【量子通信①】「量子もつれ」で光より速く通信ができるようになる!?|5分で読める最新テクノロジーあれこれ
最新のテクノロジーに関することを中心にお送りする本シリーズ。
宇宙開発、AI、量子技術から科学全般の話題まで、エンジニア視点で解説。
「理系の難しいことは苦手でちょっと。。。という人でも5分でスッと理解できるように」というコンセプトでお届けしています。
今注目の「量子技術」。
量子コンピュータや、量子センシングなど、量子の分野ではいくつかの技術が研究されていますが、今回から数回にわたって題材とするのは「量子通信」という技術です。
今回は、「量子もつれ」という実に奇妙な物理現象で、光速を超える速度で通信できるのでしょうか?
っていう話です。
🔦 光の速さ、どれくらい?
「光」がむちゃくちゃ速いっていうのは、誰でも知ってますよね?
秒速約30万キロメートルで、1秒間に地球を7周半もします。
かのアルベルト・アインシュタインの特殊相対性理論によって、光速よりも速いものは存在しないことがわかっています。
光は比べるものが無いくらいに絶対的に速いもの。
あまりに速くて、光の速度に近づいていくと時間がゆっくり進み始めるとか。。なんかおかしなことになってしまうくらいです。
そして通信の世界では電波で情報を送りますが、電波も光も実は同じ電磁波。電波が伝わる速度も基本的に光速と同じです。
なので、情報が伝わる速さも光速が限界、ということになっています。
🌎 光速って宇宙規模ではけっこう遅い!?
この世で最も速い光速。
それはもう十分速いだろっ!!
と思われるかもしれませんが、実は宇宙レベルの話になると事情が変わってきます。
例えばテレビのニュース番組で良く見る、日本~アメリカ間の衛星中継。
こちらの質問に答えるレポーターの反応がワンテンポ遅くて、気持ち悪いことがありますよね。これは上空 3万8千キロにいる静止衛星で電波を中継するので、タイムラグが発生してしまうためです。
じゃあ、相手が月にいる場合はどうなるでしょう?
月と地球の距離は38万キロなので、静止衛星の10倍!!
こちらの電波が相手に届くだけで1.3秒もかかってしまいます。
更に火星の場合は??
火星が地球に近い時でも5500万キロも離れているので、片道3分!
火星が遠い時だと、なんと20分もかかってしまうんです!!
そんなに時間がかかったら、少なくとも火星探査機を地球から遠隔で操作するなんてまず不可能ですよね。
将来、火星に人類が移住するようになっても、火星に住む人とリアルタイムで会話するのはちょっと難しそう。。。
時代に逆行して、メールやビデオレターでやり取りすることになるでしょう。
こうやって考えると光速ってむちゃくちゃ速いようだけど、実は意外に遅い。
光速を超える速度で通信できる「超光速通信」は、まさにこれからの世界では夢の技術なんですね。
🧵 ところで「量子もつれ」って何?
ここで登場するのが「量子もつれ」。
ですが、いきなり量子もつれと言われても何のこと?って感じですよね。
最近は「量子コンピュータ」が話題になったりしているので、聞いたことがある人もいるかもしれませんが、”量子”っていうのは簡単にいうと、分子とか原子とかよりさらに小さい、むちゃくちゃミクロな世界の話です。
そのむちゃくちゃミクロの世界では、私たちの常識ではちょっと想像ができないような奇妙な物理現象が発生したりします。
そして、その奇妙な物理現象の一つが量子もつれです。
量子もつれってどんな現象でしょうか?
”プラス”と”マイナス”のどちらにも成り得る2つの”粒子”が強く結びついた状態のことを「量子もつれ」と言います。
この状態になると、2つの粒子がどんなに離れていても、一方の粒子の状態を観測してプラスだったら、もう一方はマイナスに。一方がマイナスだったら、もう一方はプラスに瞬時に決まるんです。
どうです?分かりました??
チンプンカンプンですよね。。
”粒子”を”コイン”に置き換えて、もうちょっと分かりやすく説明しますね。
「コインA」と「コインB」という2枚のコインがあります。2枚のコインは、高速で回転しているので回転が止まるまで表になるか裏になるかはわかりません。
そして、2枚のコインに魔法をかけて「量子もつれ」の状態にします。
その状態でコインAはその場(地球)に残し、コインBを火星に持っていきます。まだコインはどちらも高速で回転したままです。
準備完了。
ここで、回転しているコインAを上から手で叩いて止めます。そうするとコインAは”表”か”裏”のどっちかに決まりますよね。
そしてその瞬間、はるか遠くの火星にあるコインBの回転も止まってコインAとは逆になるのです。
つまり、コインAが表だったらコインBは裏に、コインAが裏だったらコインBは表になる、というわけ。
なんとなく理解できたでしょうか?
🚀「量子もつれ」で超光速通信ができちゃう??
常識的に考えると、火星にあるコインBには、地球のコインAが表裏のどっちになったかなんて分かるはずがありません。情報を伝えるには、最低でも3分はかかるはず。
これが瞬時にコインAとは逆の状態になるっていうわけなので、
「情報が光速よりも速く伝わった!!」
と思いますよね。
実際には、コインじゃなくて粒子を使うわけですが、たくさんの粒子のペアを量子もつれの状態にして、一方を火星持っていけば、地球~火星間の電話だってストレスなく出来ちゃいそうですね。
さて、量子もつれで超光速通信は実現できるのでしょうか?
実は、もう答えは出ています。
そしてその答えはというと。。。
実現できない
です。
残念。。。。
ここまで説明しておいて「できない」なんて有り!?
と思われるかもしれませんが、これが最新の物理学が出している答えなんです。
📝 まとめ
と、ここまで説明してなんで実現できないの?
という説明がするべきところですが、長くなってしまいそうなので今回はここまで。
注目の技術である「量子通信」の正体は量子もつれという物理現象から、超光速通信なのかと思いきや、そうではありませんでした。
では、なんで量子通信が注目されているんでしょうか?
次回はそのあたりについて、迫っていきたいと思います。
