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私は、レンタル人間だった。

派遣社員として働くということ。
それは、まるで「レンタル会議室」になることによく似ている、と、今になって思う。

時間単位で、特定の目的のために、その場所を借りる。
中は綺麗で、設備も整っている。決められた時間内は、自由に使っていい。
でも、どれだけその場所を使っても、そこは、決して自分の「部屋」にはならない。

時間になれば、きれいに片付けて、鍵を返す。
そして、次の日には、また別の誰かが、その場所を使うかもしれない。

もし、今あなたが、派遣社員として働きながら、言葉にできない「居場所のなさ」を感じているなら。
今日は、そんな私がたどり着った、派遣という働き方の「正体」について、少しだけ話をしたい。

私が派遣社員だった頃、一番つらかったのは、給料でも、仕事内容でもなかった。
それは、私が、私でいられなくなる感覚だった。

職場では、私は「すみさん」ではなく、「派遣さん」と呼ばれることの方が多かった。
もちろん、そこに悪気がないことはわかっている。でも、そう呼ばれるたびに、私の名前も、個性も、これまでの人生も、すべてが透明になっていくような気がした。

休憩室で、社員さんたちが楽しそうに話している輪の中に、どうしても入れなかった、あの見えない壁。
契約更新の時期が近づくたびに、心臓が少しだけ、きゅっとなる、あの独特の不安。

  • 「どうして、こんなに寂しいんだろう」

  • 「どうして、私はここにいるんだろう」

その答えは、とてもシンプルなところにあったのだ。
私の籍は、今働いているこの会社には、なかったからだ。

私の雇用主は、あくまで派遣会社。
私が今いるこの場所は、「勤務先」であって、「所属先」ではない。
私は、この会社の「一員」ではなく、派遣会社から貸し出されている「人材」なのだ。

この事実に気づいた時、私は、すとんと腑に落ちた。
私が感じていた寂しさや居場所のなさは、私の性格や能力のせいなんかじゃなかった。
それは、この「レンタル」という働き方が持つ、構造的な、どうしようもない宿命だったのだ。

だから、もしあなたが今、私と同じように、孤独や不安を感じているなら。
どうか、自分を責めないでほしい。
その気持ちは、あなたが弱いからでも、馴染む努力が足りないからでもない。
ごく自然で、当たり前の感情なのだから。

では、私たちは、どうすればいいんだろう。
私が思うに、大切なのは、「今は、レンタルなんだ」と、割り切る強さを持つことだ。

ここは、終の棲家じゃない。
ここは、私が本当に「所属したい」と思える場所を見つけるための、「試着室」なのだと。

だから、この場所で、できる限りのことを学ぼう。
スキルを盗み、経験を積み、そして何より、「自分は、どんな場所で働きたいのか」という、自分の心の声を、誰よりも真剣に聞く。

レンタル期間は、いつか終わる。
でも、その期間に何を得るかは、あなた次第だ。

私は、レンタル人間であることをやめた。
今は、ちゃんと自分の籍がある場所で、「すみさん」と呼ばれて働いている。
たったそれだけのことが、こんなにも心を満たしてくれるなんて、あの頃の私は、想像もしていなかった。

あなたが今いるその場所は、あなたの物語の、ほんの数ページにすぎない。
大丈夫。
あなたの本当の「居場所」は、この先に、ちゃんと待っているのだから。

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