健康経営の数値目標はどうやって設定するか
数字は「測るため」ではなく、「動くため」にある
1. 「目標は設定したんですが、何を目指せばいいのかよくわからなくて」
健康経営優良法人の申請に向けて動き始めた企業の担当者から、よくいただく言葉です。
健康経営を進めるうえで「数値目標の設定」は欠かせません。しかし「何を測ればいいのか」「どんな数字を目標にすればいいのか」がわからず、とりあえず「健診受診率100%」や「ストレスチェック実施率100%」を掲げて終わっている企業が多い。
数値目標は、設定すること自体が目的ではありません。「現状を把握し、課題を明確にし、改善のための行動を促す」ための道具です。目標数値が経営や現場と切り離された「書類上の数字」になってしまうと、どんなに目標達成しても職場は変わりません。
経済産業省が推進する健康経営では、「経営的視点で従業員の健康投資を行い、生産性向上や組織活性化につなげる」ことが目的とされています。つまり、数値目標は「人の健康が会社の成果につながっているか」を可視化するためのものです。
「何を測るか」より「何のために測るか」を先に考える。それが、意味のある数値目標の出発点です。
2. 健康経営の数値目標には、どんな種類があるのでしょうか?
健康経営の数値目標は、大きく3つのカテゴリに分けて考えると整理しやすくなります。
【①健康状態に関する指標】
健康診断受診率・有所見率・特定保健指導実施率
ストレスチェック実施率・高ストレス者割合・集団分析による職場リスク評価
BMI・血圧・血糖値などの生活習慣病リスク保有者割合
睡眠・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣に関する指標
【②働き方・職場環境に関する指標】
月間平均残業時間・有給取得率・休職者数・離職率
プレゼンティーイズム(出勤しているが体調不良による生産性低下)の測定値
アブセンティーイズム(病欠日数)
心理的安全性・エンゲージメントスコア(従業員調査による)
【③経営成果に関する指標】
生産性指標(売上・利益・1人当たり生産性など)
採用コスト・離職コスト・医療費・健康保険料の推移
健康経営優良法人の認定取得・更新状況
すべてを一度に測る必要はありません。まず自社の課題に直結する指標を2〜3つ選び、現状値を把握することから始めましょう。
3. 「良い数値目標」と「意味のない数値目標」は、何が違うのでしょうか?
【意味のある数値目標の条件】
現状値(ベースライン)が把握できている
目標値が「高すぎず低すぎず」現実的で、達成したら意味がある水準
目標に向けた「アクションプラン」がセットになっている
定期的に進捗を確認し、結果を現場にフィードバックする仕組みがある
複数の指標を組み合わせて、多角的に健康状態を把握できる
【意味のない数値目標になりがちなパターン】
「とりあえず受診率100%」だけを目標にしている(受診後の対応がない)
現状値を把握せずに目標値だけ設定している
目標達成したかどうかを誰も確認していない
数値が改善しても職場環境は変わっていない
4. 産業保健師は、数値目標の設定・活用をどう支援できるのでしょうか?
【現状分析と課題の優先順位づけ】
ストレスチェック結果・健診データ・離職率・残業時間などを総合的に分析し、「今、最も改善すべき課題」を特定します。課題が明確になれば、自然と目標設定の方向性が見えてきます。
【現実的な目標値の提案】
「業界水準」「他社事例」「自社の過去データ」を参照しながら、現実的かつ意味のある目標値を提案します。「何%を目指せばいいか」という問いに、根拠をもって答えます。
【PDCAの伴走支援】
目標設定後も、定期的な進捗確認・フィードバック・改善提案を行います。「設定して終わり」ではなく、「動き続ける仕組み」として数値目標を機能させます。
【経営への報告資料の作成支援】
健康経営の取り組み状況と数値の変化を、経営陣にわかりやすく報告するための資料作成をサポートします。「健康投資が成果につながっている」ことを、数字で見せる仕組みを整えます。
5. 数値目標が機能し始めると、会社にどんな変化が生まれるのでしょうか?
課題の「見える化」 → 「なんとなく不調な職場」から「具体的に何が問題か」がわかる状態へ
施策の優先順位が明確に → 限られたリソースを、最も効果の高い取り組みに集中できる
経営との対話が生まれる → 数字を使って「健康投資の効果」を説明できるようになる
現場のモチベーション向上 → 「数字が改善している」という実感が、取り組みへの参加意欲を高める
健康経営の持続的な改善 → PDCAが回り始めると、毎年着実に職場の健康度が上がっていく
申請・認定の精度向上 → 適切な指標管理が、健康経営優良法人の認定・更新に直結する
数字は「測るため」ではなく、「動くため」にある。この発想が根付いたとき、健康経営は本当に機能し始めます。
6. まず一歩、話を聞いてみませんか?
「何を目標にすればいいかわからない」「数値の設定から一緒に考えてほしい」そんな方もご相談ください。
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