【裁判は誰でも起こせる?】「訴える資格」って何?行政事件訴訟法・問題解説
こんにちは、けいりサラリーマンです。
今回は「行政事件訴訟法」の中でも最重要テーマのひとつ、「法律上の利益」についての問題を一緒に見ていきます。
「この行政の対応はおかしい!訴えてやる!」と思ったとき、すぐ裁判を起こせるわけではありません。
そのためには「自分が、訴える立場にあるのか?」、つまり「訴える資格」が必要です。
でも、この「法律上の利益がある人って誰?」という判断は難しく、ひっかけも多いところ。
だからこそ、過去問を通してしっかり身につけていきましょう!
専門用語のやさしい解説
法律上の利益:
簡単にいえば、「自分の生活に直接かかわってくる不利益」のこと。たとえば自宅の隣に大きな工場が建って騒音が出るとか、日当たりが悪くなるとか。そういう直接的な影響がある人だけが「訴える資格がある」とされます。民衆訴訟:
選挙の無効を争うような訴訟。自分に特別な不利益がなくても、みんなの代表として争うことができます。不作為の違法確認訴訟:
役所が「やらなきゃいけないことを、やってくれない!」というときに、「その放置はおかしい」と訴える訴訟です。
問題文(そのまま)
行政事件訴訟における法律上の利益に関する次のア~オの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
ア.処分の取消訴訟において、原告は、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として処分の取消しを求めることはできず、こうした理由のみを主張する請求は棄却される。
イ.処分の無効確認の訴えは、当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分の無効の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができる。
ウ.処分の取消訴訟は、処分の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においても、なお、処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者であれば提起することができる。
エ.不作為の違法確認訴訟は、処分について申請をした者以外の者であっても、当該不作為の違法の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者であれば提起することができる。
オ.民衆訴訟とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する訴訟であり、原告は、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起することができる。
選択肢:
ア・イ
ア・オ
イ・ウ
ウ・エ
エ・オ ← 正解
ア.原告が、自分に関係ない理由で訴えてもダメ
原文:
「処分の取消訴訟において、原告は、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として処分の取消しを求めることはできず、こうした理由のみを主張する請求は棄却される。」
やさしい説明:
「他人にだけ関係あるミスを理由に、自分がその処分を取り消してほしいと訴えても、ダメですよ」ということです。
たとえば:
あなたの友達がスーパーのくじ引きに当たったのに、店員がミスして商品をくれなかったとします。
そのことに腹を立てたあなたが「友達がかわいそうだから、私が裁判でそのミスを取り消してもらう!」と訴えても、裁判所からは「あなたには関係ないでしょ」と言われて終わります。
つまり、自分に直接関係ある違法でないと訴えることはできません。
✔ 正しい内容です。
イ.無効を訴えるのは、その処分で損するおそれがあって、他に方法がない人だけ
原文:
「処分の無効確認の訴えは、当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他…」
やさしい説明:
「すでに出された処分が無効だと訴えるには、その処分で今後損するかもしれない人で、しかも、他にその無効を主張できる訴訟手段がない人に限ります。」
たとえば:
建物の建築許可が出た。でも、まだ工事は始まっていない。もしその建物が建てば、あなたの家の前が日陰になる可能性がある。でも、すでに他の裁判ではこの問題を扱えない…そんなときは「許可そのものが無効だ」と訴えることができます。
✔ 正しい内容です。
ウ.処分の効力が終わっても、利益があるなら訴えられる
原文:
「処分の取消訴訟は、処分の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においても…」
やさしい説明:
「たとえ処分の効果がもう切れていたとしても、それによって自分が今も困っているなら、訴えることができます。」
たとえば:
過去に役所が「あなたは〇〇の資格を持っていない」と誤って処分した。
その結果、希望していた仕事に就けなかった。
処分そのものはもう終わっていても、そのせいで損害を受け続けているなら、裁判を起こす意味があります。
✔ 正しい内容です。
エ.申請してない人でも、不作為の訴訟を起こせる? → ダメ
原文:
「不作為の違法確認訴訟は、処分について申請をした者以外の者であっても…」
やさしい説明:
「行政がなにもしてくれないこと(=不作為)に対して、文句を言えるのは、それを実際にお願いした本人だけです。」
たとえば:
友達が「補助金をください」と役所に申請したけど、返事もない。
それを見て「私の友達に対応しないなんて失礼だ!私が訴える!」と言っても、あなたは申請していないから訴える資格がありません。
✘ 間違った内容です。
申請した本人でなければダメです。
オ.民衆訴訟は役所同士の争い? → 違います
原文:
「民衆訴訟とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否…」
やさしい説明:
「民衆訴訟」は、市民が“みんなの代表”として起こす裁判のこと。
「選挙が不正だったから無効にしてほしい」など、自分に直接損がなくても起こせる特別な訴訟です。
だから、役所同士のケンカではありません。
たとえば:
市の選挙で不正があったとき、市民が「これは無効だ」と訴えることができます。
こういうのが民衆訴訟です。
✘ 間違った内容です。
これは「機関訴訟」と混同しています。
以上をまとめると:
ア:〇 正しい
イ:〇 正しい
ウ:〇 正しい
エ:× 間違い(申請してない人はNG)
オ:× 間違い(役所同士じゃなく、市民による訴訟)
まとめ
行政に対して「おかしい!」と思っても、すべての人が訴訟を起こせるわけではありません。
「自分にどれだけ関係あるのか」が問われるのが「法律上の利益」です。
ポイントは次の3つ:
自分の生活や権利に直接かかわるのか?
その訴訟しか道がないのか?
特別に、公益のために訴える仕組みなのか?
似たような言葉や制度でも、立場によって使える訴訟が異なるので、ひとつひとつ丁寧に整理していきましょう!
関連する問題(行政事件訴訟法)
令和2年・問17「訴えの利益に関する判例」
平成24年・問17「取消訴訟の原告適格に関する空欄補充」
平成28年・問19「処分性に関する最高裁判例」
▶ 他の問題はこちらにまとめています:
https://note.com/mahonoid/m/mdb54de6e16de
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