教室小噺#5 車窓を叩くアラブ人
近年、移民問題、就労外国人問題が国政選挙の争点になる時代になった。それとは関係があるかは分からないが、こういう事件があった。
2024年秋の出来事だ。僕が車中泊で旅していた時のことだ。あるサービスエリアの車の中で、さあ寝ようか、という時に、僕の軽自動車の運転席側の窓ガラスが何者かによって、コンコンコンコンと叩かれた。
「誰だ?何にも悪いことしてないよ」と思いながら窓に目をやると、アラブ人風の男が、何だか分からない身ぶり手ぶりをしている。「ヤバいことに巻き込まれたな」とテンションが下がった。
窓を少し下げて話を聞いた。すると、タイヤがパンクしたので、ジャッキを貸してほしい、とのことだった。しかし待てよ。ここでドアを開けて、刃物を突きつけられたらどうしよう。なんてことを考えて、彼の目を見た。
その真意、分からなかった。恐怖だ。しかし、僕は覚悟を決めてドアを開けた。
「かかってこい!」
の心境で、腰を低くした。僕よりも少し低い。
彼は安心した様子で、自分の車の方に僕を誘導した。なるほど、彼の車はパンクしている。しかし、ジャッキがないのだ。僕は自分の車に戻って、ジャッキを彼に渡した。そして彼はすぐにタイヤを交換した。
「終わった、何事もなく。生きている」
と思っていたら、彼は、カモンカモンと自販機コーナーへ僕をいざなった。
「お礼におごってくれるのか」
と思いながら、ドデカミンを指差した。彼から冷たいドデカミンをもらい、お互いが笑顔になった。
別れ際に、彼から名刺をもらった。やはりアラブ系の人で、中古車の販売を仕事にしているようだ。
彼は多分、多くの日本人に断られ続けたのだと思う。とても可哀想な男だ。しかし、警戒するのも正しい。警戒していても、優しくしてしまう自分のお人好しを反省した。
あの時、刃物を突きつけられていたら、僕は、身ぐるみはがされていたかもしれない。
非武装とか非核とか、話し合いで平和を守れると思っている左翼の人を思い出した。この時の僕がそうだ。今回、僕が体験したことは、非武装で平和は守れるという考え方がとても怖いということなのだ。僕の個人的な考えだけどね。
