リレーション 第93話
第93話 「6人で走るリレー」
中国大会・リレー予選の朝。
まだ太陽が昇りきる前の、肌寒い空気が漂う時間――
泊まっている岡山市のホテル周辺を、
リレーメンバー4人(健志・知也・舜・敦史)が軽い散歩に出ると、
玄関の前で手を振って待っている2人の姿があった。
優
「おはよーっ!!みんな早いね!散歩行くなら誘ってよ〜!」
朝からテンションMAX。
寝ぐせも少し残っていて、笑顔も無邪気で、まるで朝の太陽が歩いているみたいだった。
美青
「優がどうしても行くって言うから…早起きしたんだよ。
…まぁ、私も行きたかったけどね」
優の隣で苦笑しつつも、どこか楽しそうな美青。
自然と6人で並んで歩き始めた。
⸻
優ちゃんは朝から全開だった。
「ねぇねぇ!今日ってさ、中国地方の一番速い人たちが集まるってことだよね!?
うわぁ〜ドキドキするね!!」
「…優、お前が一番テンション高いだろ」
健志が苦笑する。
「だって!私、みんなが走るの見るの大好きなんだもん!」
優は胸を張って言った。
嫌味一つない、ただ真っすぐで、誰よりも仲間思いの天然さ。
それがみんなの緊張をふっと和らげ、笑顔を生み出す。
美青が小声で知也に話しかける。
美青
「優ってさ…あれ、ズルいよね。
天然でも憎めないし、すぐ人を元気にしちゃう。
あの魅力、他の人にはないよね。いいなぁ、ほんと」
知也は少し笑って、優を見る。
知也
「でもさ……美青にも魅力あるよ。
困ってる人を放っておかないところとか…。
合唱コンクールの時も、歌下手な俺を見捨てなかったじゃん」
美青は一瞬驚いたように目を見開き、
すぐに照れたように笑った。
美青
「それは……知也だったから、かな」
2人の距離が、ほんの少しだけ近づいた気がした。
その流れで、知也はふと口を開いた。
知也
「なぁ美青。
もし俺、全国大会決めたらさ……
大阪まで応援しに来てくれる?」
美青は迷うことなく微笑んだ。
美青
「もちろん行くよ。
私がいないと知也、ダメでしょ?」
知也
「……はは。そうかもな」
朝日が差し始める歩道。
2人の影が少しだけ重なる。
間違いない。
――この2人が結ばれるのは時間の問題だ。
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散歩から戻ると、顧問が全員を呼び集めた。
顧問
「……正直、よくここまで来てくれたと思ってる。
櫻坂高校が中国大会に来るなんて、夢みたいだった。
お前たちはこの学校の歴史を変えてくれた。
心から感謝してる」
4人が、そして後ろの優と美青も、真剣に話を聞く。
顧問
「だから――あともう少しだけ。
悔いが残らないよう、思いっきり走ってこい!」
その瞬間、健志たちの胸が一気に熱くなった。
4人の心が一つになる。
いや――6人の心がひとつになった。
これは4人だけの戦いなんかじゃない。
6人で走るリレーだ。
⸻
会場入りし、最初に行われたバトン練習。
一番不安視されていた
知也 → 健志 の仲間内でも“爆速区間”の受け渡し。
だが――
シュッ!
わずか数センチの誤差もなく、知也の腕から健志の手にバトンが吸い込まれる。
小川敦史
「よっしゃぁ!完璧!!」
広兼舜
「マジで仕上がってきたな!」
健志も振り返り、にやっと笑う。
健志
「これなら……勝てるぞ」
もちろん最大のライバルは、
小田倉高校。
アンカーは速谷駿大。
予選は組が分かれているが、
決勝で戦うのは確実。
速谷も――向こうのチームも――
こちらを明らかに意識していた。
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健志がスパイクを締め直しながら空を見上げる。
知也は拳を握り、呼吸を整える。
小川と広兼も体を温めながら、互いに目で合図を送る。
その後ろでは――
優と美青が、緊張しながらも全力でエールを送っていた。
これは、絶対に負けられない。
絶対に決勝へ進まなきゃいけない。
リレーは、チーム全員の想いを乗せて走るからこそ――
