【スペースデブリ②】宇宙のゴミ問題、どうやって解決する??|5分で読める最新テクノロジーあれこれ
最新のテクノロジーに関することを中心にお送りする本シリーズ。
宇宙開発、AI、量子技術から科学全般の話題まで、エンジニア視点で解説。
「理系の難しいことは苦手でちょっと。。。という人でも5分でスッと理解できるように」というコンセプトでお届けしています。
引き続きで「宇宙のゴミ問題」です。
ケスラーシンドロームが進むと、人類は地球に閉じ込められちゃうかもしれない、と不安を煽ったところまでで前回は終わってしまいました。
さすがにこれで終わったら絶望に向けてまっしぐら、ということになってしまいます。
さて、どうやって解決していくのでしょうか?
🌍 地球に閉じ込められるとどうなっちゃう?
もしケスラーシンドロームが本格的に起きてしまったら、どうなっちゃうのでしょうか?
人工衛星が圧倒的に多いのは低軌道(LEO)なので、ケスラーシンドロームが発生するのも低軌道です。
ということで、スペースデブリに直接破壊されてすぐに使えなくなるのは、低軌道にある主に通信衛星とか地球観測衛星など。
もちろん宇宙ステーションも低軌道にあるので、運用は難しくなってしまいますね。
低軌道とかLEOって何?って思った方はこちら
また、スペースデブリに衝突するリスクが高いため、ロケットの打ち上げ自体がかなり困難になってしまいます。
月とか火星に行くのはもちろん、惑星探査とか宇宙望遠鏡なんかの計画はすべて中止に。。
一方、地球から遠い中軌道(MEO)や静止軌道(GEO)にまでスペースデブリが飛んでいく可能性は低く、これらの軌道にいるGPSや気象衛星、放送衛星などはすぐには影響はなさそうです。
ただ、ロケットを打ち上げることが出来ないので、古くなった衛星を入れ替えることが出来なくなる。。。
ということで、数年~十数年が経過して衛星が故障したり、燃料が無くなってしまったらそれまでになってしまいます。
実際に、私たちの生活にはどんな影響があるんでしょうか。
一部の地域でインターネットが使えなくなる
飛行機や船は一世代前の航行技術に逆戻り、となって便数が少なるなるかも
カーナビやグーグルマップ、位置情報を使ったアプリ全般が利用できなくなる
天気予報の精度が大幅に低下して、台風とかゲリラ豪雨などの自然災害の予報なども難しくなる
宇宙開発、研究がストップ
代表的なところではこんな感じでしょうか?
もちろん、もっとたくさんあると思います。。
😫 宇宙ゴミを除去するのはむちゃくちゃ大変
じゃあ「掃除すればいいじゃん」と思うかもしれません。
でもこれがとんでもなく難しいのです。
秒速数キロで飛んでいるスペースデブリを捕まえるのは至難の業。
むやみに近づいて誤って衝突しようものなら、スペースデブリを増やすだけになってしまいます。
しかも、小さいものを含めると数億個というレベルなので、一つ一つ回収していくなんて無理な話。
地上で道路に落ちた空き缶を拾い集めるのとは訳が違うんですね。
実際のところ、回収できたスペースデブリは未だに一つもない。。
というのが現実なんです。
💪 それでもなんとかしないといけない!
だからもう放っておくしかない??
そんなことはありません!
誰かがなんとかしないと、人類の宇宙開発に未来はないんです。
じゃあどうすればいいのか?
実はスペースデブリって、軌道上を一定の速度(軌道速度)で周回しているからずっと漂っていられるわけです。
なので、減速させたり進行方向を変えて軌道から外してやれば、勝手に大気圏に突入して燃え尽きてくれます。
ということで今、研究されている方法は大きく分けて以下の二つ
ロボットアームやネットによる直接捕獲
捕まえた後は、減速させたり方向を変えて大気圏に再突入させます。
大きなデブリに有効な方法です。レーザーで軌道変更
デブリにレーザーを照射して、反作用で軌道を変え大気圏に突入させます。
小さなデブリに有効な方法です。
既存の技術で実現できるということで、ロボットアーム方式のほうはすぐに実行が可能です。
対して、レーザー方式はまだ研究段階。軌道を変えるほどのレーザーを発射するには、かなり大掛かりな装置が必要なので、費用も膨大です。
また、ちょっと視点を変えて以下のようなことも取り組まれています。
衛星の寿命を延ばす
使い終わった衛星はデブリになってしまうので、宇宙空間で燃料補給できるようにしたり、別の衛星とドッキングさせたりして、より長く衛星を使用できるようにする。大気圏再突入の義務化
運用終了した衛星は、数年以内の大気圏再突入させることを国際的なルールとする。破ったら罰金。
🚀 日本の宇宙ベンチャーが世界初の成果!
そんなスペースデブリの除去。
膨大な費用がかかるっていうのに、利益を生むわけでもない。。
「いったい誰がお金を出すっていうんだ?」
と、誰もが敬遠している分野でした。
そんな状況を解決しようと、2013年に日本で創業されたのがアストロスケールという宇宙ベンチャー企業です。
たった一人からスタートしたということですが、幾度かの資金調達を経て社員数百人の企業へと成長。
2021年には実証試験用の衛星を打ち上げ、磁石を使った捕獲装置で模擬デブリを捕獲する実証実験に成功。
更に2024年には、本物の大型デブリ(H-IIAロケットの上段)をターゲットとして、15mの距離まで接近するという世界初の成果を上げています。

えぇ~、近づいただけなの??
と思うかもしれませんが、相手もこちらも秒速数キロで動いてるわけですから、ちょっとでもミスがあったら衝突するかもしれない。
快挙と言っていい、すごいことなんですね。
そして、次のミッションでは、いよいよ本物のデブリの除去です。
😒 地味で目立たないかもしれないけど…
宇宙開発では、大規模な通信衛星ネットワーク構築や、宇宙旅行、月や火星への移住計画など、いつもトップニュースになるような事業に比べると、スペースデブリ除去ってとっても地味と思われるかもしれません。。
でも、誰かがやらないといけないことは確かだし、そこには大きなビジネスチャンスがあることも確か。
アストロスケールが成果を上げ始めた最近では、スペースデブリ問題に取り組む企業も各国でどんどん増えてきています。
陰ながら宇宙開発を支える。
そんなスペースデブリの分野で、世界をリードしていくのは日本の企業かもしれませんね。
📝 まとめ
最期にちょっと余談ですが、1980年代後半に大きな話題になった「オゾン層破壊の環境問題」がどうなったのか、知ってますか?
え?そんな問題、あったことすら知らないって??
エアコンや冷蔵庫、スプレー缶などで広く使われていた「フロンガス」が地球の上空を覆って紫外線を防いでいるオゾン層を破壊し、オゾンホール(オゾン層が無い部分)が発生。
強い紫外線で皮膚ガンの発生リスクが高くなる、と連日ニュースで大きく取り上げられていました。
スプレー缶でフロンガスが使用されたなくなった、くらいの話は誰でも知っていると思いますが、その後どうなったんでしょうか。。
実は最近になって、地道な環境活動の成果が出始めているそうで、2060年頃には1980年の水準まで回復する見込みなんだとか。
とても喜ばしいニュースです!
でも問題が発覚した当時はあれだけ報道されていたのに、改善してるって話がメディアで取り上げられることはほとんどありません。
そしてこれは、スペースデブリ問題でもおそらく同じ。
問題では無くなった時、メディアでこの話題が報じられることは、まったくないかもしれません。
成果を上げれば上げるほど、注目されなくなる。。
でも目指すところはまさにそこです。
問題解決に向けた技術開発はまだ始まったばかり。
道のりはまだまだ長いですが、人知れず地道な成果を上げ続けていく必要があるのです。
