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【映画】「スティング」でロバート・レッドフォードを追悼

2025年9月16日、ロバート・レッドフォード(敬称略/以下同じ)の訃報を聞いた。ハリウッドが生んだマネーメーキングスターとして、ポール・ニューマンと双璧をなす存在だった彼。日本ではフランスのアラン・ドロンに並ぶ美男俳優の代名詞のような存在でファンも多く、夜の報道にもかかわらず、インターネット上ではあっという間にトレンドワードになっていた。

彼の作品は、うちにもたくさんある。『追憶』『アンカーウーマン』『スパイゲーム』といった名作ももちろんいい。だけど、今回彼を追悼するにあたって対象として選んだのは、やっぱり王道中の王道、映画『スティング』だった。


1.親子を繋いだ思い出

実は、私の父は熱烈なポール・ニューマンファンだった。

若い頃に見たという『暴力脱獄』や『左利きの拳銃』の話はよく聞かされていたし、日本ではマキシムのCMに出ていたので、私のような世代でも知っていた。

バブル全盛期の1986年頃、我が家にもついにVHSビデオデッキがやってきた。レンタルビデオは2泊3日で1本380円、3本まとめて借りると1,000円で、6泊7日レンタル可能が相場だったと思う。

中高生の小遣いでは、毎月映画館に通うのは不可能だったから、レンタルビデオかレコード(CD)を借りていた。私ん家にはファミコンがなかったので、音楽か映画鑑賞が勉強の合間の息抜きになっていた。

そんな折、新聞広告でCICビクターが洋画の名作を低価格で販売する企画を知った。1本3,500円、2巻組だと5,000円だという。

私の目当てはオードリー・ヘプバーンの『ローマの休日』だった。これは予約して買いに行ったんだけど、先月からの繰り越し分の小遣いがあり、もう1作買ってみようかと手に取ったのが、この『スティング』だったのだ。

当時は、映画公開から7〜8カ月間はビデオ化されないのが普通だった。好きな映画がレンタルビデオ店に並ぶまでの暇つぶしに旧作を見るか、くらいの感覚だったのだ。

すると、ポール・ニューマンファンの父親がそのビデオをすかさず見つけ、「俺にも見せろ」という話になり、まさかの親子鑑賞会になった。父が初見だったのか、二回目だったのかは覚えていない。ただ、リビングでチーズとサラミを食べながら観て、ラストシーンで2人とも思わず手を叩いて喜んだことだけは、はっきりと覚えている。

VHSからDVDにメディアが変わっても、この作品は真っ先に買い替えたし、父はなぜか「俺のスティングだけは捨てないでくれ」(私が買ったんだけど)と何度も言い続けた。だから、そのVHSビデオは、父が亡くなってからようやく処分したくらい、私と父にとって大切な作品になってしまった。

2.観る人全てが「楽しい」と感じる大傑作

この映画はコメディであり、詐欺師の映画としても類を見ない傑作だと言える。1930年代のシカゴという舞台設定、全体をいくつかの章に分けて冒頭に挿入される紙芝居のようなイラストもワクワクしたし、明るく弾むラグタイム音楽も最高だった。

制作の裏側を語ったドキュメントを更に数年後に見たことがあり、出演者がセリフをしゃべっている時にBGMとして差し挟まれる音楽はほとんどなく、会話のセリフとテンポそのものを楽しませるようになっていることもわかった。

テーマ曲(The Entertainer)は公開から50年経っても日本のバラエティー番組で使われているので、映画を知らない人でも耳にしたことがあるだろう。

全編にわたって登場するのはロバート・レッドフォードだが、撮影開始時に監督がポール・ニューマンの自宅を借りることになったのをきっかけに、キャストが大きく動いたらしい。

キャリアが上のポール・ニューマンが、映画開始から20分後に登場するというのも、今考えると驚きだ。本人が出演を希望しただけあって、映画の一番の見せ場である賭けポーカーのシーンで見せる茶目っ気ある表情は、彼ならではのもの。やっぱり、どうしてもポール・ニューマンに目がいってしまうんだよね。

トップスター2人のバランスを考えつつ、セット・衣装・音楽・脚本どれを取っても瑕疵がない。これを束ねたジョージ・ロイ・ヒル監督の演出もお見事である。

初めて見る人にはもちろん楽しい映画だし、結末を知っていて何回見ても楽しめるのが、この作品のすごいところだ。

私が覚えている限り、オスカーの作品賞を受賞したコメディ映画というのは非常に稀だ。この作品の前後に作品賞を取ったのが『ゴッドファーザー』(1972年)と『ゴッドファーザーPARTⅡ』(1974年)だったことを考えると、重厚な大作が有利だったのは間違いない。そんな中で、この軽快なコメディが作品賞を受賞したこと自体が、この映画の偉大さを物語っている。

3.「The Entertainer」に込められた思い

ロバート・レッドフォードは、『スティング』と同年にバーブラ・ストライサンドと『追憶』にも出演していた。こちらも傑作だが、1973年を代表する1本を選べと言われたら、やっぱり『スティング』に軍配が上がるだろう。

この作品がもしフランス映画だったら、ジャン・ギャバンとアラン・ドロンのような師弟関係のシリアスでシビアな映画(ご両人も『地下室のメロディー』や『暗黒街のふたり』で共演)になっていたかもしれない。
だが、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのタッグとなると、どこかカラッとした、底抜けに明るい映画に仕上がっているのが最大の持ち味だ。

なお、『追憶』と『スティング』の音楽を担当していたのはマーヴィン・ハムリッシュで、この人も両方の作品で歌曲賞を受賞している。

たまたまレッドフォードの訃報を聞いてネット検索をしていたら、オスカー受賞の瞬間を集めたオスカーチャンネルがあって、この映画が作品賞を受賞する瞬間の動画もあった。プレゼンターがエリザベス・テイラー(リズ)というのも、なんだか懐かしくて時代を感じさせる。

さらに、2002年にロバート・レッドフォードがアカデミー名誉賞を受賞した時に、壇上のプレゼンターが『追憶』で共演したバーブラ・ストライサンドだった。
てっきり『追憶』の主題歌が流れるかと思いきや、レッドフォードがステージに上がる際の入場テーマ曲が『The Entertainer』だったのは、なんかすごく嬉しくなってしまった。

こういうオーソドックスな傑作映画は、やっぱりNetflixみたいな配信でいつでも見られるようにしてほしいね。

改めて、ロバート・レッドフォードのご冥福を祈るとともに、彼が残した素晴らしい作品たちに感謝しよう。

※本文中の登場人物・団体等は敬称略です。
 

※オスカーチャンネル公式より




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