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フランスの猛暑を、凍ったペットボトルでしのいでいる



先日、母から連絡があった。

「フランスは猛暑で死者数が多いみたいだけど、大丈夫?」

うちはおかげさまで大丈夫だよ、と返事をした。
日本でもフランスの猛暑がニュースになるくらい、今年の暑さは異常だ。

フランスの猛暑日は、年々長くなっているなと体感している。

数年前までは、1週間くらい30度超えの日が続くことはあった。
でも当時は、エアコンを買うほどではなかった。

なぜなら、夜に窓を開けっぱなしにしておけば、翌朝には室内温度が19度くらいまで下がっていたからだ。

日中14時頃でも、室内は25度くらい。
扇風機でなんとか対応できた。

夕方18時以降になると、気温は高くても、わりと過ごせる空気だった気がする。

でも最近は違う。

37度の日もあるし、以前は南仏だけが特別に暑い印象だったのに、今年はフランスのあちこちで40度近くなる日がある。

もはや「ヨーロッパの夏は湿気がなくて過ごしやすいんです」なんて、優雅な顔で言っていられない。

暑いものは暑し、しかも普通に危ない。

ニュースでは、この熱波の時期に、フランスで少なくとも1000人規模、報道によっては2000人超の追加死亡が確認されたと伝えられていた。

ある大手スーパーでは、扇風機や移動型エアコンをめぐって争奪戦のような状態になり、警察が介入したというニュースまで出ていた。

扇風機で警察介入。
なんてこった……フランス。

文字だけ見ると少しシュールだけれど、実際にはそれくらい切実な状況だったのだと思う。

エアコンより住宅改修、とは言うけれど

夜のニュースでは、エコロジー専門家が「エアコンは気温をさらに上げてしまうから、使わないように」と話していた。

その代わりに、暑さ対策として住宅改修の案を提言していた。

それは、たしかに理想としては分かる。

壁や屋根を断熱し、窓を替え、風の通り道を考え、建物そのものを暑さに強くする。
長期的には、きっとそのほうがいい。

でも、私はテレビの前で思った。

「そのお金、天から降ってくるとでも?」

もちろんフランスにも、住宅改修の補助制度はある。
でも、古い建物で壁、屋根、窓まで本格的に手を入れようとすると、補助があったとしても自己負担が軽いとは限らない。

もはや「ちょっと窓を替えましょうか」ではなく、「人生設計を替えましょうか」の域だ。

そりゃあ、まずは住宅改修よりエアコンを、となる人がいても不思議ではない。

それに、エアコンの熱気による気温上昇を心配する気持ちは分かるけれど、実際に体調を崩す人が増えれば、医療現場の負担も大きくなる。

ちなみに、フランスでは病院の一般病棟にエアコンがないところも多いと聞いて、おったまげた。

病院では、転落などの事故を防ぐために、窓が全開に開かないようになっていることも多い。

開いても10cmくらい。

換気というより、窓が「一応、開きました〜」とアリバイ作りをしているくらいの幅である。

……冷気なんて取り込めるの?

たしかに、エコの観点からは、エアコンを使いすぎるのはよくないのかもしれない。

でも、ここまで熱波が深刻になっているのに、「エアコンを使わずに暑さに慣れましょう」だけで済ませるのは、無理がある。

もちろん、好き放題使えばいいという話ではない。
でも、熱波は、もはや根性論で乗り切るものではなくなっている。

我が家の猛暑対策、だいたい昭和

そんなわけで、我が家の昭和すぎる暑さ対策をご紹介したい。

我が家では、夜に部屋中の窓を全開にして、できるだけ冷気を入れ込む。

朝は、まだ涼しい5時頃に犬の散歩を済ませる。

1時間ほど、ボールを投げたり、一緒に走り回ったりして帰宅。
涼しいとはいえ、帰る頃には汗だくだ。

帰ってきたら冷水シャワーを浴びて、一度凍える思いをする。

妊活中は「体を冷やさないように」とよく言われるけれど、この時期ばかりはそんなことを言っていられない。

首には、日本で買ってきたクールネックリングを装備。

朝7時を過ぎたら、窓もシャッターも閉める。
そこからは、ほぼ薄暗い室内で、冷気を逃さないように暮らす。

気分は、もはやモグラである。

昼間なのに家の中が薄暗い。

でも、シャッターを開けた瞬間、太陽が「BONJOUR!!!」と言いながらグングン室温を上げにくるので、こちらも必死だ。

扇風機を回し、扇風機に保冷剤を吊り下げ、さらに扇風機の前に凍らせたペットボトルを置く。

なんとも昭和なテクニックだ。

ちなみにお隣さんは、猛暑日にはテラスで寝ているらしい。

自宅キャンプである。

たしかに、夜になると外のほうが涼しい。
でも、私にはまだその境地には達せない。

そもそも夜中に窓を全開にして寝るなんて、泥棒に「どうぞお入りください」と言っているようなものでもある。

我が家は比較的犯罪率が低い地域なのでできることだけれど、これが大都市だったら、なかなか勇気がいると思う。

それでも、この作戦が通用するのは33度くらいまで。

35度を超えて、しかも太陽がギラギラしている日は、もう降参だ。
昼から夕方までは、エアコンを起動する。

命あってのエコだから。

移動型エアコンという小型工事現場

ちなみに我が家のエアコンは、移動型エアコンだ。

これが、なかなかの爆音。
もはや家電というより、部屋の片隅だけリフォーム中なのかと思うほどの騒音だ。

フランスでは、建物の外観や管理規約の関係で、壁付けエアコンを簡単には設置できないことも多い。
住人の同意や、市の許可が必要になる場合もある。

そのため、一般家庭では移動型エアコンを使っている人も少なくない。

移動型エアコンは、熱風を外へ出すために、窓からホースを出す。
そして外気が入ってこないように、窓の隙間をふさぐ取り外し式のシートを貼る。

この時もシャッターはギリギリまで閉じている


涼しくなるために窓を少し開け、そこから熱風を逃がし、隙間を必死でふさぐ。

なんだか、矛盾と工夫の合わせ技だ。

エアコンは悪、という考え方

ただ、お隣さんがエコロジストなので、エアコンを使うのにも、なんとなく気を遣ってしまうところはある。

先日、夫はお隣さんから「エアコンは悪だから、ほかの方法で」というような話をされたらしい。

私だったら、暑さで脳が溶けかけている状態なので、ちょっと顔が引きつっていたかもしれない。

でも夫は、たいして気に留めていなかった。

「個人の考えがそれぞれあるからね」

とのこと。
この人のメンタルにも断熱材が入っているのかもしれない。

ただ、夫いわく、お隣さんもこちらを咎めたくて言ったわけではなかったらしい。
本当に環境を守りたいという気持ちから、話しているのが伝わったとのことだった。

こういうところは、フランスらしいなとも思う。

それぞれの考えがあって、それを日常の中で普通に話す。
政治のことも、環境のことも、暮らしのことも、隣人との会話に出てくる。

日本にいた頃の私は、エアコンをつけるかどうかで、隣人と思想の話をする未来なんて想像していなかった。

でも今は、窓を閉め、シャッターを下ろし、薄暗い部屋で凍ったペットボトルを扇風機の前に置きながら、環境問題について考えたりしている。

環境を守ることは大事だと思う。
暑さに強い街や家に変えていくことも、必要だ。

でも、その過渡期にいる人たちに向かって、ただ「慣れましょう」「我慢しましょう」と言うだけでは足りない。

この凍ったペットボトルに、地球の未来を背負わせるには、少々荷が重すぎやしないか。



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