生き物の不思議「操るもの操られるもの」
僕がそれを初めて見たのは2018年に参加した都城でのさくらマラソン大会の朝の事だった。朝ごはんの後、友人の家の周りを散歩していた僕は、足元の草むらで奇妙なものを発見した。
生えている草の茎の先端にイナゴがしがみついている。そしてそいつは不思議なことに微動だにしないのだ。
バッタ類というのは感覚器官が非常発達しており、振動などに敏感な生き物で僕らが近づくと数メートル先にいても直ぐに反応して逃げてしまうものなのに...「寒いから凍えているのかな?」と不思議に思い、顔を近づけてみて気づいた...
「死んでる!」そう、彼はすでにこの世の人では無かったのである。驚いて辺りを見回すと、近くの草に一体、ちょっと離れた草に二体...合計四体の死体が見つかった。

「これは凄いものを発見した!」と思った僕は、大急ぎで友人宅に戻り、マラソンの準備をしている仲間たちに向かってコーフン気味に報告したのだがみんな「へぇ...」「それがどうしたの?」と言うばかり。
虫ヲタとそうでない一般人との、絶望的な温度差というのをまざまざと実感させられただけであった。
そんなこんなで大会を終え、自宅に戻った僕は、早速その現象をググってみた「バッタ 草 死体」で検索すると直ぐに出てきた。
「エントモファガグリリ」...何とも奇妙な名前である(以下、グリリと記載する)。バッタにつく菌類の一種で、別名「バッタカビ」とも言うらしい。
そしてネットに上がっていたグリリの情報を読み進めていった僕はその恐ろしい生態に戦慄した...
なんと!グリリに取りつかれたバッタは自分の意思とは関係なく、その近くにある草や棒などに這い上り、そのまま死んでしまうらしい。
これだけでも十分怖いのに、その理由がまた怖い。。。グリリはバッタを操って高いところに上らせ、そこで死んだバッタの身体を使って菌を繁殖させ、その胞子を周囲にばらまいて次の犠牲者を感染させるというのだ。
恐ろしすぎる...自分に置き換えてみたらわかる。高所恐怖症なのに(僕ですが)操られて高い所に上らされ、そこで朽ち果ててしまうのだよ。それだけならまだしも大勢の市民を巻き添えにしてしまうのだよ。
そこいらの電柱に人間がしがみついて朽ち果ててる姿を想像してみて欲しい...ホラーじゃん。こんなイヤな死に方ないよね。
この衝撃が大きすぎてグリリの名前はずっと記憶に刻み込まれたままだ。そしてこの後、寄生したり獲物をコントロールしたりする生き物たちに興味を持って調べていくことになるのだった。
