「ホンモノ」に殴られたこと、ありますか―殴り・殴られのお話 その壱―
「外的な痛み」には強いほうです、たぶん。
車と衝突したり、車から落っこちたり、
何度も骨折や靭帯の断裂を繰り返しているし…というのは、いままでのコラムで記してきましたね。
初出としては・・・
たとえば猪木のビンタを3回喰らって…訂正、「いただいて」快楽に浸るバカチンだし、
取材で知り合いになった元ボクサー、畑山隆則の「マジ」ボディを喰らったこともあるし、

RENAや武田梨奈のローキックを受けたこともあります^^


痛かったけれど、耐えられないほどではない。
いや………畑山さんのボディは、喰らってから数時間は呼吸が苦しかったか(^^;)
けれども、ね。
それは、自分史上で最も痛かった打撃では「けっして」なかった。
いじめのころの暴力のほうが痛かった?
否。
きょうは、そんな暗い話ではありません・・・ので、楽しんで読んでいただければ。

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20世紀末、、、のころのお話。
すでに「ほとんどのひと」がケータイを持つ時代ではあったものの、ネット文化の隆盛は、ほんのちょっとだけ先のことで。
だから電柱や行政管理の樹木には沢山の違法ビラやポスターなどが貼られていて、

役所から依頼を受け、それらを撤去していくーそんなアルバイトをしていました。
トラックドライバーは10コ上のNさん、自分は助手席に乗り、
①9:00スタート…走行中、ふたりで違法広告を探す
②見つけ次第、トラック停車
③自分が走って撤去、荷台に載せる
④14:00終了、荷台の広告を業者ごとに仕分けして内訳を書類にまとめ役所に提出
このドライバー、Nさんがすごいひとでした。
元暴力団員、府中刑務所の「おつとめ」が終わって、この職に就いたと。
あったりめぇのように背中には「もんもん」が彫られていて、でも現在は足を洗ったから早く消したい、しかし金がかかるからそのまんまにしていると。

「俺の背中はさ、俺の一生の恥なんだよ」
「恥…」
「早く消したい」
「…」
「聞いていいですか、なぜ刑務所に?」
「裏切者が居てな、ソイツの左腕を日本刀で斬り落とした」
「………」
マジかよ、ホンモノのひとじゃん。ホンモノ!
面倒見がよく、冗談ばかりいうひとだから、背中のもんもんを見ないかぎり、「Nさん自ら」「すすんで」話しちゃう過去を聞かないかぎり、元暴力団員であることを見破るひとなんて居ないと思います。
そんなNさん、字を書くのが苦手でした。
「ヘタだしよ、漢字も知らない。ドライバーが書いて提出する決まりだけど、お前、代わりに書いてくれないか、書類」
自分は字は上手いほうだし、このころすでに、ほとんどなんの実績もないのにモノカキを自称していましたし。
「モノカキなんだろ、お前」
「はい、ぜんぜん大丈夫ですよ。自分がやります」
「週に1回、飯奢るからさ」
「ありがたいです、ずっと自分がやりますんで」
というわけで、その日も車中で書類をまとめていました。
べつにゴキゲンだったわけでもないけれど、鼻歌まじりに。
イエローモンキーだったと記憶しています。
するとNさんが突然、「馬鹿にしてんのか」
「…はい?」
「馬鹿にしているんだろ」
「…なにを、ですか」
「歌なんか歌いやがって」
「あっ、うるさかったですか」
「俺が字が書けないことを馬鹿にしているんだろう」
「…どうしたんですかNさん」
「字が下手なことを馬鹿にしているんだろう」
「なんでそう思うんですか、そんなこと、ぜんぜん…」
「じゃあ、なんで楽しそうに歌いながら書くんだ、そんなつまらん書類を」
「…つまらない書類だからこそ、気分上げるために歌ったんですよ。うるさかったんなら謝ります」
「お前はそうやっていつも、俺を見下しているんだな」
さすがにイラっときました。
Nさんが元暴力団員であることを忘れ、自分もいい返します。
「そんなん被害妄想ですよ。どうしたんですか、きょうは?いつも楽しくやっているじゃないですか、自分の歌もそれのひとつです。Nさんだって藤圭子の歌をよく口ずさむでしょ、自分がイエモン歌って責められるのはちがうと思います」
「俺をいい負かすつもりか、だったら腕力で勝負つけようじゃねぇか!」
「えぇ、やってやりますよ!」
Nさんの怒りが意味不明だったため、思わず喧嘩に乗ってしまいました。
20代前半に割と真面目に格闘技と向き合い、そこそこの自信はついたものの、そもそも喧嘩慣れしていないし…というか、あれ自分、喧嘩とかしたことあったんだっけか??????????
(万引きGメンとして、やたらめったら殴ったり蹴ったりする武闘派を気取るのは、この数年後になります)
ともに車を降り、その手前へ。
場所は多摩川の土手付近。
気持ちとしては・・・気持ち、気持ちだけね、巌流島。

対峙する、ふたり。
・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、こんな「間」はありませんでした、一瞬で決着がつきます。
Nさんのボディが自分のみぞおちにクリーンヒットし、秒で崩れ落ちました。
やべぇ、息が出来ない!
畑山さんの1.5倍ほどの威力を感じました。
これが、ホンモノのアレか。
これはもう、殺しの技術。
そうだよな、裏切者の腕を斬っているひとだもんな、
もっと、とんでもないことをしているにちがいない。じつは殺人だって経験済みなんじゃ、、、
とかなんとか、たぶん、30分ほどそのまま寝転がっていたかと。
Nさんはとっくに運転席に戻り、煙草を吸いながら自分を見ている。
怒りの表情ではなく、かといって笑顔でもありません。「無」の表情。
よろめきながらも立ち上がった自分は、ゆっくり助手席に戻ります。
このあとがまた、元暴力団員らしくて。
「このこと、部長に報告するのか」
「…」
「報告されたら、俺はクビだろう」
「…しないですよ、またNさん怒らしてしまうかもですけど、はっきりいって、Nさん怒った理由、よく分かんないし、その分かんないことを部長にどうやって説明しろっていうんですか」
「…悪かった。つい昔の癖が」
「…」
「償いをさせてもらえないか」
「つぐない?」
「今じゃなくってもいい。もしお前が、なにか困ったとき」
「困ったとき?」
「俺が力になる」
「力に……」
「厄介な奴に絡まれたり、トラブルがあったとき、すぐに俺に連絡してくれ」
「……」
「ソイツの動きを止めてやるよ」
「……」
・・・・・って、こええよ。
こんなに「強い」暴力を連想させることば、生まれてはじめて聞いたよ。
また腕を斬り落とすつもりなんかい!?
このことば、自分が職を辞すときにもいってくれたけれど、
Nさんには申し訳ないけれど、
辞めたその日に、Nさんの連絡先を削除したもんね、
嫌いになったんじゃない、むしろ好きなほうですが、
だから、好きだからこそ、なにかがあったときに頼ってしまいそうで、それを避けるための対策をしたというわけなのです。
正解でしょ?
ねぇみなさん、正解でしょう自分の行動は??
(了)
