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ゆめはるストーリーズ第6話 ティータイムはお静かに/招待状 1/3

第6話 ティータイムはお静かに~招待状~


── エリック視点 ──


 フルールが人間界に出かけている間、代わりに店番を頼まれた。魔王の仕事はカーリーに任せてきた。
 暇なんだよ……平和だから……。地獄なのに。
 ヒイラギちゃんと店番していると、一人の男性がフルールを訪ねてきた。生花店のお客様、というわけではない。執事風の身なりで、彼は自分をハリーと名乗った。

「こちらの招待状を、マコト様に渡して頂けますでしょうか」
「招待状……?」
「お茶会の、でございます」

 ハリーは眉ひとつ動かさない。
 彼から受けとった招待状を、見る。招待者は、クリス。封蝋は、カラスとユリがあしらわれていた。

 ……俺は思わず息を呑んだ。

 この紋章を持つ者と、フルールを近づけてはいけない。

「ハリー様。失礼ですが、マコトとはどのようなご関係で?こちらの紋章は、神殺しのご一族のもの。彼女が死神だと知っていて、このような招待を?」

 睨みつけそうになる目を、必死に笑わせる。万が一本当に親しい間柄だとすれば、失礼にあたるからだ。不躾な質問ではあるけれど、もしも彼女に危害を加えるのが目的ならば、容赦はできない。
 ハリーは少し長めの息を吐き、俺を見た。

「あなたは魔王・エリック様でございますね。マコト様の旧友だとか。あなた様の心配、ごもっともでございます。が、案ずることはございません。クリス様とマコト様は、とても親しい……友人関係でございます。神殺しの名は、とっくに廃れております」
「はぁ……」

 信じられない。

「……信じられないのも、理解できます。でしたら、私の権限で……あなた様も招待いたしましょう。マコト様の側で、我が主人に会えばそれが真実か否か、わかるはず」
「否、ならば?」
「その場で我々を切り捨てて頂いて構いません」

 ハリーの目は、真っ直ぐに俺を捕らえた。
 嘘はなさそうだ。

「……不躾な質問、申し訳ありません」
「いいのです。愛する人に、身の危険があるなら当然のこと」

 ハリーは、ようやく目を細めた。
 当日お待ちしています、と一枚のカードを渡された。どうやらこのカードが、俺の招待状らしい。

「マコト様に、よろしくお願いします」
「承知しました」

 ハリーは俺に一礼し、店を後にした。


── ヒイラギ視点 ──

 ハリーが来てから、エリックの機嫌がとてつもなく悪い。クリスと、マコトの関係が気になって仕方がないといった様子だ。
 私も一度、彼に会ったことがある。
 クリスとマコトは、本当の姉弟みたいなものだ。お互い信頼し合っているのは、すぐにわかった。それをエリックに伝えたら、彼も少しは落ち着くかもしれない。でも、あらぬ誤解を招きそうな気がして言うのは辞めた。

 クリスはいいのよ。
 問題はハリーの方。

 彼はミカエル神父の弟で、多分だけど、マコトを狙ってる!絶対そう!妖精の勘!めちゃくちゃ鋭い目をしてるもの。あれは命とるつもりよ!!!

「ただいま」
「おかえり、マコト」
「店番ありがとう、エリック。……て、どうした?なんであんなに不機嫌なの」
「実はね……」

 ハリーがお茶会の招待状を持ってきたことを伝えた。マコトはいろいろと察したようで、苦笑いを浮かべていた。

「エリック、クリスは僕の家族みたいなものだから心配いらないよ。神殺しなんて……彼らはそんな物騒なことしない。不安なら君も一緒に来るといい」

 エリックは頬を膨らませたまま、ハリーから受け取ったカードを見せた。

「なんだ、招待を受けたんだね。なら問題ない。行こう!」

 マコトは上機嫌。

「君……嬉しそうだね……」

 ますます不機嫌になるエリック。

「そりゃ嬉しいさ。僕はね、この国のお茶とお菓子に目がないんだ。エリックも気に入るよ」
「……そうだね……」

 結局。
 エリックの機嫌が治ることはなかった。




……
………
…………



 お茶会前日。
 マコトとエリックは、クリスの待つ城へ向かった。
 私はお留守番。
 マコトに誘われたけれど、断った。

「本当によかったの、ヒイラギちゃん。店番なら、僕一人でも大丈夫なのに」

 マルコだ。
 私は首を横に振った。
 私は苦手なのだ。人間が集まる場所は。どうにも落ち着かない。
 クリスたちは優しくて、一緒にいて退屈はしないのだけれど。でも、すごく……疲れてしまうのだ。

「私はマルコと一緒がいいの」
「ふふ。そうか。僕もヒイラギちゃんとお店番、楽しいよ」

 マルコは、
 マコトと同じ顔で笑うのだ。

 一緒にいると、安心する。
 何事もなく、無事に二人が帰ってくることを願いながら。マルコと一緒に店番に勤しんだ。


── クリス視点 ──

 我が城では、年3回ティーパーティを開催している。毎回、マコトを招待していた。彼女は俺が生まれた日、出産に立ち会ったそうで……。俺からしたら、本当の姉のような、母のような……。親友とも、家族ともいえる人。

「クリス!お菓子リストチェックして欲しいんだけど」

 エリカが、俺の部屋に来て言った。
 彼女は城のメイドで、一応……俺の恋人。近々結婚する予定だ。

「わかった」

 リストを受け取り、しっかり目を通す。
 ティーパーティで大事なのは、紅茶とお菓子。マコトは紅茶とお菓子には目がない。できる限り、年間通して同じものは出さないようにして、目一杯楽しんでもらえるようにしている。

「ん?今回のメインはイチゴだと聞いたが……。ブルーベリーに変更したのか」
「そうなのよ。イチゴがね、不作だったの」
「そうか……」
「まさか。マコトさんって、ブルーベリー嫌いでした?」
「いや、」

 マコトではない。問題は、ハリーが招待した魔王・エリックの方だ。
 彼について調べてみると、生前はブルーベリーが嫌いだったそう。今はどうかはわからない。ただ、万が一魔王の機嫌を損ねたら……。
 間違いなく、俺の首が飛ぶ。

「どうしましょう」
「今からでも別の食材を……」

 言いかけたタイミングで、部屋の扉が叩かれた。
 ハリーだ。

「クリス様、マコト様よりお届けものです。茶会に是非にと」

 マコトからの届いた品物リストに、思わず飛び上がりそうになる。

「エリカ、ブルーベリーは手配済みか」
「いいえ。これからよ」
「キャンセルだ。今、いいものが手に入った」
「わかったわ!」

 エリカは頷いて、早足に部屋を出た。
 さすが、マコト。
 あの人のことだから、今のやり取り含め、想定内なんだろう。とりあえず俺の首が飛ぶことはなそうだから、安心だ。


ー 続く ー


明日の19時に
ゆめはるストーリーズ2026
第6話 ティータイムはお静かに
~昔話をしようか~2/3
公開します!

皆様に良きフラワーライフを。


藤代真実

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