ママ、1日何回呼ばれてるか知ってる?
「ねぇ、ままー」
「ねぇ、みてってば!みて!」
「ままー、○○してー」
——一日、何回呼ばれてるんだろう。
数える気力もないくらい、娘はずっと喋っている。
マルチタスクが得意じゃないわたしにとって、
“作業中に話しかけられる”って、それだけで結構な負荷だ。
なのに育児は、それの連続。
思考は細切れ。
集中は途切れっぱなし。
自分の考えをゆっくり整理する時間なんて、どこにもない。
「○○ちゃん、できる!ママやらないで!」
さっきまでそう言っていたのに、
次の瞬間には、
「きゅっ。きゅっ。きゅっ」とひっくり返ったカブトムシみたいに手足をバタバタ。
「ばぶ~」なんて赤ちゃんみたいに甘えてくる。
なにこれ。振り幅、すごすぎない?
でも、ふと気づく。
ああ、この感じ。
これが、最後の“赤ちゃん期”。
その証拠に、娘は、三つ上のお兄ちゃんを差し置いて、一人で寝られるようになった。
うれしい。
でも、ちょっと寂しい。
……いや、お兄ちゃんはいつ一人で寝るの?
みてみてみて。
まままままままま。
やってやってやってやってやって。
正直に言うと、もう無理。限界。
早く大人になってほしい。静かにしてほしい。
——なのに。
本当に手が離れたとき、わたしはきっとこう思うんだろう。
「もっと、この時間を味わえばよかった」って。
大人の心は、今日も揺れる。
そんな中で、少しでも“ひとりで夢中になれる時間”ができたらいいなと思って、ピアノを習いはじめた娘に、ミニピアノを買った。
ネットじゃなくて、ちゃんと店舗で。鍵盤を押したときの、あの指に返ってくる感覚を確かめて。
これで、少しでも何かに没頭してくれたら。“ひとりで吸収する時間”が増えてくれたら。
ママに呼び掛けることも少なくなってくれるんじゃないかなって。
——まあ、期待はしてないんだけど、でも買っちゃった。
