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朝食はアメリカンスタイルだと思っていたのに。

産まれてから三十年近く経って、初めて気付いた事がある。





料理上手な母はすごく手際が良かった。

特に平日の朝は

私のお弁当を作り、

私達の和朝食を作り、

父用には洋食を作っていた。

和食は無意識にも、一汁三菜を用意してくれていた。

それが当たり前の様に育ってしまったもんだから
一人暮らしをした際に、その大変さに衝撃を受けた。

洋食は目玉焼きとサラダ
焼いたパンにマーガリンを塗る。
コーヒーは豆から引いて、
父がハワイで買ってきた、お気に入りのカップで
提供する。


このカップは後に、
私が割ってしまうことになるのだが…


この朝の光景は、
なぜ父だけ違うんだ?と
私が意識した時からずっと続いていた。

ふと、高校生の時に母に聴いたことがあった。


ニコ「なんで父は毎朝パンなの?」

はは「アメリカかぶれなのよ」



 聴くんじゃなかった。



社会人になり、実家に帰るのも年に数回になった。

とある事から
私だけ実家に泊まることがあり、
久し振りに朝食を共にした。

母の声が聴こえる
「あつ!」
数日間バタバタしていた事もあり、
珍しくパン切れを起こしていたようだった。

社会人になり、
気を遣うことを覚えた私は、
すかさず母に言った。

ニコ「父はパンしか食べないよね?買ってこようか?」

この日も忙しくなる予定だったが、
朝食は大事なので迷わずに提案した。

はは「もういいわぁ、時間ないし」

はは「お父さん、和食でもいい?」


母は決死の思いで聴いたに違いない。
自分が用意できなかった不甲斐なさもあったと思う。

しまった。
ここは私が間髪入れずにフォローを…







父「おお。いいぞ。」











え?






ニコ「毎日朝は、パンとコーヒーのセットじゃないの?」



父「おう。」














父「毎日出てくるからな」













母・ニコ「はい?」




どうやら新婚当時に、
「こんな朝食も良いなぁ。」
とボソッと言った所から
母の律儀な忖度そんたくが始まったらしい。

それが続く事で、
知らぬうちに、父の朝食は
パンとコーヒーの洋食セットでなければ。が、
家族に染みついていたのだ。


しかし、あまり深く考えない父は
自分だけ違う食事が出ているのも気に留めず
据え膳食わぬは男の恥スタイルを貫いていたらしい。
(多分、そんな事すら考えていないが)



まさかの事実に
すっかり気が抜けてしまった私と母だが

そんな事も気にしない父は
和朝食をムシャムシャ食べ、

「早くしないと遅れるぞ」

そう言って自分の支度を始めたのだった。










あれから十年が経つ。
先日、久し振りに実家で朝食を食べた。

私達には何時も通りの和朝食。

父には相変わらず、
パンとコーヒーを出し続けていた。

なんだかんだで、良い夫婦だな。と
クスッと笑う私の横で

父は淹れたてのコーヒーを啜っていた。






孫から貰ったコーヒーカップで。


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