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地テシ:469 2026大阪長期滞在の話

 先日開催されましたドナ禁カフェ「禁断のシンカロン」大坂・東京学会が無事に終わりました。ご来場頂きましたみなさま、ありがとうございました。例によってゲームのシンカロンについて理屈臭く語りましたよ。詰め込みすぎて早足だったけどな!

 さて、劇団☆新感線が初夏にお送りする「アケチコ!」の制作発表生配信が4/15(水)に行われるコトが発表されましたね!

 またしても平日の昼間で申し訳ありませんが、お昼休みにどうぞ。豪華なゲスト陣と共にドヒャッっとお送りしたいと思いますよ。

 大正ロマンに溢れた謎多き探偵物語のハズが、なんだかアングラでふざけた音楽劇になってしまいそうです。そんな今作の予習がてら覗いてみて下さいませね。
 また、本公演では聴覚に障がいのある方のためにタブレット台本の貸し出しも行います。詳しくはこちらをご覧下さいませ。

 それと、先日開催されましたプロジェクトKUTO-10「三大劇作家の世界大冒険」のDVD発売も発表されました。

 大阪・山形・東京と三都市で上演された、なんだか80年代感の溢れる不思議な三本オムニバスの作品です。よろしければお買い求め下さいませ。下らないけどな!


 でね、その「三大劇作家の世界大冒険」の稽古は大阪で行われたんですよ。そりゃそうだ。大阪の劇団というかプロデュース公演だからね。ほとんどが大阪在住のスタッフキャストなのです。
 ですので久しぶりの大阪長期滞在。稽古は集合時間が遅かったり休みも多かったりもしましたので時間に余裕があったりしました。いつもの東京カンパニーの大阪公演では滞在期間も短く、公演優先で体力温存に偏りがちですが、今回は割と余裕のあるスケジュールだったのです。
 となれば、大阪の色んな所に行ってみたくなるというもんじゃないですか。大阪生まれ大阪育ちの私ですが、まだまだ行ったことのない場所はあります。ありまくります。
 とはいえ、気になる場所や博物館などには結構行っております。いやもちろん何度行っても面白い場所ではあるのですが、今回は今まで行ったことの無いところを巡ってみましょうか。今回の稽古場が御堂筋線江坂駅近辺でしたので、その辺りを中心にぶらぶら歩いてみましたよ。数が多いので駆け足気味にご紹介しましょう。

 まずは江坂駅からも歩ける「垂水神社」さんへ。垂水と行っても神戸市の垂水ではありません。吹田市の垂水にある、飛鳥時代からともいわれる古社です。
 垂水神社は千里丘陵の南端にありまして、丘陵の端っこというコトは湧水の多いハケの地です。「垂れる水」の名の通りに滝の落ちる場所でして、水の神として古来より祀られてきました。
 その千里丘陵というのは豊中市と吹田市の間に跨がる丘陵でして、大正生まれの父が言うには「昔は竹藪しかなかった」という土地でした。そんな竹藪を切り開いて1962年には日本で最初のニュータウンである千里ニュータウンが作られ、1970年には大阪万博の会場となった場所なのです。
 つまり何も無かった土地に新しい街を人工的に造成し、テーマパークまで作ってしまった日本で最初の未来都市とも言えるのです。私が子供の頃には何やら未来感を感じられる都市でしたが、元々は緑豊かな丘陵だったのです。

 その南端にあり、古くから交通の要衝であった垂水の地を鎮守する垂水神社。私のGoogleMapには以前からマークがしてあり、一度言ってみたかった神社なのですよ。しかも江坂から歩いて行ける場所なのです。そりゃ行ってみたくなるってもんでしょ。
 江坂駅から北東に15分程歩けば垂水神社に至ります。途中には垂水遺跡の看板や用水路が見られます。水が豊かな土地だからこそ、太古の昔から集落が営まれていた土地なのです。

神社のちょっと南には南垂水遺跡がありました
垂水神社の立派で長い参道
奥に見えるのが鎮守の森、つまり千里丘陵の高台です
こちらが垂水の大滝。水量は減っていますがハケの地ということが判ります

 後背に広がる高台にある鎮守の森は、一時はマンション計画などで存続が危ぶまれましたが、地元住民の協力によって護られたようです。湧水や滝などは森が破壊されると絶えてしまう場合もありますので、神社の周りの森って重要なのですよ。


 別の日には、そんな千里丘陵にありながらもニュータウンができる前から存続している「上新田」エリアに行ってみました。千里ニュータウンは昭和中期にできた新しい街ですが、そのすぐ横にある上新田はその名の通りに江戸初期に新しく開発された新田です。千里丘陵の中にある谷戸地形(川によって削られた窪んだ土地)を開拓して農地にしたエリアでして、千里ニュータウン造成時にも開発を免れて昔ながらの街並みが広がる稀有な土地なのです。https://www.city.toyonaka.osaka.jp/machi/senrikorabo/ayumi/a0010400000202106.files/13kamisinden.pdf

 大阪の江戸時代の、しかも谷戸地形の街並みが残る珍しい土地というコトで前々から行ってみたかった街です。大阪に生まれ育ちながら一度も行ったことの無い場所ですので、この機会に行ってみました。
 北大阪急行の桃山台駅から千里中央駅の間に広がるこの街は谷戸地形らしいデコボコとした土地です。まずは明治33年に建設された「旧新田小学校校舎」を見に行きましょう。昭和48年まで使用されたこの校舎は当時の流行の洋風建築では無く純和風建築として建設されて現在まで残っている珍しい例なのです。

126年前の建築ですよ。しかも50年前まで実際に使われていたのですよ

 ここからは街並み観察です。ウネウネと続く谷あいの道筋や古風な作りの家屋や蔵の風情、そして道標などに往時の面影がよぎります。まるで旅籠の様な豪奢な民家がたくさんあるんですよ。

江戸時代から交通の要衝でしたので道標がたくさん。名産品はタケノコ
上の看板とは別の道標ですが、こういった道標がそこかしこに点在しています

 街の一番の高台には千里の天神さんで有名な「上新田天神社」があります。天神さんですから梅の木や撫で牛などもありますが、スグ隣に千里ニュータウンの中心地である千里中央があるにも関わらず静謐な空間が広がっています。上新田エリアは北急の千里中央駅からでも桃山台駅からでも歩いて15分ほどですので行きやすいと思いますよ。

ニュータウンの横に静かに佇む由緒ある神社です
神社の後背にはオシャレなマンションが建っていました


 さて、街歩きだけでなくて博物館にも行っていました。気になりながらも今まで行ったことのない博物館。まず一つ目は「豊中市郷土資料館」。生まれ育った豊中市の地理と歴史を解説してくれる、2022年にオープンした新しい博物館です。

リニューアルとのことでしたので、前身となる資料館もあったのかも

 常設展示室はワンフロアのみの小振りな資料館ですが、中々に濃い内容でした。なにしろ出てくる地名が馴染みのある土地ばかり。子供の頃に授業で習ったなあという懐かしさもありますが、それよりも知らなかったコトの方が多くて大変勉強になりました。

考古学の世界では庄内式土器というのは有名らしい
手前が本物の庄内式土器。底が丸くなっていることが判ります

 隣の企画展示室では近代の暮らしについての展示が行われていたのですが、ちょうど学芸員さんによるレクチャーが行われる時間でしたので、私一人だけですが解説していただきました。
 かつて実際に使われていた農耕機具や家電などが展示されており、豊中市の地図や写真もふんだんにあってわかりやすいレクチャーでしたが、その中で長年のナゾを解く事実も教えて頂いたのです。
 皆さんは「二股ソケット」というモノをご存じでしょうか。昔、天井からぶら下がっていた白熱電球のソケットを二股に分けるプラグです。大正時代、大阪で創業した松下幸之助が考案した二股ソケットが大人気となり、後の松下電工とパナソニックへと繋がることは、大阪に住む人なら一度は聞いたことのあるエピソードだと思います。
 ただ、この「二股ソケットが大人気」というのがよく判らない。二股に分かれているからなんなのだ? 電球を二つ付けるのか? よく判らない。そう思っていました。が、学芸員さんから聞いた解説で謎が解けたのです。
 明治の頃から家庭でも利用され始めた電気ですが、当初は電灯としての利用が主でした。つまり今のような壁コンセントは無いワケです。ですから、大正から昭和に掛けて普及した家電製品のプラグは電灯ソケットに刺せるようなネジ込み式だったのです。そしてコードは天井まで届くように長く作られていました。

このように電灯から電気をとって家電を動かしていたんですね

 ただ、その家電を使う時には電球を抜いてソケットを空けなくてはなりません。それじゃ暗くなっちゃうよね。不便だよね。という所に登場したのが二股ソケットです。二口あるから電球を付けたままでも家電が使えます。コレは便利! そりゃ売れるよねえ。
 まあ、実際には二股ソケットはすでにアメリカで発明され、日本でも他社が生産していたようですが、松下製の商品は丈夫で壊れにくく、しかも安いというコトで大ヒットしたそうなのですが。

こちらが二股ソケット。で、この写真を引くと
長いコードと電球型ねじ込み式のプラグがよく判ります

 なるほどねえ。子供の頃に聞かされた松下幸之助の立身伝での「二股ソケットの大ヒット」という謎が解けてスッキリ致しましたよ。
 豊中市立郷土資料館は阪急宝塚線庄内駅からだと歩いて20分くらいかかるので、阪急バスで行くのが楽かもしれません。


 もう一つ行ったのが天神橋筋六丁目(天六)にある「大阪くらしの今昔館」です。2001年に開館しているので以前から気にはなっていたんですが、ビルの8階にあるというコトからどうせ大したことのない展示だろうと高をくくっていたのです。

駅直結のビルの8階がエントランス。そしてまず10階に上がります

 ところが! 行ってみたら同ビルの8〜10階をぶち抜いた立派な展示室で、実物大の街並み復元や大量のジオラマ模型がズラッと並んだ圧巻の展示でした。なんだよ! こんなに凄いんなら、もっと早く教えてくれよ!

 10階からは江戸後期の大坂の実寸復元が見下ろせ、しかも三代目桂米朝さんの語りで解説も聞けます。そのまま9階へ降りれば広がる天保期大坂の街並み。商店には数々の商品が並び、そのまま奥へと抜けて路地裏の裏長屋も探索できます。風呂屋には蒸し風呂の柘榴口も再現されており、その風呂屋シアターでは桂米朝、桂米團治父子の解説で「大坂むかしまち巡り」も楽しめます。
 しかも音と光で朝〜晩の移り変わりが演出されていて風情があるのですが、夜の時間帯は展示物が見にくいという弱点もあるんだけどね。まあ待てばすぐに朝になります。

実物大の街並みを見下ろすことができます。火の見櫓もありますね
夜演出の街並み。綺麗なんだけど暗いんだよね
小間物屋さんの店頭には多くの商品が
瓦屋根から雨水が垂れて地面がえぐられている様子も再現されています

 8階には明治から昭和に掛けての大阪の街並みがいくつものジオラマ模型で展示されており、パノラマやジオラマ好きにはたまらない作りです。壁側にも半立体の様々な模型が置かれていて、照明と共に動くようになっていました。

昭和初期の船場。左端手前の生駒ビルヂング(旧生駒時計店)は現存しています
床面が巨大なパノラマ地図になっているエリアも
明治末に開かれたルナパークと旧通天閣と新世界
大阪の百年をVRで体感できる「大阪百世」は楽しいですが別料金です

 全体的に文字での解説は短めで、見て楽しめる展示が多いように思います。物凄く小さなサイズの江戸東京博物館タイプのような印象を受けました。地下鉄天六駅を上がってスグの所にありますので、ジオラマ好きな方にはオススメです。


 そんなこんなの2月の大坂散歩。もちろんそれぞれの目的地に行く道中も街並みを観察しながらの散歩です。稽古の合間に色々と巡れて楽しゅうございました。

 じゃないんですよ! 今回はそれだけじゃないんですよ! 実はね、私がかつて暮らしていた三つの街に行ってみるという散歩もやっていたのです。
 じゃ、次回はそれで。では、また来週。