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止まった時間-流山市包括施設管理業務-


全国初の公募型「包括」だった流山市

包括施設管理業務とは

包括施設管理業務の概要_筆者資料から

公共施設の包括施設管理業務は、庁舎の電気工作物・学校の浄化槽設備など従来は施設所管課ごと・設備ごとにバラバラに発注していた各種の設備等の保守点検業務(や清掃業務)等のいわゆる「ビルメンテナンス」に関する業務をまとめて1本で発注するものである。

包括施設管理業務は単なる委託業務ではなく、それを構築していく過程では行政が担っていた各種発注・伝票等の業務を民間事業者が行うことによりフルコストベースで発生する「マネジメントフィー」や、各施設所管課・企画・財政部門との連携、地元事業者との調整等、「変わること」への理解が求められる。
自治体の経営感覚を問う試金石にもなりうることから、「公共施設マネジメントの第一歩」と言われたり、あるいはきちんと愚直に構築した自治体の担当者が発する「包括ごとき」でもある。

流山市_全国初の包括=プロトタイプから全く進歩しない

筆者がかつて公務員時代に、全国で初めて包括管理業務を公募型で立ち上げたのは流山市だった。プロトタイプとしての第1期は、あらゆる制約の中で模索し、最初の「型」を作ったという意味では、それなりの価値があったと思う。
(流山市以前には、まんのう町でPFI法に基づくPFIの業務の一環で実施されたもの、我孫子市で提案制度により実施されたものの2件があった。)

だが2025年現在、その流山市が発出している第4期公募(2026年4月開始予定)の仕様を見たとき愕然とした。あの「最初の型=プロトタイプ」が、15年以上の時を経て、ほとんど更新されずに第4期にもなっているにも関わらず、そのまま再公募されているのだ。対象施設数(保有する施設の増加に伴い対象施設・金額は増加)、修繕業務のビルトイン、オプション条項、保守点検業務以外への展開、+αの提案等、どれをとっても進化の痕跡が全く見られない。かつて“プロトタイプを構築したまち”が、いまや“時間の止まったまち”になってしまっている。

包括施設管理業務の進化

一方、全国の自治体は進化を続けている。廿日市市では2025年度開始の包括において5年間の基本契約に加え、モニタリングで良好だった場合に3年分の追加契約を可能とするオプション条項を組み込んでいる。草津市では修繕業務に加え10,000千円/件(21件/年)の工事も包括対象としている。
荒尾市では市営住宅の管理業務も包括に内包することで、職員の負担軽減と公共施設のビルメンテナンスの質の向上に繋げている。
そして、小規模な自治体である久米島町でもアウトソーシング特化型の包括を1,300千円/年の修繕業務も内包した形であっという間に事業化している。
進化とは、“やる意思”と“学ぶ姿勢”の両方があって初めて可能になる。

流山市の「時間が止まっているのか」を考える

ではなぜ、流山市だけが「時間軸の止まった仕様」を、堂々と“現役仕様”として公表し、そのままプロトタイプで発注してしまうのか。なぜ“最初の型”に安住し、世の中の進化に目を向けることを怠ってしまったのか。それは、制度疲労や人員不足といった表層的理由だけでは説明できない、“自治体としての感度”や“経営としてのアップデート姿勢”に根ざす問題である。
流山市のこの問題については従来型手法によりキャッシュアウト前提で新築されたみりんミュージアムにも通じるものがあるだろう。

このnoteでは、全国で進化を続ける包括管理の軌跡を改めて振り返るとともに、流山市の公募仕様がいかに“止まっているか”を構造的に示し、その再構築のためのプロトコルを提示することで、流山市にもぜひ「世の中の潮流」へ戻ってくるだけでなく、改めて時代を牽引するプロジェクトを構築していってほしい。

包括施設管理業務の目的と進化経路

包括施設管理業務は、単なる「外注化」や「効率化施策」ではない。
従来の施設個別管理・縦割り管理の限界を越えて、自治体の施設群全体を「経営対象」として捉え直すための基本的な構造的転換である。すなわち、施設を「保有する」「直す」「使わせる」という断片業務から、施設全体のライフサイクルを横断的・継続的に最適化するための“まちのOS”を整備する取り組みなのだ。
同時に、行政の職員はそもそも「ビルメンテナンス」をするために公務員になったわけではない。行政の職員でしかできない「このまちをどうするか」考え、それを執行機関として実施していくことが本来業務である。
現在の猛烈に忙しく、コンプライアンスや形式上の働き方改革などの外的な要因も考えれば、余計に「本来業務に特化できる時間」を確保することが重要である。

起源_点検・清掃の仕様書見直し・束ねから始まった構造整理

包括管理の起源は、建築物の点検・清掃といったビルメンテナンスに関するルーティン業務をまとめて発注するコスト合理化にある。2000年代後半、公共施設の維持管理業務において“縦割りでの発注・履行”の非効率性が顕在化し、業務の質及び施設横断的に業務を束ねる試みが始まった。有名なのは青森県庁で庁内ベンチャー制度を用いて実施された清掃業務の委託仕様書の見直しである。こちらはそれぞれの施設の個別の仕様書見直しにとどまり、最初は「金額を下げるため」の目的だったが、「共通仕様」を作ることができるのだったら「まとめて発注すれば良いのでは?」の考え方が潜在的に生み出されたのではないだろうか。

そして、前述のようにまんのう町・我孫子市の事例が生まれ、その後に流山市で公募型の包括が生まれることとなった。
(まんのう町・我孫子市・流山市に関わった「包括の生みの親」の本来の意図は、冒頭のnoteにも記したとおり、サンデースプリングス市のようなコアコンピタンス経営を日本でも行っていく「第一歩」として、まずは実施しやすいハコモノ包括が志向されたものである。)

修繕のビルトイン化

次に現れた進化は、修繕業務のビルトインである。従来、修繕は個別発注、個別予算執行が原則だったが、業務内に100千円/件未満かつ総額21,000千円/年以内(廿日市市_第1期)、500千円未満/件(鴻巣市)、1,300千円/件未満(明石市_第1期)、5,000千円/件未満(明石市_第2期)といった上限付きで組み込む動きが広がった。
現在では1,300千円/件未満(2,000千円/件未満に今後改正)を業務範囲に組み込むことがデフォルトになっている。
このことによって、日常的な小規模修繕の対応スピードを劇的に改善させ、施設の“場当たり対応”を防ぐ効果を発揮するだけでなく、巡回点検時での修繕も可能になり人件費が圧倒的に削減されることから、同じ予算額でも修繕箇所数が増加するメリットも得られている。
この段階で包括は単なる設備の点検・清掃ではなく「施設の健全性維持」へと進化する。(そもそもの公共施設の劣化が相当に進行しており、既存の修繕予算も非常に限定されていることから、予防保全と呼ぶには遠く及ばない。)
修繕業務が包括に内包されることにより、1件あたりの包括の契約金額も拡大し、受注者にとっても質の向上につなげることができるようになっただけでなく、金額もビジネスベースでメリットが発生するようになった。同時に、発注側である行政にもマネジメント能力が求められるようになった。

指定管理施設、市営住宅等のビルトイン

佐倉市(第1期)では15の小規模な施設を中心に指定管理施設をビルトインすることで、地元NPOなどが包括に参入しやすくなるだけでなく、公共施設マネジメントの面では施設状況を一元的に管理できるメリットが生まれた。また、前述の荒尾市のように市営住宅等を含むことや、福津市のように様々なソフト系の業務もビルトインするなど、管理対象の「種類と性格」の垣根すら越える動きが出てきている。これにより、施設群全体の運営最適化だけでなく、職員の事務負担軽減が進むと同時に、モニタリング体制を充実することの大切さも見えてきた。

小規模自治体での導入、アウトソーシング特化型

そして今、包括管理はスケールメリットが期待できる「大都市・中核市だけの話」ではなくなっている。小規模自治体でも対象施設や業務範囲を選定・調整することで導入できるモデルが前述の久米島町のように全国各地で生まれている。

現在、支援させていただいている川南町のように、まずは自分たちで望むことを丁寧に整理し、どうやったら民間事業者の市場性・事業採算性とマッチングするのかサウンディングから踏み出す自治体が増えている。

包括は15年間で確実に進化・オーダーメイド化

包括施設管理は「各種保守点検業務の包括発注」から、「修繕内包型」、さらには「多様な業務を内包することによるコアコンピタンス経営の一端を担うもの」へと進化してきた。
その構造進化を認識せず、プロトタイプのまま15年同じ仕様で発注することの「経営感覚の欠如」「世の中の潮流を学ばないこと」によって機会損失している部分は想像以上に大きい。

自分たちらしい進化

湖西市

湖西市の包括施設管理業務(第1期)は、自分が策定プロセスを支援させていただいた事例である。短絡的な総量縮減を目指した「ザ・公共施設マネジメント」では何も手に入らないし、時間もかかることから「今できること」として包括の導入を行うこととなった。
この策定プロセスでは、これまで予算が厳しいなかでも修繕予算を確保してきた課と蔑ろにしてきた課での衝突などが発生した結果、「500千円/件未満の修繕を包括に組み込み、一部の修繕費は各課に残す」玉虫色の決着をつけることとなった。
これも、「どこで落とせるか」「どこだったら落ちるか」を突き詰めた結果、現実的な落とし所を見つけたものである。

明石市

明石市(第1期)は、全国で初めて1,300千円/件未満の修繕を包括に内包した事例である。この経緯等は拙著「PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本」等でも詳しく紹介しているので割愛するが、この第1期では庁舎等は包括に含まれていない。
その後、第2期の公募にあたっては修繕の範囲を5,000千円/年未満まで拡張するとともに、庁舎等のこれまで包含できなかった施設も対象施設に取り込んでいる。
また、予算は一本化して計上するものの決算統計を事業別予算に分解できるExcelシートの作成などの工夫も行なっている。

射水市

射水市では、包括の導入にあたって先行事例を徹底的に分析し、自分たちのやりたいこと・できることと付き合わせながら丁寧に構築をしていった。
また、この包括では+αの提案として「包括を契機に公共施設マネジメントを進めるための提案」を募集することで、まちみらいの業務委託も同時に手に入れている。

これだけでなく、2024年元旦に発生した能登地震では、上記noteにも記したとおり当時、北陸地方で唯一包括を実施していたことから、受託者である日本管財株式会社が延べ60名/18日間のスタッフを派遣し、公共施設の応急点検・対応を一括して行うことで早期の公共施設の再開に漕ぎ着けている。

廿日市市

廿日市市(第1期)は、小破修繕(100千円/件未満)を全国ではじめて包括に取り込んだ事例であるが、その後も宮島のインフラ系施設の包括、雨水ポンプ場の包括なども実施していった。これらもお手伝いさせていただいたが、当たり前だが「敢えて集まる」地獄の缶詰作業でこれらも自分たちらしく作成していった。
そして、現在の第3期では現在進行形の包括の管理水準等の課題を解決するためにモニタリングの導入とインセンティブとしての3年間のオプション契約をビルトインすることとなった。更に実態に応じて随時対象施設・設備を拡張可能な形とするとともに、債務負担行為の設計にも工夫し、非常に柔軟な運用ができる形に「自ら」ブラッシュアップしている。

流山市

流山市(第4期)の公募は、形式上は「公募型プロポーザル」であるが、実質的には「仕様完全固定+価格競争」の様相を呈しており、民間側からの創意工夫の余地は非常に小さなものになっている。
第1期では全国初の公募であったこと・まだサウンディングの文化が根付いていなかったことから大枠だけで公募し、事業の詳細は優先交渉権者との協議によって構築するデザインビルド方式を採用していたが、第4期ではデザインビルドの概念すら無くなってしまっている。

プロトタイプのまま公募を出すことのリスク

進化を止めたままプロトタイプで公募をかけてしまうことがなぜ「もったいない」のか。目の前にある仕事、今日までやっていたことをそのまま明日に繋げば良い、表面上うまくいっている(誰からも反対がない)のだから無理に触る必要はないといった前例踏襲・事勿れといったザ・行政の体質が見えてしまうからだ。
そして、全国には流山市が次はどのようなことを工夫するのだろう?新しい世界を見せてくれるのではないか?といった期待感も少なからずあるはずだ。こうした人たちに与える「ガッカリ感」は半端ない。

とりあえず表面上はやれているからと「日々の努力」を怠る(≒時間軸を自ら止める)ことによって、日々試行錯誤しながらどこかに糸口を見出そうとしている世の中の潮流から取り残されてしまう。そして、世の中がどのように動いているかすら見えなくなってしまう(見ようとしていない?興味がない?)。

財務的リスク_本来得られるはずの合理化効果の逸失

修繕業務の非内包は、個別発注による事務手続きの煩雑さとそれに伴うコスト、現場でのエラー発見から修繕までのライムラグ(によるリスク)、同時多発的な業者調整による非効率さ等を温存し、結果として財政支出の肥大化を招く。
また、修繕対応履歴が(包括に内包していればデータベースで一元管理されるものの)個別案件ごとに散在するため、施設のLCCを俯瞰することもできず、計画修繕化や予防保全への転換への支障になってくる。

つまり、包括が本来有していたコスト平準化・業務効率化・予見性向上・リスクヘッジといった財政合理性の果実を、丸ごと取り逃がしている。

組織的リスク_施設所管課の負担が残置、俯瞰的な視点の欠落

設備の保守点検点検・清掃(←清掃は駅の自由通路のみ対象で庁舎等が除外)のみの委託では、逆に修繕・判断・調整といった判断要素を全て施設所管課の職員が背負う構造が維持されてしまう。これは「表面上は外注しているが、肝心な意思決定が全て役所内に(バラバラに)残る」構造であり、実際には業務負荷の軽減効果が限定的になってしまう。
その結果、各施設所管課の職員の業務に修繕関係の発注・対応・伝票や突発対応が残ることになり、本来やるべき業務へのかける時間の確保や全ての施設を俯瞰的・同一の視点で見た判断が困難になる。これは公共施設マネジメントを進めていくためだけでなく、俯瞰的な視点の確保にもつながっていかない。
また、各施設の現場では相変わらず教頭先生がペンキを塗ったりといった作業が発生し、子どもたちに向き合う時間も想定的に減少してしまう。

政治的リスク_住民・議会からの信頼喪失

行政内部では「慣れているから」「大きな問題は起きていないから」という論理で旧仕様を温存することが多いが、これは住民や議会から見れば“怠慢”と捉えられるリスクがある。特に、他自治体の進化系事例が広く流通する現代において、「なぜ流山市は変わらないのか」「15年前と同じことをなぜまだやっているのか」と問われたときに、説明できる論理が存在しない。
他の自治体担当者や議会、市民等にも「時が止まっていること」を堂々と口にすることはできないはずだ。結果的に後ろめたさから、余計に殻に閉じこもってしまう負のスパイラルに陥る。

ザ・ハコモノ事業としてキャッシュアウト前提、従来型で整備してしまったみりんミュージアムに代表されるような「世の中の潮流とズレた意思決定・短絡的な事業」が議会・市民から批判される一方、包括を事例としてそれ以外も一蓮托生の“勉強していない自治体”というレッテルを貼られるリスクがある。

公共施設の包括管理業務委託は、前述のとおり公共施設マネジメントの第一歩となりうるもので単なる業務委託ではなく、行政の姿勢が現れやすいものだ。「包括ごとき」の時間軸すら止まってしまうことは、公共施設マネジメントはもちろん、世の中の潮流にも目を背け、進化を放棄したと取られかねない。

何が必要か

では、流山市は何を見直すべきか。
「止まった仕様」をどう再構築するか、その基本設計方針を考えていく。

修繕業務のビルトイン_まずは金額問わず

まず最優先すべきは、小破修繕の包括内包である。対象金額は恥を忍んで廿日市市(第1期)の100千円/件未満でも良いし、湖西市(第1期)の500千円/件未満かつ所管課には少し予算を残す形でも良い。
まずは、「小破修繕を組み込むことでどのようなメリットがあるのか」を先行自治体から直接学び、「どうやったら包括に内包できるか」を真剣に考えていくことだろう。次の5年を待たずとも、契約変更で盛り込むことも十分できるだろうし、別事業として計上して包括の受託者と随意契約することもできるはずだ。

プロトタイプから脱し、「現在の包括のデフォルト」に追いつくためには小破修繕の内包は必須である。

対象施設・業務の再構成_指定管理施設・清掃業務のビルトイン

現状の包括対象施設は直営の施設に限定されており、指定管理の施設は対象にされていない。地元のNPO等が「運営」については高い関心を持つ小規模な学童ルーム等は施設の保守管理を包括で引き取ることによって行政・指定管理者・利用者のいずれにもメリットが生じることは、この10年間で証明されている。
また、多くのマンパワーが必要となる清掃業務についても包括に組み込むことで大きなコストメリットが生じるだけでなく、施設間で清掃員を柔軟に動かすことで効率化・質の向上も期待できる。
(流山市の第1期の公募では「事業者への配慮」と「政治判断」で清掃業務を除外することとなったが、もうそこから15年が経過し、包括が一般化している状況では改めて検討できるはずだ。)
その先に福津市・荒尾市のように設備の保守点検以外の業務も包括に内包していくことで、コアコンピタンス経営に近づいていくことができるはずだ。

流山市では「民間にできることは民間に」の方針に基づき、民間で提供できるサービスは可能な限り民間からの調達を徹底することで保有する施設総量を抑制しつつ、保有する施設を財産と捉え戦略的な施設経営を行うファシリティマネジメントを推進し、維持管理費の低減・歳入確保などを中心とした各種施策を実施しているが、前述の財政的な乖離を埋めつつ、公共不動産を自治体経営やまちづくりに戦略的に活用していくためには、より一層の本格的な資産経営が求められる。

流山市_公共施設等総合管理計画

流山市は「民間にできるものは民間に」を掲げているのだから、「包括ごとき」もっとクリエイティブに進化させることができるはずだ。

提案競争の強化_プロポーザル項目の進化と点数配分

流山市(第4期)の公募では評価項目・採点表・審査員等が一切公表されておらず、民間事業者にとって「流山市が何を期待しているのか」全く読み取ることができない。同時に「勝つための企画提案書」を作成することも難しいため、これでは応募リスクを背負ってまで手を上げることはしないだろう。
つまり、このような形に留まっている限り、現行業者がそのまま予定調和的に手を挙げるしか期待できないため、大した競争もなく「昨日と同じ今日、明日」のレベルにしかなり得ない。
「流山市として何を期待するのか」を明確にして評価項目・配点・審査員等をすぐに公表することが必要である。(価格点の割合が低いことは大前提)

契約期間とインセンティブ

短期契約で固定仕様にしてしまうと、事業者は改善提案や長期的工夫がしにくいだけでなく、「同じことを粛々と繰り返す」ことにしかならない。廿日市市(第3期)のように5年の契約期間にモニタリング結果に基づく(3年程度の)オプション契約を組み込むことで、事業者の挑戦意欲と自治体側の柔軟性を両立させることも可能になるはずだ。

川南町からの示唆

包括は「大きな自治体だけがやるもの」ではない。財政規模、施設数、職員数、あらゆる面で制約のある小規模自治体でも前述の久米島町のように導入のメリットは大きい。
現在支援させていただいている川南町では、本年度から本格的に包括の導入検討をはじめ早速サウンディングに取り掛かっている。ここから得られる示唆は流山市はもとより、全国の自治体へも役に立つことがあるだろう。

目的から逆算した制度設計

川南町では、サウンディングにおいて「一般行政職員による公共施設管理をサポートしていただくこと」を主目的に掲げている。職員数が限られており、十分な施設管理にマンパワーを投じることが困難であることから、自分たちの実情をベースにした現実的な選択肢をとっている。
現実を見ながら、より質を高めていくために「自分たちらしく」業務範囲・内容等を市場と合わせて精査していくことは不可避のプロセスである。

サウンディングによる共創的設計プロセス

川南町では、今後小規模な自治体の包括でトレンドになるであろう「アウトソーシング特化型」を目指しており、業務の内容等はシンプルだが、だからと言っていきなり公募に踏み切るのではなく、サウンディング調査を通じて、民間事業者側の視点・懸念・期待を吸い上げながら公募関連資料に反映しようとしている。
こうした真摯な姿勢こそが極めて有効なプロセスである。
民間事業者から見ても、これから大きな市場になりうる「小規模自治体での包括」をどのように組み込むのか、実際に検討している自治体と真摯に対話できることは貴重な機会にもなる。
このようなPPP/PFIの経験に乏しい自治体であっても、そのことを卑下するのではなく、真摯に対話による「相互理解のプロセス」を経ることこそ、謙虚に学ぶ姿勢の基礎となるものである。

改めて流山市

このように見てくると、流山市(第4期)の包括は「プロトタイプのまま時が止まった」ことを象徴する事例であり、他自治体がプロトタイプをベースに「自分たちらしく」包括を育て、拡張し、戦略化してきた過程とリンクしていないことが明白である。
全国初のチャレンジ精神を有していた第1期の「プロトタイプ」に、15年という時を加えただけの“化石”に近い。もはや「やっていること」に価値はない。「どう進化させているか」が問われている。

全国で進化を続ける公共施設の包括管理業務。金額を増やし、対象を広げ、成果を問う契約へと姿を変えてきた。制度の骨組みは同じでも、その設計に宿る意思と哲学が、包括そのものの質だけでなく、まちの姿勢を分けている。
川南町のような小さくこうした経験知をほとんど持たない自治体であっても、現場感覚と未来への構想をもって包括を自分たちらしくやろうともがいている。

今の時代に求められているのは、「やらされてやる」ことではない。
公共施設マネジメントとは、市役所のための業務ではない。住民のために、まちの未来のためにこそある。包括一つとっても、その内容はその自治体の意志を翻訳した言語である。更新しない仕様は、更新されない未来を象徴してしまう。

流山市は全国の事例から「真摯に学ぶ」ことを改めて謙虚に行うことで、再び“最初の一歩”を踏み出すことができる。もはや残念ながら止まった15年の時間で、先進自治体ではなくなってしまった(←当時も自分は一度も「先進自治体」と思ったことも表現したこともない)、先行自治体ではあった歴史が残っているだけだ。

6年連続人口増加率日本一、グリーンチェーン戦略、「母になるなら流山市」のキャッチフレーズ、駅前保育送迎ステーション。。。数々の「当時の政策」は確かに先鋭的であったし、相当にチャレンジングなものだったと思う。

そうした「輝かしさ」をプライドとして持つことは決して悪いことではないと思うが、改めて「あらゆる分野」で世の中を知る、謙虚に自分たちの立ち位置を受け止める、真摯に勉強をしながら試行錯誤して再構築する、それこそが包括に限らず流山市に求められていることだと思う。

真希波・マリ・イラストリアス@カラー

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