あのとき願った赤ちゃんは、10歳になった。
息子が、3泊4日のキャンプへ行った。
昨日から、私は一人だ。
ふと思った。
今なら、一人でゆっくりお参りができる。
そうして、十一年ぶりに
信貴山へ向かうことにした。
最後に訪れたのは、2015年4月8日。
お釈迦さまの誕生日を祝う、
花まつりの日だった。
宿坊に着いて、案内された部屋の扉を開けると、
目の前いっぱいに満開の桜が広がっていた。
まるで、
神様からご褒美をもらったような部屋だった。
当時、私は塾を経営していた。
それまで信貴山へ来ると、
2月や7月の大祭に参加して、
経営者として商売繁盛を願うのが
いつものお参りだった。
でも、その日だけは違った。
仕事のことではなく、子どものことを願った。
赤ちゃんが欲しかった。
まだ顔も知らない。 声も知らない。
ただ、
「会いたい。」
そう願った。
花まつりで甘茶をいただき、手を合わせた。
そして、その月に妊娠した。
あれから十一年。
あのとき願った赤ちゃんは、10歳になった。
今、その子は私のもとを離れて、
三泊四日のキャンプへ出かけている。
なんだか不思議だ。
十一年前は、まだいない息子に会いたくて、
ここへ来た。
そして今は、あのとき息子に
会わせてもらえたことへのお礼を伝えるために、
またここへ向かっている。
この十一年、嬉しいことばかりではなかった。
どうしたらこの子を守れるんだろう。
どうしたら安心して過ごせるんだろう。
そんなことを、何度も考えてきた。
それでも、あの日願った子に会えたことを思えば、
ただ、ただ、感謝しかない。
だから今日は、 十一年越しのお礼を伝えに行く。
あの日、 「会いたい。」 と願った赤ちゃんは、
十歳になった。
それだけで、 十分だった。
そのあとで、 もう一つだけ手を合わせようと思う。
「この子が、この子らしく生きていけますように。」
𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸
📚 次の記事
11年前に願った場所へ、今度はひとりで向かいました。
何も計画していなかったのに、不思議なくらいすべてがつながっていった一日の話です。
⏬️
📚シリーズ第一話
息子がキャンプへ出かけて、久しぶりに一人になった時間。 信貴山へ向かう前、私はこんな場所にも逃げ込んでいました。
⏬️
いいなと思ったら応援しよう!
記事を読んで応援したいと思っていただけたら、とても励みになります。いただいたチップは執筆活動に大切に使わせていただきます。