ヒーローインタビューは、三途川を渡りきったあとで
これは5分読み切りの、
ファンタスティック・ラブ(コメ)・ショートショート。
登場人物は、
「僕」「君」「こと座のベガ」、そして「天使たち」。
僕がはじめて書く、掌編小説である。
ヒーローインタビューは、三途川を渡りきったあとで
かくいう星が生まれた瞬間に最期を決める様に、僕は当然のこととして最期をヒーローインタビューに決めていた。
目も眩むほどの星々のフラッシュに包まれた、ここは僕の独壇場である。
天国スタジアムの観客席では、飛べない天使が翼を羽ばたかせ、星のひとつを仰いでいる。
僕は天国ステージの上。
天国マイクを片手に、天国インタビュアーに名指されて、喉を潤すには心許ないほどの唾をゴクリと飲み込んだ。
「放送席、放送席、今日の天国ヒーローは○×です!」
少しの静寂ののち、天使の祝福は赤ちゃんの泣き声の様に、派手にはじまって急に終わった。
ここには天使とヒーローしかいないみたいだ。
生まれてはじめてのヒーローインタビューにしては、少しヒーローが過ぎるかもしれない。
走馬灯掲示板には、人生のハイライトが映し出されていた。
とても長いハイライトだと思った。
プラネタリウムでお気に入りの星だけを、ぼうっと眺めている様に、整然な時間が刻々と流れている。
「ズバリ、勝因はどこにありましたか?」
「君とベガを見た、あの丘にありました」
ちょうどハイライトがそれと重なる頃だった。
曇天の夜空には星がぽつりとたったひとつ。
僕はあるはずの答えを探す様にして、望遠鏡を覗き込んでいた。
「わし座もはくちょう座も見えないみたい。ベガはあんなにも明るいのに」
「じゃあ私たち、大三角形みたいね」
君はただそれだけを言って、満点に笑うのだった。
ああ、あれは星に語りかけていたのだと、僕は今更になって気がついた。
僕らはようやく星に介されて、結ばれたのかもしれない。
「そういえば、天国インタビュアーさん、僕は、星ですか? それとも、天使ですか? それとも….」
「それは、願わないと分かりません。願えば、叶うでしょう」
「○×さんは、何に、なりたいですか?」
「星に、なりたいです。できれば、あの星に」
句読点の多い会話だった。
即答は、ただ願いだけを強く、届け、と。
待ってましたと言わんばかりに、天使は途端にキィーキィーと沸きはじめる。
やっぱり天使は、赤ちゃんみたいだ。
そうしてふと、思い出したように三途川のほうを見ると、向こう側にも空があって、星がいくつも浮かんでいるのが見えた。
そのうちのひとつは暖かくも懐かしいひかりを放っていて、僕にはそれが君のものだとはっきりと分かった。
僕は結んだ。
あの丘で見たベガのように、もう一度、確かめる様にして。
繋がった。
そこにある想いを頼りにして。
それはかけがえのない、君の大切だった。
きっと星とは、愛のひかりだ。
届いてほしいと願う、誰かの叫びの炎だ。
だから青白かったり、橙だったりするのだろう。
そして星は、向こう側の人だけが見られるものではなかった。
星は確かに向こう側にもあって、ひかりは僕にまで届かせた。
星はどちらにもあったのだ。
星座よりも星座みたいだと僕は思う。
願えば、叶うなんて。
届かせて、結ばれるなんて。
しばらくの間、僕らは決して会えない時間を別々に過ごすだろう。
それでもきっと同じ時間を共有するに違いない。
僕が、見失わないようにひかるのだから。
僕らは互いに星で、星座だ。
時が来たらもう一度、あの星と、君と僕を結び直せばいい。
愛の願いと、星座の跡を頼りに。
今度は君がヒーローになって。
「僕は君の、星になります」
「天使のみなさん、応援よろしくお願いします」
「キィーーーーーーーーーー」
「キィーーーーーーーーーー」
やっぱり天使は、赤ちゃんみたいだ。
「ありがとうございました。今日の天国ヒーローは〇×でした!」
天国スタジアムは今にも消えてしまいそうだ。
たいていの終わりがそうであるように、終わりの合図は出し抜けに君を攫って、三瀬の渚のエンドロールに取り込もうとする。
ただ僕は得意気に、消えていく景色の中で輝き出すのを待つのだった。
かくいう君が子猫を誘う様に、へたくそな口笛を吹きながら、いつまでも。
(1,571文字)
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生まれてはじめてショートショートを書きました。
というか、エッセイを書いていたつもりがいつの間にかショートショートになっていました。
もう二度と書けないかもしれません。
あとがきはこれから、追記することにします。
