【ボストンの夜】オイスターバーで「暗黙のルール」を知らない日本人グループの隣になった話
1時間ほど並んで、ようやくカウンター席へ。ボストンの人気老舗オイスターバーでの出来事です。
すぐ隣に座ったのは、旅行中と思われる20代の日本人4人組。楽しそうにメニューを眺めている彼らの注文が、ふと耳に入ってきました。
「クラムチャウダー1つと、メイン2つでお願いします!」
……あー、やっちゃった(泣)。
アメリカのレストランにある「暗黙のテーブルルール」
彼らには1ミリも悪気はありません。円安もあるし、「せっかくなら色んな味をみんなでシェアしたい」という日本の感覚が出ただけなんですよね。
でも、アメリカのフルサービス(着席型)レストランにおいて、人数に満たない注文は、お店や給仕してくれるスタッフから困惑される「暗黙の不文律」なんです。
向こうのサーバー(接客係)の給料は、テーブルの会計金額に対するチップが大きな割合を占めています。だから4人席で注文が少ないと、スタッフの時間とテーブルの価値そのものを損ねてしまうことになる。

とはいえ、「ルールを知らないのか」と正論をかざして説教するのも、せっかくの旅行の雰囲気をぶち壊して冷めさせちゃいますよね。
それに、隣で見ていて「日本人はお客としてのマナーを知らない」と一括りに誤解されるのも、正直なんだか悔しかったんです。
そこで僕らは、自分たちの席でオイスターや料理を「追加」でオーダーすることにしました(まあ、僕が単にオイスターを追加で食べたかっただけという説もありますが笑)。
そして会計の時、隣に聞こえないよう、コッソリとスタッフにこう伝えたんです。
「隣の若い子たちは、アメリカの慣習を知らないだけだから優しくしてあげてね。その分、僕らのテーブルで余計に頼んだから!」
スタッフは「わかったよ、教えてくれてありがとう!」とウインクしてくれました。

「スマートな大人」を気取ったあとの、小さな葛藤
……と、ここまでは「カッコいい大人のスマートな対応」のように聞こえるかもしれません。
でも、後からホテルに戻って一人で振り返った時、僕の中にものすごく複雑な葛藤が湧いてきたんです。
「直接、優しく教えてあげるのが本当の親切だったんじゃないか?」 「『嫌な小言を言うおじさん』と思われるのが怖くて、保身に走っただけじゃないか?」
「日本人として悪く思われたくない」という僕自身の小さなプライドと自己満足。格好いい大人を演じつつも、心の中ではそんな迷いやカッコ悪さがグルグル巡っていました。
誰かの失敗を、サッと包める余白
他人の失敗や不文律違反を目にしたとき、僕たちはつい正論で相手を裁きたくなったり、逆に見て見ぬ振りをして冷たく距離を置いたりしがちです。
でも、世の中のトラブルのほとんどは「悪意」ではなく、単に「知らなかっただけ」から起こるんですよね。
あの夜の僕の行動が、100点満点の正解だったのかは今でも分かりません。
それでも、誰かのちょっとした失敗を裏でサッとフォローしてあげられるような、そんな心の余白だけは持っていたいなと思うのです。
(……まあ、カッコいいこと言ってますけど、結局のところ追加で食べたオイスターが美味すぎて、一番満足していたのは僕なんですけどね笑)
