【エッセイ】お風呂場からの大熱唱に耳をすませば
最近、子どもたちが二人でお風呂に入るようになった。
もちろん、完全に手が離れたわけではない。
「ママ、髪の毛洗ってー」
「ママ、乾かしてー」
なんて声は、まだまだ日常茶飯事だし、途中から「やっぱり一緒に入って」と呼ばれることも多々ある。
それでも、二人であーだこーだ言いながらお風呂に入っている声を聞きながら、私は脱衣所で洗濯物を畳んだりしている。
この時間が、密かに好きだ。
お風呂場からは、今日あったことなのか、ただの思いつきなのかよくわからない会話が聞こえてくる。
「ちょっと入ってこないでー」
「なんでよー」
なんて、小競り合いが始まることもある。
かと思えば、ふいに二人で歌い出すこともある。
最近よく歌っているのは、嵐の「カイト」。
たぶん、最近私が聴きまくっているからだと思う。(私自身、米津氏が大好きなので、この曲はかなりドンピシャなのだ。)
娘はところどころ音を外しながらも、伸びやかに歌っている。
息子はというと、娘の歌に合わせるように、少し遅れながら歌っている。
歌詞もメロディも、まだ完璧ではない。
でも、その不完全さがいい。
お風呂場に響く二人の声を聞きながら、洗濯物を畳む。
ただそれだけの時間なのに、なんだか胸がいっぱいになる。
姉弟で一緒にお風呂に入るなんて、あと数年したらなくなってしまうのかもしれない。
娘は娘で、自分の時間や距離感を大事にするようになるだろうし、息子もいつか「一人で入る」と言い出す日がくるのだと思う。
それは成長で、喜ばしいことのはずなのに。
想像すると、少しだけ寂しい。
子どもたちの成長は、いつもこう。
できることが増えるたびに嬉しくて。
手が離れるたびに少し寂しい。
お風呂場から聞こえてくる大熱唱も、いつかは聞こえなくなるのだろう。
だからこそ、今のこの歌声を、できるだけ覚えておきたい。
音を外しながら伸びやかに歌う娘の声も。
それに合わせて、一生懸命ついていく息子の声も。
途中でケンカしながら、また何事もなかったように歌い出す二人の声も。
録音して残すほどではない、日常の中の小さな一場面。
でも、私にとっては、きっとずっと忘れたくない時間だ。
今日もお風呂場から、二人の歌声が聞こえてくる。
私は洗濯物を畳みながら、少し手を止めて耳を澄ませて、今しかない大熱唱を、こっそり聴いているのだ。
▼この記事を書いた人
飲食業からフリーランスに転身した、食や暮らしのメディアに携わるひとり広報×ライター/人と人、人と想い、人とモノをつなぎたい人/イベント企画・サポートすることが好き。
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