四季のある一日
その日、目覚めた時は朝焼けだった。
日照時間の長い高緯度の夏は夕方の時間が随分と長く、短い睡眠の後にはもう朝焼けが始まっている。
ありきたりなシリアルとフルーツの朝食の後、車で現場に向かうと雨が降り出した。
プレハブのミーティングルームで打ち合わせが終わる頃には早い組のティーアップの映像が届き始める。
いつものようにバケツとサンドウィッチを抱えてクレーンカメラの男性が横を通り過ぎて行く。
雲がどんよりと垂れ込め、雨は次第にみぞれ混じりになって来た。
OBVANのスタッフに一声かけて、最後部のドアを開けて自分の定位置に着く。
VTRやディスクレコーダーの電源を立ち上げ、ご機嫌を伺う。昨日は電圧が低くて安定しなかった。今日は午後にはバックアップの発動発電機が着くはずだ。
雨と風が強くなりはじめた。
Linksと呼ばれるコース特有の風に煽られ、フェアウエイを外したプレイヤーは生い茂るヒースの中でもがいている。
沖縄出身の無名なプレイヤーが意外にもスコアをのばしている。ホームグランドが海風が強いので日頃から低い弾道で打つのに慣れているらしい。
昼前になってみぞれ混じりの雨が嘘のように晴れ上がった。
「午前と午後じゃスコアが10も違うかもな」この地は初めてというベテラン記者も話には聞いていたがこれは、といった感じでつぶやいた。
晴れ渡った青空に向かって高い軌道を描いてボールが飛んで行く。
肥ったアメリカ人がやすやすとワンオンすると、このコースの難しさを自慢している地元のギャラリーからブーイングが出る。
結局、優勝は肥ったアメリカ人が掻っ攫って行った。
撤収作業を終えて帰り道、コース内に建てられた由緒あるホテルには歴代優勝者が招待されて宿泊している。その入り口の階段の前で、あの有名なプレイヤーが葉巻を燻らしていた。我々が技術スタッフなのは彼にもわかるのだろう「イイ絵は撮れたかい?」気軽に声を掛けてくれた。
嬉しくて知ってる限りの英語を駆使して会話して、一緒に写真をお願いしたら、気軽に応じてくれた。
明日にはホテルをロンドンに移してギャンブル好きのアナウンサーのお供でルーレットでもやってみようか・・・
そして13時間のフライトを終えたら、蒸し風呂の様な東京の夏が迎える事だろう。
いつもの夏のように。

