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【動画でわかる?】ヴィンテージワインを保存する前の「澱(おり)」のお作法


多くのホテルやレストランでは、年代物の古いヴィンテージワインを仕入れる機会が頻繁にあります。
しかし、届いたワインをそのままセラーに直行させてはいけないのです。

実は仕入れた段階で、まずは澱を「整えて」から店で保管する必要があるのです。

これには、レストランサービスにおける2つの重要な理由があります。

  • 1. 常に正しいコンディションで提供するため もし瓶のショルダー(肩)辺りに澱が溜まったまま固着してしまうと、いざご注文をいただいて抜栓した際、1杯目から濁ったワインが出てしまうリスクがあります。

  • 2.ソムリエの「プロトコール」であるため
    誰がそのワインをサービスすることになっても、
    「澱はラベルの反対側の底(バックラベル側)に集められている」
    という前提(ルール)を共有しておくことが、ミスのないスマートなサービスに繋がります。
    このルールは世界中のソムリエの共通認識であると言っても過言では無いでしょう。

ヴィンテージワインは、仕入れてからお客様に販売されるまでに数年間の月日が流れることも珍しくありません。
だからこそ、最初の「仕込み」が肝心なのです。

届いたワインのチェックと「澱の見える化」

まずは仕入れたワインの状態をチェックします。液漏れ(液だれ)の有無やラベルの破損がないかを確認するのは当然ですが、同時に「澱がどこにあるか」も見極めます。

側面に澱が張り付いたボトル:イメージ

今回は、瓶肌に澱が残ったボルドーの赤ワインの空き瓶がありましたので、ここに水を入れて「澱がどのように動くのか」を可視化(見える化)してみましょう。

ちょうどいい空瓶を見つけました

乱暴に見える「スクイズ」のテクニック

※社内用に撮った動画なので、ハンカチは見なかったことにしてください。

輸送の途中で、澱が「瓶の底、かつラベルの反対側」以外の場所に動いていたり、こびり付いたりしている場合、ボトルをスクイズ(回転させて遠心力をかける手法)して、一度澱を意図的に落とす処置を行います。

一見すると乱暴な扱い(ワインをシェイクしているよう)に見えるかもしれませんが、これは輸送時にトラックや飛行機の中でかかる「物流の加減速による負荷」と同程度の力をコントロールされた形で与えていると考えて見て下さい。

ここで最も重要なポイントは、カクテルのシェイカーのような「縦の振り子運動」ではなく、「回転運動(遠心力)」を利用するという点です。

なぜ「回転」なのか?

ビールやシャンパンを縦に激しく振れば、開栓時に中身が激しく噴き出します。
これは液体が瓶の中で激しくコントラクトし、ガスが分離してしまうからです。
一方、ビールやシャンパンを急激に冷やしたいとき、氷に当てて「同じ方向にぐるぐると回す」手法を取ることがあります(高速回転させて急冷する卓上便利グッズを見たことがある方も多いのではないでしょうか)。

こんな商品もあります

回転運動であれば、液体同士の激しい衝突(ストレス)を最小限に抑えつつ、瓶肌にこびりついた澱だけを綺麗に剥ぎ取ることができるのです。

瓶底の「プン」が果たす役割と、静置のプロセス

剥がれてボトル内に舞った澱が、やがて瓶の底に「リング状」に降り積もっていくように、ボトルの底には中央が内側に盛り上がった「くぼみ」があります。
このくぼみの名称を「プン(Punt)」、または「キック(Kick)」と呼びます。

このプンの周りに澱を落とし込むため、まずはボトルを「立てた状態(垂直)」で静置します。

  • 期間の目安: 早くて4〜5日、できれば2週間以上。もちろん目視して確認する必要があります。

ワインの中に舞っている微細な澱を、時間をかけて完全に底へ落とし切る。これこそが、ソムリエ界隈が言う「澱を落とす」という基本技術です。

静置した後、この部分にリング状に澱が集まっているイメージです

仕上げ:狙った「一箇所」へ澱を集めて眠らせる

リング状に底へ落ちた澱を、最終段階としてさらに「一箇所」へ集中させます。

今度は、「ボトルの底の、ラベルの裏側(バックラベル側)」の一点に澱が集まるように、計算してセラーのラックへ寝かせます。

最終的に赤印の位置に澱が集まるように


これで仕込みは完了です。あとは販売されるその日(数ヶ月後、あるいは数年後)を待って、ワインにはセラーの暗闇の中で静かに眠ってもらいましょう。


実践編:澱のあるワイン提供時のお作法


さて、仕込まれてセラーの中で眠っていたワインですが、いざお客様に提供される日がやってきました。

事前のお作法が正しく守られていれば、暗いセラーの中でボトルをパニエ(ワインバスケット)に寝かせる時も、澱がどこにあるかが完全に予測できます。

赤丸のところに澱が固まっていると予測

セラーからいざ出した後の取り扱いで注意するところは、この赤丸のところを意識して運動の支点と考えることで、折角固定した澱が極力動かないように気をつけることです。

◆いい動かし方

◆良くない例(澱のある場所が動いています)

実際に提供する際、ボトルの中で澱がどのように見えているのか、その様子も動画に収めましたのでぜひご覧ください。


正しく整えられたヴィンテージワインは、最後の1滴(あるいは澱の手前の最高の一杯)まで、お客様に感動をお届けすることができます。
人間もワインも「体幹」が大事なのかもしれません。
仕入れ直後のひと手間の整体を、決して惜しまないようにしたいですね。

メートル・ド・テル
初田 智

























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