軽率に真冬のアラスカで尻を出した話1
アラスカに行ったは良いが、荷物とメンタル系の薬がなくなり、病んでしまった三年後、ぼくは再びアンカレッジに降り立ちました。
二度目のアンカレッジは日程こそ半分でしたが、一回目にキャンセルしたアクティビティをすべて体験し、とても満足できる旅でした。
それから一年と少し経ってから、再びぼくは年末のアンカレッジの地を踏みました。
なぜそんな時期に極寒の地を訪問したのか。
理由は一つ、オーロラを見るためでした。
過去二回は孤独な一人旅でしたが、今回は数日ですが、同行者がいました。オーストラリア人のニコラスです。
ずいぶんとケイジな感じの名前ですが、ニコラスは本家ニコラスのケイジにはまったく似ていない、初対面の人間に「お前オタクやろ?」と言わてしまいそうな、眼鏡の似合う小柄な男でした。
昔ぼくがシドニーで小さな小さな個展をした時に、ふらっと彼はやって来ました。声だけ聞くと日本人と思えるほど日本語が堪能で、在廊していたぼくに「どの作品も良い意味で狂ってる」と、上から目線の評価をしました。若いのかオッサンなのか見た目では分かり難い男でしたが、ぼくと同い年でした。
聞けば彼は、留学の経験も日本語学校へ通ったこともなく、アニメとアダルトゲームで日本語を覚えたという強者でした。
初対面のぼくに「殻ノ少女」と「アトリの空と真鍮の月」というゲームの良さを力説して彼は帰りました。どちらもゴリゴリのエロゲームでした。
それがきっかけで連絡先を交換し、何となく交流を持つようになりました。
ニコラスというか、ぼくらはニックと呼んでいた彼から、この冬アラスカに行かないかと連絡があったのは、ある年の秋でした。写真家だった彼は「オーロラの写真を撮りに行くのだが、お前と一緒に行きたい」と言いました。
なぜぼくと行きたいんだ?と訊くと、ジャスティスは一番の友だちだし、お前は去年もアラスカに行ってるから案内してほしいと彼は言いました。もし来てくれるなら、旅行中の食費はぼくが全額負担するとまで、彼は言いました。
ちなみに「ジャスティス」とは、外国人の友人たちがぼくにつけたニックネームです。今でも普通に呼ばれるので、めちゃくちゃ恥ずかしいのですが、由来についてはまたいつか書きたいと思います。
友だちの少ないぼくは「一番の友だち」というリップサービスにいい気になって、アラスカ行きを承諾しました。しかしそれはリップサービスという名すらふさわしくない、まったくのおべんちゃらでした。
航空券などの手配を終えスケジュールを伝えると、申し訳ないけれど「失われた未来を求めて」「魍魎の贄」「JINKI EXTEND Re:VISION」というゲームを買って来てくれと彼は言いました。どれも18禁のゲームです。三つとも11月のエロゲの日に発売されるから、すぐに予約して予約特典も忘れずに持って来てほしいとのことでした。
お前、それが目的やろ!?と詰めると、それも目的だとSkype越しに彼は笑いました。彼の国で日本のアダルトPCゲームを入手できるのは、早くても発売の一ヶ月、モノによっては三ヶ月以上後になるから、待っていられない!とのことでした。特に「失われた未来を求めて」は、日本に行ってでも発売日に欲しいと、白人オタクは力説しました。
そもそもエロゲの日って何だよと訊くと、毎月最後の金曜日だと彼は言いました。その日に各メーカーの発売日が集中し、そう呼ばれているとのことでした。
日本デハ常識デショ?と、急にカタコトになって彼は言いました。聞いたこともねぇよ!と吐き捨てましたが、翌日、ぼくは生まれて初めて、ソフマップでエロゲを予約しました。ソフマップを指定したのもニックでした。
無事に入手したエロゲとその特典をスーツケースに入れ、休日出勤の振り替え休日枠を全ツッパしたぼくは、クリスマスを一週間後に控えた関西国際空港に立ちました。
入国時にエロゲが見つかったらどうしようかと心配になりましたが、没収されてもカネは払わせるつもりでした。ゲームは三本で3万円近い金額でした。
今回はカナダのバンクーバー経由ではなく、サンフランシスコからアンカレッジを目指す経路でした。
