大漁旗が、パンツになった日
2026年7月1日。
長い冬眠から目覚めてもらい、祝いの大漁旗で仕立てたテーパードパンツとターバン。
インスタの手作りアカウントに載せたところ、思いのほか反応をいただいた。
この生地との15年間の物語を、もう少し丁寧に書き残しておこうと思う。
骨董市で出会った、一枚の布
この生地との出会いは15年以上前。
上野公園・不忍池のほとりで開かれる骨董市だった。
休日にふらりと立ち寄った市は、いつも通り、時代物の器や古い着物が所狭しと並んでいた。
その中でふと目に留まったのが、鮮やかな色合いの一枚の布。
近づいてよく見ると、それは大漁旗の断片だった。
すでに一部が切り取られていて、もとの大漁旗の姿はもう完全ではなかった。
それでも「藤本富士男」「佐喜浜町」という文字だけは、はっきりと染め抜かれて残っていた。
佐喜浜町は、高知県室戸市にある漁の盛んな土地。
潮風にさらされた風合い、海のものが付着した痕跡。
床の間に飾られていた旗ではなく、実際に海に出て潮をかぶりながら使われていた旗だったのだと思う。
そんな来歴を想像しながら、私はこの布を買い求めた。
15年、眠っていた生地
けれど、買ってすぐに何かを作ったわけではない。
良い生地というのは、かえって手を出しにくい。
「これで何を作ろう」
「失敗したくない」
そんな思いがあって、生地はタンスの中でずっと眠っていた。
15年以上という歳月は、人生でいくつもの節目が過ぎるほどの長さだ。
住まいも変わり、暮らしも変わった。
それでも、この生地だけは手放さずに持ち続けていた。
そして2026年。
ようやく「今だ」と思える時が来た。
長い冬眠から目覚めてもらうように、生地を裁ち、テーパードパンツとターバンに仕立てた。
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