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ゆめはるストーリーズ第5話 マコトの休日/密着!店長24時! 1/3

第5話 マコトの休日~密着!店長24時!~


― マコト視点 ―



「取材をさせてください!」
「……え?」

 急にどうしたの、と僕が言う前に、新田メイは訳を話してくれた。
 大学の自由研究で、親友が好きだった場所の取材をしたい。その親友、長谷川春子は高校卒業を待たずに交通事故で亡くなったという。
 正直、僕は断りたいと思った。

 長谷川春子――……。

 確か彼女は、親友に感謝の気持ちを贈りたいと花を所望していた。その親友というのが、彼女、新田メイ。
 経営者としては、取材は受けるべきなんだろう。
 でも、踏み切れない事情がある。
 【ゆめとはる】がある神の庭は、本来、生きた人間が来ていい場所ではない。死に近いものが、来る。長居されてしまったら、人間の世界に帰せなくなる。

 それだけじゃない。

 僕は潔癖というほどではないけれど、自分のテリトリー内に誰かが入り込むのが……たまらなく不快なのだ。わかってる、それは僕自身が我慢すればいいことなのだ。
 僕が返答に困っていると、ヒイラギが代わりに答えた。

「いいじゃない、受けましょうよ!」
「こら、ヒイラギ」
「お友だちとの思い出がある、って言ってたじゃない」
「そうだけど、」
「マコトの事情も、気持ちもわかってる。だから取材は無理のない範囲で、つらくなったら私が受けるから」
「君がそういうなら、いいよ。わかった……。取材を受けるよ」

 僕が答えると、メイは目を輝かせた。

「ありがとうございます!」
「手続きをするから、三日後においで」
「はい、お願いします」

 メイと別れ、僕は神様の元へ向かった。
 神様に、生者が長時間神の庭にいてもいい、という許可をもらうため。
 この手続きが、結構面倒臭い。

(仕方ない)

 書類に必要事項を書きながら、思わずため息が漏れた。


―― メイ視点 ――


 三日後の朝、9時。
 私の身支度が終わった頃、金木犀の優しい香りがする、温かい光に包まれた。
 一瞬だった。
 光は私を、あっという間にマコトさんのいる生花店へと運んでくれた。

「おはようございます。今日は、よろしくお願いします!」
「ああ、こちらこそよろしく」

 マコトさんは、ニコリと笑った。
 店内を見渡すと、花瓶や植木鉢が並んでいるだけで、花は一輪もない。
 ……お花屋さんなのに?
 私が首を傾げていると、ヒイラギが答えた。

「お客様が来ると、咲くのよ。不思議でしょ~」
「手品、か……なにかですか」
「魔法よ。愛の、魔法ね」
「愛の、魔法?」
「花が咲くのは、愛を求められたとき。愛でられたとき。愛が生まれるとき。最も美しく咲くの」
「知らなかったわ」
「ええ、人間は知らないのよ」

 ヒイラギは言う。
 今は亡き、親友。長谷川春子は、このお店でアマリリスを受け取った。
 私へ贈るために――……。
 彼女はとても嬉しそうだった。

 知りたかったの。
 春子が好きだと言った、この店が。春子を奪った、この店が。
 この店にさえ来なければ、春子は死ななかった。
 会いたかったの。
 真っ赤な髪の、スーツの女性。

 私の狙いは、二人には気づかれていない。

「新田メイ。君が何をしたいかは興味がないが、ヒイラギに危害を加えると言うのなら……それ相応の覚悟をしておけよ」

 耳元で、彼女は囁いた。
 ……悪魔の囁き。
 私は「はい」と答えるしかなかった。

 10時、店は開店した。
 まだ、花は咲かない。
 そして、お客も来ない。
 11時、12時になっても誰一人来なかった。
 暇すぎる。
 マコトさんとヒイラギは、この暇さに慣れているようで、各々読書やぬり絵などで時間を過ごしていた。私も、小説を一冊読んだ。

「あの、いつもこうなんですか」
「こうって?」
「お客さん、来ないのかなって」

 私の質問に、ヒイラギは何度か瞬きをしてみせた。

「そうね、三日に一人くらいかしら」
「え?経営大丈夫ですか」
「あなた、取材に来たのよね?……この生花店のこと、何も知らないの?」

 ヒイラギが、眉間に皺を寄せた。
 あまりにも謎が多すぎて、事前調査ができなかった。
 どうやって誤魔化そう……。

「仕方がないよ、ヒイラギ。このお店には、そもそも来れる人が多くないんだ。人間の世界では都市伝説だと言われている……。知っている方が不思議だよ」
「そ、そういうこと……」

 マコトさんに助けられ、事なきを得た。
 報酬は、お客様の幸せだ、と彼女は答えた。
 嘘をついているようには、見えない。

(本当に、この人が元凶なのかしら)

 親友の仇をとるつもりできたのに、目的を忘れてしまいそうになる。
 私は二人に隠れて、頬を二度ほど叩いて気合いを入れた。



……
………
…………


 結局お客さんは一人も来ないまま、17時。あと1時間で閉店してしまう。
 というところで、ドアベルが鳴った。

「いらっしゃいませ!」

 マコトさんとヒイラギは作業を辞め、笑顔でお客を迎え入れた。
 お客様の足音と同時に、ふわりと花の香りが店内に満ちた。
 店内の花瓶、鉢に、花が咲いている。

「……メイちゃん」
「え?」

 懐かしい、
 会いたかった、
 大好きな友人の声が聞こえた。
 振り向くと、春子がいた。

 なんで――……。

「マコトさんに聞いたの、メイちゃんのこと」
「新田メイ。彼女と、しっかり話をしてくるといい」

 彼女に背中を押され、店奥にある椅子に座った。
 テーブルには、淹れたばかりの紅茶と茶菓子が2人分用意されていた。


ー 続く ー


明日の19時に
ゆめはるストーリーズ2026
第5話 マコトの休日
~それって読書ですか~2/3
公開します!

皆様に良きフラワーライフを。



藤代真実


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