ふぃり夫さんアドベンチャー・その3
『抱腹絶倒、驚天動地のSF冒険ギャグ小説』
【作:ママンマフィン】
【第3話:トイレの先が異次元だった件】
ヤスさんが急いで売り場の方へ飛び出していくと、そこにはふぃり夫さんが肩で息をしながら立っていた。
心持ち、顔色が青ざめているように見えた。
「お、おい大丈夫かふぃり夫。いったい今までどこに行ってたんだ?」
ヤスさんはふぃり夫さんの事を心配しつつも、仕事場を無断で離れた事について言及する。
「あ、ヤスさん。あー、ええー、と……その、実は何があったのかよく覚えてないんですよ」
なんとふぃり夫さん、自分がUFOにさらわれた事をすっかり忘れ去って
いるようだった。
巷のオカルト番組などでよく聞く話だが、どうやらふぃり夫さん、UFOにさらわれた挙句その中で何か(細工)を施されたらしかった。
日常生活に必要な部分は残っている様だが、店先でUFOと遭遇した後の事はすっかり記憶を失っているようだ。
ただ事情を全く知らないヤスさんには、ふぃり夫さんが仕事をさぼってどこかに行ってる時に頭でも打ったのかと思うのがやっとであり、彼に向かって少々苦言を呈するのだった。
「お前さんねぇ。親切心もいいけど、今は勤務時間中よ?しかも憶えてないって、それどうゆう事?どっかで頭でも打った?」
「だから……憶えてないんですってば。なんか店前で掃き掃除してたところまでは覚えてるんですけど、その後がさっぱり。気が付いたら、川沿いの土手のところで寝てました」
そう話すふぃり夫さんの顔つきを、いつもと違うように感じるヤスさん
だった。
(……なんかこいつ、相当具合悪そうだな。無理させず、今日は早退させた方がいいかな?)
ふぃり夫さんの体を気遣うヤスさんだったが、実際はここで帰宅させると不都合だという思いがあった。
だが、この後彼の身に何かあった場合、更に大変な事態になってしまう。
そこでヤスさんは、とりあえず病院へ行くように提案する事にした。
「頭打ったんなら一大事だからな。すぐに病院に行ってこい。トイレ修理は後回しだ」
「びょ、病院!うううう。嫌です。病院嫌ですダメです行きたくないです大丈夫です。そんなところに行ったら何をされるか判ったもんじゃない!」
顔面蒼白になって早口でまくし立てるふぃり夫さん。
まるで子供の様に病院へ行く事を嫌がった。
「ふぃり夫……お前、マジ大丈夫か?」
「え?あ、はい。はいはいはい、大丈夫ですってば。解りました。トイレですね。そうそう、前からちょっと電気系統が変でしたもんねぇ」
そう言うとふぃり夫さん、店の奥にある洗面所に向かって猛ダッシュで
立ち去って行った。
「おい、ふぃり夫~!後で始末書を書かせるからな!」
立ち去るふぃり夫さんの背中に向かって叫んでは見たものの、彼の耳には届いてはいないようだった。
「やれやれ。ちょっとばかり変なのはいつもだが、今日に限って一体あいつ何なんだよ?何を隠し事なんかしてるんだ?」
ヤスさんはふぃり夫さんの怪しい言動に不安を感じ、顔を曇らせる。
だが会社の経営者である彼は、そういつまでも深刻な気分ではいられな
かった。
ドアチャイムが鳴り、モニターに中年の夫婦の姿が映し出される。
本日最初のお客様のご来店だった。
「はい、いらっしゃいませ。ただ今そちらへお伺いしますのでごゆっくり
店内をご覧ください」
マイクをオンにして、客に向かいアナウンスをする。
店長室を出た後、ふと通路の奥に目を向ける。
そこには店のトイレがあり、目下ふぃり夫さんが作業中の筈だった。
それが証拠に、ドアの取っ手には『ただいま作業中に付き使用禁止』の
プレートが下げられていた。
「はぁ~。やれやれ」
溜息をつき肩を落とすも、そこは店の主たるヤスさん。
キリリと表情を整え店先に向かって歩いて行った。
一方、トイレ内で一人黙々と作業中のふぃり夫さん。
床にどっかりと座り込み、周囲に工具を並べて壊れたトイレ
(の電気系統)と格闘中。
その表情は特に変わったところもなく、いつも通りのにこやかさ。
いや、むしろ嬉々としてハンダごてやらドライバーを操り、楽しそうな
様子だった。
「ふんふんふふふんふふんふふん~♪ 街の家電は有栖堂~」
店のテーマ曲(作曲ヤスさん)などを鼻歌で歌いつつ、作業は順調に
進んでいる。
そして。
「よし、これできちんと動く筈だ。DODO社のバキュームトイレ、今回の
展示会の売りだからなぁ。不具合は困るよ」
そう言ってふぃり夫さん、工具を片付け試験台として自らが用を足そうとズボンをおろし腰かけた。
それが澄んだ後、シャワー機能をオンにしてみる。
「はふぅ~」
気持ち良さげなふぃり夫さん。
用を足しきちんと身支度をして後始末をしようと、DODO社ご自慢の強力バキュームのスイッチをオンにした……
その途端!
「うっ、うわぁぁぁーー!」
なんと、便器内のアレと共にふぃり夫さんの身体も一緒に、バキュームに吸い込まれそうになってしまった!
「あがががが!た、助けて!誰か助けて!す、吸い込まれる……わ、私は
汚物じゃないよ」
ひぃぃーーうぎゃぁーーと悲鳴と喚き声、両方発しながらふぃり夫さんは便器の端に手をかけ、壁に取り付けられた緊急用スイッチに手を伸ばしそれを押した。
ピンポンピンポンピンポン!
店内に警報が鳴り響く。
吸い込まれそうになっているふぃり夫さん、必死にバキュームに抗ってはいるものの、なんせ超強力バキュームの威力は凄まじく、ふぃり夫さんの
身体は便器の中にすっぽりと収まりかけていた。
「な、なんで?便器の排水溝、そんなに大きい訳な………!」
ふぃり夫さんが恐る恐る顔を便器内に向けたその先には、なんと、巨大な黒い大穴が拡がっていたのだった。
そして驚きの余り目をまん丸にしてその様子を眺めていると、その穴から眩い光が漏れ出してきた。
「はぁ?なにこれ?私、今日に限ってなんでこんな目にばっかり
合うんだ?」
突然ふぃり夫さんの脳裏に、今朝の出来事の光景が蘇ってきた。
真っ黒い球体が現れ、謎の光線を発射すると共に空中に持ち上げられた
記憶。
そしてその先について何も覚えていないけれど、何かがその球体内で
行われていた事を。
「助けてぇ~!」
悲鳴を上げ続けるふぃり夫さん。
なんと、床に落ちている工具の類も強力バキュームによって吸い込まれ
そうになり、その中から六角レンチをふぃり夫さんはぱしっと手に取った。
ドンドンドン!
「お、おい、ふぃり夫!何をやった?一体そこで何をやったんだ?」
扉を叩く音がしてヤスさんの声が聞こえて来た。
「ヤスさぁ~ん!なんでもいいから早く助けて下さいよぉ~」
ふぃり夫さんは涙声で訴えた。
そんなふぃり夫さん、既に身体の3分の2がバキュームの先に吸い込まれかけていた。
そしてトイレの扉が勢いよく開かれた。
ヤスさんはトイレ内に飛び込んで来ると同時に、その体をフリーズ
させた。

「げっ!ふぃり夫、な、なんだこれ!どうなってんだよ?」
ヤスさんが開口一番に発したセリフは、ふぃり夫さんを更に落ち込ませるには十分だった。
「ヤスさぁ~ん……なんでもいいから助け……」
ふぃり夫さんは既に頭だけが見える状態で必死に助けを求め、声を振り絞っていた。
「ふぃ、ふぃり、ふぃり夫ぉ~!」
ヤスさんは我に返り、ふぃり夫を助けようとして便器の中に手を差し伸べようとした。
しかし。
きゅぅぅぅーーー、すっぽぉーーーーん!
敢え無くふぃり夫さんはトイレバキュームの中の、更にその先の空間に
吸い込まれて行った。
ふぃり夫さんが最後に目にした光景は、バキュームの影響によってロマンスグレーのカツラを剥ぎ取られかけたヤスさんの泣き顔だった。
なんと、トイレの中に吸い込まれてしまったふぃり夫さん。
一体どうなる?
第4話に続く。
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