毎週ショートショート「ソーセージ座流星群」
私は、ソーセージメーカーに勤めて30年になる。
全てをソーセージの開発に注いできたと言っても過言ではない。
けれど、私の仕事はなかなか正確に理解されない。
スーパーでも、居酒屋でもバーベキューでも、
人はあらゆるものを「ウインナー」と一括りにする。
ウインナーなんて、ソーセージという広大な世界のごく一部に過ぎないというのに。
娘もそうだった。
「タコさんウインナーだ!」と喜んでいたが、
正しくは「”ソーセージ“の中の”ウインナーソーセージ”で作った、タコさんウインナー」だ。
私は丁寧に説明したが、
妻は「そんなこと、どうでもいいじゃない」と冷たく言った。
今夜は10年ぶりの流星群の日だ。
前回の流星群は妻と娘と3人で見た。
「ソーセージの正しい世界が、せめて家族には伝わりますように」
私は流星群にそっと祈った。
二人が家を出ていったのは、その翌年のことだった。
今年の流星群は「ソーセージ座流星群」という俗称で報じられている。
黄みがかった光の帯が、「ソーセージに見える」かららしい。
ずいぶん雑なネーミングだと思った。
一人きりで流星群を眺めるために、
ベランダに椅子を出して缶ビールを開けた。
つまみは、特定JASの認定を受けたこだわりのウインナーソーセージだ。
最初の1本を口に入れて噛むと、狙い通りのパキッとした音が鳴った。
その瞬間、空に一筋の光が走った。
やがて光が増えて、やけに太い光の帯となった。
その姿はウインナーソーセージではなかった。
どうみたって、フランクフルトだった。
今週も以下の企画に参加させていただきました。
