昼は元気だったのに
ノンフィクションです。
今日の午前9時、親しくしていた隣の患者さんが手術へ向かった。
手術は無事に終わったようで、昼の12時半頃には家族と楽しそうに話していた。病室にいても、その元気そうな声が聞こえてくるほどだった。
「思ったより元気だな」
そんなふうに感じていた。
ところが午後5時頃、病室の空気が一変した。
看護師さんが声をかける。
「○○さん、具合どうですか?」
すると患者さんは当たり前のように答えた。
「俺はこれから手術だよ」
看護師さんは少し驚いた様子で言う。
「手術はもう終わってますよ」
だが患者さんは首を振る。
「何を言ってるんだか。これから手術だよ」
昼には家族と普通に会話していた人である。
私はベッドの上で、そのやり取りを聞きながら耳を疑った。

看護師さんはすぐに他の看護師さんを呼び、患者さんはナースステーション近くの二人部屋へ移された。
後で知ったが、術後せん妄という状態らしい。
数時間前まで家族と談笑していた人が、夕方には手術前の時間の中にいる。
病院にいると、自分の傷や痛みだけではなく、人間の意識の不思議さにも出会う。
同じ日に手術を受けても、人によって回復の形はまるで違う。
今日、そのことを目の前で見た。
