見出し画像

新聞社から新聞社へ…居場所を変えて気がついた「記者という仕事の本当のおもしろさ」

はじめまして。毎日新聞社人事部・採用チームのリーダー、市川と申します。

2026年の年明けから、2027年入社の定期採用選考が本格的にスタートします。新聞社に関心を持ってくださるみなさんとお会いできるのが楽しみで、いまからワクワクしています。

さて、みなさんからお話を聞く前に、まずは自己開示をしておきます…。

採用担当になったのは2025年1月。その前はずっと記者の仕事をしていました。記者としての第一歩は、実は別の新聞社で踏み出しました。

採用担当をしていると、「なぜ転職したんですか?」と、学生のみなさんによく聞かれます。ですので、ここに至るまでの経緯をお伝えすることで、自己紹介に変えさせていただこうと思います。

物語は2000年にさかのぼります。27卒予定の学生のみなさんが生まれる前、四半世紀も昔の話ですが……。ほんの少し、お付き合いください。


振り出しは関西のマンモス支局 

某新聞社に入社した私が最初に配属されたのは、関西地方のとある支局でした。

その支局は大所帯で、1年目から10年目ぐらいまで、総勢10人以上の記者がいました。周囲は鋭い目をした優秀な先輩ばかり。しょっちゅう叱られていましたが、記者としての立ち振る舞いから夜回りの仕方、取材メモの作り方まで、丁寧に教えてもらいました。

駆け出し時代に「心の支え」になったルポルタージュ(時代を感じさせますね…)
「いつかこんな力強いルポを書けるようになりたい」と思っていました

支局には、3人のデスクがいました。特に「筆頭デスク」と呼ばれるデスクは、指導が的確で、人格者でもあり、記者から厚い信頼を得ていました。駆け出しの私にとっても、心から尊敬できる大好きな上司でした。

入社して間もない、とある日曜日のことです。

地元に某外資系レコード・CDショップがオープンしました。音楽はデジタル配信で聞くのが当たり前の若いみなさんは、あまりピンとこないかもしれませんが、CDは1998年が生産のピークで、この頃はまだCDショップにも新たに出店する勢いがあったのです。

この日、休日出勤をしていた私は、たまたま当番に入っていた筆頭デスクに、開店日の様子を取材して原稿を出すよう指示されました。

注:新聞記者は、ローテーションで休日出勤をします。世の中は1年365日動いているので、そこはどうしても仕方ないことです。でも今はちゃんと、平日に代休が取れるので安心してくださいね。

店長に話を聞いてみると、「クラシック音楽のコーナーが充実しているのが売り」だといいます。そこで、客のコメントを取るべく、クラシックコーナーの一角に陣取りました。

何人もの客に声をかけて話を聞いたものの、原稿にするには、どうも物足りない。しばらく粘っていると、何だかとても楽しそうにCDの棚を眺めている白髪の紳士が、目に飛び込んできました。

その姿を一目見て、私は確信しました。絶対にいい話が聞ける!と。

声をかけると、男性はちょっと驚きながらも、語り始めます。

「私は昔からベートーベンが大好きでね。この店はクラシックコーナーが充実していると聞いて、この日を楽しみにやってきたんですよ。 (めちゃめちゃ長いので途中略) どれどれ、あの若い店員にどれだけクラシックの知識があるのか、難しい質問をして試してやろう(笑)」

会社経営をしているというその男性の、ウキウキ弾んだ様子に、私まで楽しくなりました。支局に戻り、男性の表情や声を盛り込んだ原稿を書きました。

デスクから求められていたのは、「市内にレコード店がオープンした」という30行程度(当時は1行13文字)の原稿。でも私の原稿は男性の話がメインで、60~70行にはなっていたと思います。

うーん、デスクはどう反応するかな…。ちょっぴり不安になりながら「送稿」ボタンを押しました。

注:新聞社では、記者が書いた原稿をデスクがチェックし、やりとりしながら仕上げていきます。デスクはいわば、自分以外の最初の読者。この第一関門を“突破”できるかが、とても重要になります。

2025年4月の新人記者研修の様子
いまは若手社員の成長を見守ることに生きがいを感じています

胸にじーんと染みたデスクの一言

デスクがパソコン上で私の原稿を開き、読み始めます。緊張しながら顔色をうかがっていると、デスクの口元がどんどん緩んでいきます。そして…。

「市川…。おもろいな」

どちらかというと寡黙なそのデスクの一言が、胸にじーんと染みました。20年以上前のことなのに、デスクのニヤニヤ顔も、嬉しそうな声色も、すべてはっきり覚えています。

記事が掲載されたのは地方版でしたが、破格の大きな扱いをしてもらった記憶があります(当時、新聞はまだ「紙」で読むもので、ニュースサイトはありませんでした)。

記者になってよかったと、心底思いました。

CDショップがオープンしたという些細な話でも、面白がって取材すれば、「おもろい」原稿が書けるんだ、という小さな「成功体験」です。振り返ってみれば、あれが記者としての“原点”だったのだと思います。

1年目は事件や事故が少なかったこともあって、以後、このデスクに「おもろいな」と言ってもらうために、ひたすら街を歩き、ネタを探していた気がします。

駆け出し記者の頃に、そんなにいい上司に出会えたのに、なんで転職したの?と思いますよね。

物語は続きます。

のびのびとして見えた毎日新聞の記者

入社3年目で首都圏のとある支局に異動になりました。主に市町村行政や県行政を取材しました。

実はこの頃から、ぼんやりとですが「転職」の文字が頭をよぎるようになります。

仕事はすごく楽しかったし、やりがいもありました。周囲には尊敬できる先輩もたくさんいました。ただ、みんなが「おもろい」を封印している気がしてしまったのです。

おそらく、たまたまそう感じるような場面に出くわしてしまっただけなのだと思います。私の勘違いかもしれない。いや、多分勘違いなんだと思います。でも、なぜかそんな気がしてしまったのです。

「おもろいな」と言ってもらえる場所は、どこにあるのだろう…。

真っ先に頭に浮かんだのが、毎日新聞社でした。

記者の仕事をしていると、自然と現場でよく会う同業者と親しくなります。のびのびと仕事をしている毎日新聞の記者、「おもろい」を追求している毎日新聞の記者が周りにたくさんいました。

理由はもう一つありました。

毎日新聞社に移った年は、路上生活者に対する行政の支援施策が「援護」から「自立支援」へと切り替わったころ。民間の夜間パトロールに同行し、出会った路上生活者たちのもとに通い、全10回の連載を書きました。「こんな企画を通してくれるとは、なんて自由な会社なんだ」と思いました

もともと、私が新聞記者になったのは、「世の中の、日の当たらないところで生きている市井の人たちを取材したい」と思ったから。日々毎日新聞の紙面を見ていて、それにもっとも近い仕事ができそうな気がしたのです。

採用担当をしていると、「転職したい」という同業他社の記者の方から連絡をいただくことがあります。入社志望書の「志望理由」欄に「毎日新聞の紙面が好きだから。転職するなら貴社以外考えられない」と書かれているのを見ると、当時の自分を思い出します。

その後、いろんなことが重なって、6年目の終わりに「一度きりの人生だし、悩むぐらいなら思い切って移ってしまえ!」と、勢いで転職してしまったというわけです。

なるほドリと一緒に新聞を読む市川
なるほドリについて知りたい方はこちらをご参照ください

一緒に笑ったり、怒ったり、泣いたり

毎日新聞社に移って最初に赴任したのは川崎支局。その後は社会部が長く、念願だった労働問題の取材をすることができました。東日本大震災の被災地駐在、毎日新聞出版の週刊エコノミスト編集部への出向、新規メディアの立ち上げ、ニュースサイト編集のデスクなども経験しました。

これを読んでいるみなさんは、いまこう思ってますよね。「で、毎日新聞社は『おもろいな』って言ってもらえる場所だったのだろうか…」って。

はい、私は間違いなくそうだと思っています。転職してしばらくして、かつての同僚に再会したときに、「なんか、楽しそうだな」「のびのびやってんな」と言われたことを思い出します。

妊娠・出産後、悩み、迷走した時期もありますが、ここまで振り返ると、総じて、楽しくのびのび仕事をしてきた気がします。

もちろん、記者が追いかけるのは、「おもろい話」ばかりではありません。時には辛く悲しい話、許せない話も取材しなくてはなりません。自分の無力さが情けなくて、悔し泣きすることだってあります。

そういうときも、ここには一緒に怒ったり、泣いたりしてくれるデスクや同僚がいました。心からリスペクトできる記者もいます。だから続けてこられたのだと思います。

記者に向いているのはどんな人?

最後に。学生のみなさんからもう一つ、よく聞かれる質問に「記者に向いているのはどんな人ですか?」というのがあります。

名記者、敏腕記者と呼ばれる人たちに聞いてみるとほぼ間違いなく、「何でも面白がれる人」という答えが返ってきます。

私自身は「すごい特ダネ」が書けたわけでも、みんながうなるような「超うまい原稿」が書けたわけでもありません。でも自分が「これは絶対おもろい」と思って取材して書いた原稿は最強だと、間違いなくそう思います。どんなにすごい調査報道も特ダネも、超うまい原稿も、全てはそこがスタート地点なのだと思います。

注:ここまで「おもろい」を連発してきましたが、私自身は関東出身で、関西人じゃありません。ただ、悔しいけど「おもしろい」より「おもろい」の方が近い気がして、最後まで「おもろい」で通しました。

長くなりました。

新聞社で働くことは、「かっこいい」わけでも「もうかる」わけでもないかもしれません。それでも新聞社に関心を持ってくれる方がいたら、中でも特に、毎日新聞社に関心を持ってくださる方がいたら、とてもうれしいです。

文 毎日新聞社 採用担当・市川明代


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集