トイレの失敗は「心のSOS」。しつけを頑張る前に、愛犬の不安を抱きしめて。
「うちの子、前はちゃんとトイレできてたのに、最近なぜか失敗ばかりで…」
もしあなたが今、愛犬のトイレの失敗に頭を抱えているなら、この話はきっとあなたの心に響くはずです。
先日、久しぶりに遊びに来てくれたエトちゃん。以前お預かりしていた時は、お散歩かトイレシートで完璧に排泄を済ませる事ができていました。だから、再会した時も「元気そうでよかった!」と安心したんです。
…が、しかし。
話を聞いてみると、以前よりももっと、トイレじゃない場所での粗相がひどくなっているというのです。リビングの床に、階段の下に、あちこちにおしっことウンチが…。ママさんが少し目を離した隙に、もう失敗。まるで「見て見て!」と言わんばかりに、わざとやっているように見えてしまうかもしれません。
「なんでうちの子だけ、こんなにトイレができないんだろう…」「私のしつけが間違ってるの?」
安心してください。「わがまま」や「当てつけ」で粗相をしているわけではないのです。ましてやしつけが間違っているわけでもありません。
エトちゃんの事例から見えてきたのは、多くの飼い主さんが見落としがちな、愛犬の「心のSOS」でした。
トイレの失敗は「わがまま」でも「嫌がらせ」でもない。それは、心が泣いている証拠。
「置いていかれたから、当てつけにおしっこしてるんでしょ?」
そう思ってしまう気持ち、痛いほどよく分かります。でも、犬の行動心理から見ると、それは少し違います。特にエトちゃんの場合、粗相の原因は「不安」でした。
ママさんが1ヶ月間、息子さんのところへ泊まりがけで行っていた間、エトちゃんはお父さんと二人きり。お父さんは普段2階にいることが多く、エトちゃんは1階のリビングでフリーに過ごしていたそうです。朝、お父さんが1階に降りてくると、そこにはあちこちの粗相が…。1ヶ月間、毎日がその繰り返しだったと聞きました。
ママさんが帰ってきてからも、今度はママさんの後追いが始まり、少し部屋を出るだけで、入り口におしっこがしてある状態に。
これは、エトちゃんが「置いていかれる」という不安でいっぱいになり、どうにも落ち着かず、その高まった感情を排泄という形で紛らわそうとしている状態なのです。人間で言えば、ストレスで衝動買いをしてしまったり、過食に走ってしまったりするのと似ているかもしれません。不安で押しつぶされそうになった心が、「排泄」という行動でバランスを取ろうとしているのです。
愛犬の粗相は、あなたへの「嫌がらせ」ではなく、「助けて!不安でたまらないの!」という、心の叫びなのです。
トレーニングよりも先に「心の安全地帯」を作る。クレートは「閉じ込める場所」じゃない。
一般的なトイレトレーニングというと、おやつで誘導したり、成功したら褒めたり…という「物理的なしつけ」を想像するかもしれません。もちろん、それも大切です。でも、エトちゃんのように「心の不安」が原因で粗相をしている子には、それだけでは根本的な解決にはなりません。
エトちゃんの事例が教えてくれたのは、環境が愛犬の心にどれほど大きな影響を与えるかということです。
実際、ママさんと穏やかに過ごせた日はトイレは完璧だったエトちゃん。しかし、お客様が来られた時、特に先日、工事業者の方が家に入って見積もりをするためにあちこち家の中を見て回った際には、トイレの失敗が相次いだそうです。これは、エトちゃんにとって「安心できる場所」がなかった、あるいは「安心できる状況」が突然奪われたと感じた瞬間に、不安が爆発してしまった証拠です。
そこで私が飼い主さんにお願いしたのは、次の2点でした。
•少しでもエトちゃんから目を離さなければならないときは、クレートに。
•お客様が家の中に入ってくる時には、クレートへ。
「え、クレートに閉じ込めるなんて可哀想…」そう思いましたか?
でも、KEIKOが考えるクレートは、決して「閉じ込める場所」ではありません。むしろ、愛犬にとって唯一無二の「安心できる避難所」なのです。エトちゃん自身も、クレートは安心できる場所だと認識しています。だからこそ、不安な時にいつでも逃げ込める、心の安全地帯として活用してほしいのです。
物理的なトレーニングの前に、まず愛犬の心が安心して落ち着ける「環境」を整えること。これが、問題行動を解決する上で最も重要な「メンタルサポート」の第一歩なのです。
頑張りすぎる飼い主さんへ。「50%の合格点」が愛犬を救う。
「完璧にやらなきゃ」「ちゃんとできないとダメだ」
愛犬のために一生懸命な飼い主さんほど、そう思い詰めてしまう傾向があります。でも、その緊張やプレッシャーは、残念ながら愛犬にも伝わってしまいます。そして、それがまた愛犬の不安を煽り、粗相を繰り返す…という悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。
私は飼い主さんに、こうお伝えしました。
「お家に帰るときにお渡ししたイラストの指示、100%はできなくていいんです。せめて50%くらいは実行してほしいです。」
完璧を目指す必要はありません。まずは「クレートを活用する」「興奮し始めたらおすわりをさせてフードをあげる」という、たった2つのことを徹底するだけでいいんです。これは一生続くわけではありません。エトちゃんが落ち着いて穏やかに過ごせるようになったら、制限なく自由に暮らせるようになります。
大切なのは、「不安を解消する方法」を、飼い主さんが愛犬と一緒に実行していくことです。
お掃除が大変という気持ちもよく分かります。でも、それ以上に、エトちゃんがそれだけ不安な状態でいることの方が、私にとってはとても辛く感じました。愛犬の行動は、飼い主さんへの「ラブレター」なのかもしれません。困った行動の裏には、必ず愛犬からのメッセージが隠されています。
犬の生態は「環境」「行動」「感情」「健康」「飼い主さんのリーダーシップ」という5つの要素が複雑に絡み合っています。一般的なトレーニングでは見過ごされがちな、これらの要素から原因を突き止め、愛犬の心を理解し、寄り添うことが何よりも大切なのです。
1日でも早く、穏やかな日常を取り戻すために。
エトちゃんは女の子で、今回は「不安」がトイレの失敗の大きな原因だと特定できました。でも、トイレができない理由は本当に様々です。男の子の場合は去勢との関係があったり、マーキングと生理的欲求との絡みがあったり…。一頭一頭、そしてそのお宅によって、全く違う原因が隠されています。
愛犬は決して悪気があってトイレがうまくできないのではありません。必ず原因があってできないのです。その原因を突き止めて解決していかなければ、一生マナーベルトやおむつの生活になってしまうかもしれません。
愛犬の気持ちを汲み取ってあげて、一緒に解決していくスタンスで飼い主さんが向き合えるように、これからも私は全力でサポートしていきます。
もし、あなたが今、愛犬の「困った行動」に悩んでいるなら、それは愛犬からの「心のSOS」かもしれません。一人で抱え込まず、ぜひ私に相談してください。あなたの愛犬が、1日でも早く穏やかな日常を取り戻せるよう、一緒に最善の道を探しましょう。
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