端末の仕様や価格などの情報は、一切公開されていません。
ただ、現時点でわかっている情報から考えても、従来の衛星通信サービスとは比較にならないほど、大がかりなものになると想定されます。「端末」というより「設備」といったほうがしっくりくるものかもしれません。
当然、導入費用や、利用料もハンパじゃない額なのではないでしょうか。
ユーザー端末側からの送信であるアップリンクでも、ダウンリンクと同等のスループットを実現する出力が必要である。
最大24,200キロの高度にある衛星と、光通信が可能な高精度でかつ高出力のレーザー通信装置を装備している。
5,400機もの衛星による巨大衛星コンステレーションの構築、及び運用にかかる巨額な費用を、最大10万人のユーザーから回収して利益を出す必要がある。
◾衛星~地上間の光通信で6Tbpsを実現する技術的ハードル
特に注目なのは、最大6Tbpsを実現するという光通信。
宇宙空間の衛星同士であれば、すでにスターリンクが商用レベルの光通信を実現していますが、大気の影響がある地上との間の通信となると難易度が格段に上がります。
過去には、日本のNICTで都市間(約7キロ)の光無線通信で2Tbpsを記録した例もありますが、あくまで固定された機器同士の実証試験のレベル。
これを、数千キロも離れたところで移動する衛星との通信で実現しようっていうんですから、その技術的ハードルの高さは相当なものです。
大気の揺らぎの影響、天候の影響、太陽の影響、衛星追尾の難易度、超高速通信の実現、など課題は山積。
果たして、実現に向けてどの程度の目途が立っているのでしょうか?今後の新たな情報が楽しみです。
◾なぜこのタイミングで発表だったか?
宇宙業界は今、「軌道上の場所取り合戦」の様相を呈しています。
すでに9,000機以上の衛星を運用するスターリンク(スペースX)は、FCC(米国連邦通信委員会)から2026年1月に7,500機の衛星追加の認可を取得。申請中の衛星数はトータルで3万機以上にもなる。
Amazon Leo(Amazon)は3,200機の打ち上げ認可を取得して、絶賛打ち上げ中。
OneWeb(ユーテルサット)は現在650機の衛星が運用中。さらに、新たに打ち上げる次世代衛星を400機以上発注。
2025年の年末、ここにきて中国からITU(国際電気通信連合)に20万機もの超巨大衛星コンステレーションの申請が提出され、世界に衝撃を与えた。
すでに申請数ベースではLEOは超過密状態。
このペースで申請が続けば、いつ制限が設けられるかもしれません。
しかも、このITUへの申請は、早く申請書を提出した国が軌道位置と周波数の優先権を持つという先願主義。つまり早い者勝ちってことですね。
新たな衛星コンステレーション構築を計画していたブルーオリジンとしては、一刻も早く申請をして軌道を確保しておきたいという意図があったのでしょう。
米国企業の場合、自国の機関であるFCCに申請し、FCCが国際機関であるITUに提出して各国間での調整がなされます。
ここでやっかいなのは、FCCへの申請内容は透明性を保つために原則公開されることになっていること。
つまりFCCへ申請をすれば、世間に計画を知られてしまうわけです。
そのため、このタイミングでのTeraWaveの発表になったと思われます。
◾打ち上げの申請は後戻りの許されない諸刃の剣?
FCCやITUでは、軌道位置、周波数を確保するためだけの空申請を防止するため、申請後の衛星打ち上げに段階的な期限を設けています。
例えばFCCの場合だと認可を受けてから6年以内に50%、9年以内に100%の衛星の打ち上げが完了していないといけません。
そして、期限を守れなかったら場合は、よほどの正当な理由がないと以降の権利がはく奪されてしまう。
実際にAmazon Leoでは、2026年7月30日までに50%となる約1,600機の打ち上げを完了させる必要があるわけですが、2026年1月時点で打ち上げ済みなのは150機程度。
単純計算で、毎週70機程度の衛星を打ち上げていく必要があり、かなり厳しい状況にあります。
TeraWaveも、FCCに申請した以上は待ったなしということです。
◾実現の鍵を握るニューグレンロケット
やはり今回のTeraWaveの計画は、ブルーオリジンが開発中のロケット「ニューグレン」とセットと考えるべきでしょう。

現在のAmazon Leoの状況を見ても、他社のロケットに頼りきりでは5,000機以上の衛星を計画通りに打ち上げるのは至難の業。
スペースXのスターリンクのように、ロケットも自前でコストを抑えてどんどん打ち上げできるような体制を整える必要があります。
ニューグレンはロケットの開発自体は2012年に開始したものの、それから開発遅延を繰り返して、民間企業による宇宙開発ではスペースXに大きく水を開けられていました。
ところが、2025年に入って最初の打ち上げに成功してからは、11月の2回目の打ち上げで1段目ブースターの着地に成功するなど驚異的な追い上げを見せています。
2026年2月下旬には、前回の1段目ブースターを再利用した3回目の打ち上げを予定。

果たして順調に行くか?
本格運用となれば、打ち上げ能力でスペースXに匹敵する初の民間ロケットということで、いよいよスペースXの対抗馬として頭角を現すことなるでしょう。
◾通信バックボーンから宇宙データセンターへ??
イーロン・マスクの発言にもあるとおり、ここ最近になってにわかに注目されてきた「宇宙データセンター計画」。
スペースX、Google、Axiom Spaceなどでは具体的な計画も公表されています。
ベゾス氏も具体的な計画については明言していないものの、未来ビジョンとしての可能性については言及しています。
今回のTeraWaveも、宇宙データセンターを念頭に置いた計画と考えるのが自然かもしれません。
(参考)
https://www.blueorigin.com/ja-JP/terawave
https://www.nasaspaceflight.com/2026/01/terrawave-lasers-speeds/
