【掌編】ビダルサスーンの驚異
ブライアン・セッツァーはいつものリーゼントを整えるために、ビダルサスーンの美容院に足を運んだ。美容師たちの腕が良いと評判のこの店なら、彼のトレードマークであるロカビリー風のリーゼントも完璧に仕上げてくれるだろうと信じていた。
サロンに入ると、受付の女性が笑顔で迎えてくれた。「いらっしゃいませ、ブライアン・セッツァー様ですね。お席はこちらです。」
ブライアンが案内された席の隣には、アラム人の男性が座っていた。彼の名前はハッサン。ブライアンの家のご近所さんで、散歩中に見かけると話しかけたりしていた。ハッサンはお洒落なマッシュルームヘアをお願いしているようだった。
「おっ、君も新しいヘアスタイルに挑戦かい?」ブライアンは隣のハッサンに軽く声をかけた。
「そうさ、マッシュルームヘアが今のトレンドだからね!」ハッサンはにっこりと笑った。「君のリーゼントも素敵だけど、たまには変えてみたらどうだい?」
「リーゼントを変える?冗談だろ、俺のトレードマークなんだから。」ブライアンは笑いながら答えた。
ところが、その会話を聞いていた美容師が間違ってブライアンの頭にマッシュルームヘアの仕上がりを施し始めた。ブライアンは鏡を見ると、驚愕の表情を浮かべた。
「 おいおい、ちょっと待ってくれ!これじゃあ、まるでクリスマスツリーだ!こんな髪型してステージに立ったら、ファンを失っちゃうじゃないか!」と嘆いた。
ブライアンはハッサンに同意を求めようとしたが、ハッサンはその瞬間、祈りの時間が来たことに気づき、突然立ち上がり、周囲を驚かせるような独特のポーズを取り始めた。彼は両手を胸の前に合わせ、まるで空気中に見えないものに触れようとするかのようにゆっくりと動かしながら祈りを捧げた。ブライアンはめちゃくちゃ戸惑ったが、ハッサンの祈りに敬意を払い、静かに待った。
祈りを終えたハッサンは再び座り直し、笑いながら「大丈夫さ。君のファンはそんなことで離れないよ。」とサラサラになった黒髪に指を通しながら、のんびり答えた。
美容師も「左様で御座いますとも!当店のマッシュルームヘアは他店のソレとは違い…、どなたでも愛されキャラになれますよ。」と付け加えた。
ブライアンは思わずキッと美容師を睨みながら、「適当なこと言うなよ。ホント他人事なんだから!」とぼやいた。
美容師は慌てて、「申し訳ありません!すぐに元のリーゼントに戻します!」と謝罪しながら、必死でブライアンの髪を整え直した。美容師はお詫びとして、ブライアンのリーゼントの高さや嵩を増し増しで仕上げた。ブライアンの髪型は一層印象的なものになった。
結局、ブライアンは見事に復元されたリーゼントでサロンを後にしたが、ハッサンの祈りの姿は彼の心に残る思い出となった。

ブライアンは打ち合わせと称した飲み会のために、いつものメンバー、スリム・ジムとリー・ロッカーの待つIZAKAYAに向かった。IZAKAYAに入ると、リーが焼き鳥を食べているのが見えた。スリム・ジムは「SAMURAI」というカクテルを楽しんでいた。
「やあ、ブライアン!」リーはブライアンに手を振って出迎えた。
「なんか、背が高くなった?」スリム・ジムがブライアンを見て言った。
ブライアンはモヤッとした気分で「やあ。」と答えた。「あと、5cmいや、サンセンチ…背が高かったら…。」と独り言ち、スリム・ジムをチョロっと見上げた。彼にも少しばかり他人を羨む気持ちがあったらしい。
ブライアンはサロンから貰った『サスーンサロンコスメ!裏技!厚化粧でも薄化粧に見せるファンデーション&下地スキンケア❤️コレで貴女も愛されキャラに!』という、ご案内のチラシをスリム・ジムに渡した。
「なにこれ?」と尋ねるスリム・ジムに対し、ブライアンは「朗報だ。君のカノジョに渡してやれ。」と言った。
スリム・ジムとリーは、ブライアンの見事な3D立体型リーゼントをまじまじと見つめていた。
ブライアンは、そんな二人を後目に何事も無かったかのようにハイボールと枝豆をオーダーしてから、自分の新しい友人、ハッサンを思い出していた。

※(この話はもちろん、フィクションです。実在の人物とはまったく関係ありません。ここまでお付き合いくださいまして、誠にありがとうございました。画像はPinterestから拝借しております。)
上記の資料一応、ご参考までに。
