昭和レトロ風SF冒険小説1
【ぼくらの怪獣大戦争1939】(前編)
「功ちゃん、やっぱ止めよう。見つかったらヤバいよ」
隣んちの勝ちんが、今にも泣きだしそうに声を震わせた。
僕は、その言葉をあえて無視した。
「ねえってばぁ、本当にヤバいって。見回りの兵士に見つかったらどんな目に合うか分からないよ!聞いてる?功ちゃん。おいら帰りたい」
勝ちんはますます怯えたように腰を引き、かすれた声を振り絞る。
今夜は新月でおまけに曇り空。
こっそり家を抜け出し、見回りの駐在さんに見つからないように裏道を走る僕と勝ちん。
国防軍の敷地内に潜り込むなんて事は、周囲を縄張りにしているぼくら「山猫少年団」には朝飯前ってものだった。
ぼくたちの今夜の目的は、以前から軍の技術部が開発してると噂の、新兵器の試験をこっそり覗きに行く事。
情報の出どころはメガネぼんぼんこと有梨礼二。
彼が教室内で自慢げに話しているのを耳にしたもんで、そいつを確かめてやろうと思ったのが事の始まりだ。
有梨の親父は軍人で、軍曹だ。
新兵器と言うのはでっち上げかもしれないけど、あいつの親父が軍曹っていうのは本当だ。
しかも親戚には技術士官もいるって言ってた。
もしかしたら、本当に新兵器なるものをこの目で見られるかも知れない。
そう思うと僕はもう、それを確かめに行きたという気持ちを、抑える事が出来なかったんだ。
でも、一人で行くのはちょっと怖かった。
だから隣んちに住む親友の恵庭勝久、通称勝ちんを誘って演習場までやって来たんだけど、勝ちん思った以上に臆病でこの始末だ。
「お前なぁ。そんなんだから、1組のすばるちゃんに振られるんだぜ。男ならもっと、そうだな……算数の大利根先生みたいにピシッと、格好よくしたらどうだい?」
すばるちゃんは1組の、みんなの憧れ。
父ちゃん達が言うところの、マドンナってやつかな。
頭も良くてとにかくかわいい。
つまり、へっぽこな勝ちんなんてはなから相手にされる訳なかったんだ。
でも僕は優しいから、失恋で萎びてる友人を励ますことにした。
「うん……次は頑張ってみるよ。それより、基地の様子は?」
「それが暗くて良く判んないんだ。まだ、新兵器を運び出して無いのかもしれないけど」
僕は持参してあった懐中電灯は使わず、基地の鉄塔の明かりを頼りに目を凝らしていた。
「そういえば、ここしばらく奴らの襲撃が無いよね。諦めたのかな」
僕と話をしているうちに落ち着いてきたのか、勝ちんは震えずに話すようになっていた。
「いや、来るさ。きっと来る。もしかすると今は、大陸方面とかを襲撃してるのかもしれない」
ぼくは親指を軽く咬み、金網越しから基地の演習場に目を凝らし続けた。
何も見えない。
やっぱり噂は嘘だったのかな。
それとも……。
ぼくたち二人は薄暗がりの中、何も起こらない演習場の様子を黙って眺めるばかり。
夏の夜で寒くはないけれど、体のあちこちを蚊に刺されポリポリと掻きむしりながら、いい加減諦めて帰ろうかと二人で顔を見合せた。
その時だった。
突然、空に閃光が走ると見上げた空に異変が起きていた。
空間が歪んでいる!
周辺の雲が拡散されて消えていく。
そして、突風が地上を襲う。
「うわぁ!と、飛ばされる!」
ぼくと勝ちんは飛ばされまいと必死になり、金網にしがみついていた。
どうにか突風の脅威から逃れたのだけれど、再び空を見上げた瞬間、声にならない悲鳴を上げていた。
「ひぃぃー!え、え、円盤だ。空飛ぶ円盤だ!やつら、やっぱり来やがった!それも今までにない大群だぞ!」
見上げた空には球体を押しつぶしたような、そう、まるでどら焼きのような形をした飛行物体が、何十という大編隊で空を飛び回っていた。
「で、で、でたぁー!外惑星人の円盤だ!奴らまた、この町を破壊する気だぞ」
僕はちょっと興奮してたせいで、フェンスの前でぴょんぴょん跳ねながら声を大にしてはしゃいでいた。
「この前は、もっと少ない編隊だったよね。なんだか円盤の種類が違うような気がする。あの時は基地の航空隊が追い払って町は無事だったけど、実は港がめちゃくちゃになって大変だったって、うちの母ちゃんが言ってた」
僕たちの住む街は漁業が盛んな所で、同時に軍港もある街だった。
外惑星人たちの目的がなにかは、実のところ良く判っていないらしい。
でもこうして破壊活動をしている以上、友好関係の為に来たんじゃないってことは確かだと思う。
実際、侵略的行為に違いないって周りの大人たちが言ってるし。
ただ、僕たちの学校ではもっぱら「街中のかわいい女の子をかっぱらいに来てる」っていう説が有力だった。
そうなるとすばるちゃんも狙われる可能性が大きい。
うーん、山猫少年団の任務に美少女の警護を加えなきゃ。
学級のマドンナを護るぞー!
「あ!功ちゃん、見なよ!格納庫から何か出てくる!」
勝ちんに言われるまま基地の方へ目を向けると、そこには巨大な丸い形をしたアンテナ状の何かが、トラックに牽引され運び出されるところだった。
「すげー。あれが新兵器なのかな。あいつら、よりにも試験運転をやるって時に飛来するとは。結構間抜けな連中だなぁ」
僕は肩をすくませ、首を傾げた。
勝ちんは苦笑いを浮かべてる。
ウィーーンウィーーン、ブゥーーン!
基地の演習場から物凄い音が聞こえてくる。
同時に新兵器の半球体を支える支柱が、激しく発光しているのが遠目にもはっきりと見えた。
光線兵器。
防衛軍の航空機に搭載されている、破壊光線銃のでっかいヤツだ。
僕と勝ちんはフェンス前に腹ばいになり、じっと様子を伺う事にした。
勝ちんがごそごそと、カバンの中から双眼鏡を取り出した。
「あ、お前いいもん持ってんじゃん、ちょっとそれ貸せ」
「ええーっ、おいらが持ってきたのに。ずるいなぁ功ちゃん」
勝ちんから双眼鏡をむしり取って、前方の様子を観察する。
新兵器を牽引するトラックの周囲に、武装した兵士や技術者が沢山いるのが見えた。
「やっぱり双眼鏡はよく見えるな。お!砲身が動き出した。上に向けて光線照射する気だぞ」
双眼鏡を握る僕の両手は汗ばんでいた。
興奮が止まらない。
ビカビカビカ!
バリバリーーッ!
激しい音が響き渡り、辺りはまばゆい光に包まれる。
「うわぁ!」
「怖いよぉ!功ちゃん、もう帰ろう」
僕たちは閃光によって目がくらみ、轟音で耳が遠くなった。
しばらくしてやっと目と耳が元に戻った時、空の遠くの咆哮から航空機の音が聞こえてきた。
それは近年開発された「じぇっとえんじん」という方法で飛行するらしいが、物凄い速さでこちらに向かっているようだった。
ただ、外惑星人どもの円盤はそれを遥かに上回る速さと機動性を持っていて、なおかつ武装も防衛軍以上の威力があるらしい。
前回は何とか追い払ったというものの、防衛軍の被害は相当なものだったっていう話を大人たちがしているのを、僕たちは知っている。
「ちぇっ、これからがいいところだってぇのに、なんてこったい。いよいよヤバくなったら走って逃げれば何とかな……」
僕は言葉を最後まで言えなかった。
上空ではいよいよ戦闘が開始され、円盤の大群が光線を放ち防衛軍のじぇっと機を次々と撃破していた。
爆発炎上して地上に落下する機体。
しかし防衛軍も負けてはおらず、必死に敵の攻撃をかわしながら応戦している。
搭乗しているのは、もの凄い腕の操縦士なんだろうなぁ。
えりーとぱいろっと言うんだって、向かいの雑貨屋の梓姉ちゃんが教えてくれたっけ。
だけど、敵の外惑星人の円盤が多すぎるって!
多勢に無勢ってやつじゃん。
とても勝てる気がしないよ。
さすがに僕も(これはまずいぞ)ってなった。
それに警報が発令されたみたいだし、さすがに父ちゃん母ちゃんたちも僕がいない事に気付いてる。
これは帰ったらこってりたっぷり、油を搾られるやつだ。
「仕方ない。勝ちん帰ろうか」
僕たち二人は立ち上がると、身体に引っ付いた土くれや葉っぱを払い、荷物を手にしてその場を立ち去ろうとした。
ゴゴゴゴ、ゴロロロ……。
上空で戦闘の音とは違う、雷のような音がとどろいた。
その途端。
ザァァー!
本当に雨が降り始めた。
「うわぁ、冷てぇ。雨降るなんて聞いてないよ。おい勝ちん、早く帰ろう」
「あ、うん。でも、待ってよ功ちゃん。双眼鏡落としちゃった」
僕は身を翻し、家の方向に向かって走り出そうとして足を止めた。
「まったく。お前ドジだからなぁ。どのあたりに落とした?」
「この辺りだと思う。ここちょっと窪んでるから落ちてはまってるかも」
勝ちんは地面のくぼみに降りていき、手探りで双眼鏡を探し始めた。
空はひっきりなしに赤く輝いていた。
さらに稲光も加わって、なかなか凄い事なってる。
花火大会だってここまで派手な感じにはならないよ。
とにかく凄い、としか言いようがない光景だった。
「あった!見つけたよ功ちゃん。さあ、急いで家に帰ろうよ」
双眼鏡を片手に振り回しながら、勝ちんが土手を駆け上がってきた。
突然の雨のせいで僕たちはびしょ濡れだ。
季節は夏で熱帯夜だったから風邪をひく心配はなさそうだけど、上空で起こっている事を考えたら、別な意味でまずいかも知れないと思った。
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今回のお話は、過去作(例によって休筆放置作)の前日譚的なストーリーなんですが、連載3回の予定で執筆してます。
特撮を愛する気持ちが高じて、勢いでキーを叩いてます。
(用語設定で本当は○人光線としたかったんですが、コンプラ考えて破壊光線にしました)
とにかく昭和臭がプンプンすると思いますが、それを含めて楽しんで頂けたら幸いです。
この記事が良かったら、スキやフォローなどのご支援を頂けたら幸いです。
甘口辛口、コメントも大歓迎。
モチベーションアップで次回の執筆の励みになります。
それではまた次の記事でお会いしましょう。
See you again !
『この話の続きはこちら』
『こちらの作品もよろしくお願いします』
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