見出し画像

ポイントカードを持ち歩かない時代に、会員制度をどう再設計するか

こんにちは。リテールアプリ共創部で事業企画を担当しているかめだです。


財布の中に、何枚のカードが入っていますか

「会員カードはお持ちですか?」

この一言に、何度ため息をついたでしょうか。財布をごそごそ探して「今日は持ってきていなくて…」という会話が、全国のアパレル店舗で毎日繰り返されています。

多くのアパレルチェーン(売上100億円以上の企業を中心に)のDX推進担当やマーケティング責任者の方から、「会員証の提示率がどうしても上がらない」「せっかく会員登録してもらっても、次回来店時に活かせていない」という声を聞きます。

これは会員制度の問題ではなく、会員制度の「届け方」の問題です。

カード持参率が低下し続ける理由

財布がスリム化しています。交通系ICカードはスマートフォンに、クレジットカードはPayPayやiDに移行が進んでいます。物理的に持ち歩くものの総量が減っている時代に、アパレルのポイントカードだけが例外でいられるわけがありません。

カードを財布に入れておかない理由は「忘れた」ではなく、「持ち歩く必要を感じなくなっている」という状況が実態に近い。以下のキャッシュレス化の進行がその背景にあります。

加えて、多くのアパレルチェーンでは「来店頻度の高いロイヤル顧客ほどカードを持参する」傾向があります。つまり、カード提示がゼロの顧客のなかに、実は購買意欲の高い「準ロイヤル顧客」が相当数いるということです。

見えない機会損失

カード持参率の低下が引き起こす問題は、ポイント付与の漏れだけではありません。

会員証を提示しない来店では購買データが蓄積されません。セールやキャンペーンの案内は全顧客への一斉配信に偏り、休眠会員の個別フォローもできません。店頭スタッフが顧客の購買履歴を参照できず、接客の精度が上がらない状態が続きます。

会員登録は増えているのに、LTVが伸び悩む。この「データの空白」が、その構造的な原因の一つです。

「アプリを作れば解決する」は本当か

この課題への対処として、ネイティブアプリの開発に取り組んだチェーンは多くあります。ただ、アプリのダウンロード率が想定を大きく下回るケースが続出しているのも事実です。

「アプリを入れてください」とレジ前で案内しても、その場でDLしてもらえるのはごく一部。インストールされても、数回の利用で削除されることも珍しくありません。顧客にとって、新しいアプリをスマートフォンに追加することのハードルは、私たちが考えるより高い。

では、どこに活路があるのか。

LINE上に会員証を置くという選択肢

日本でのLINEの普及率は90%を超えています。多くの顧客がすでに毎日使っているアプリの中に、会員証の機能を埋め込む。これがLINEミニアプリを活用したデジタル会員証の考え方です。

来店した顧客が店頭のQRコードをスマートフォンで読み取るだけで、会員証が発行される。アプリのダウンロードは不要です。新たにIDを作る手間もありません。LINEアカウントと紐付けて5秒で完結します。

アパレル各社のLINE公式アカウントには、すでに数百万単位の友だちが集まっています。

既存の紙カードや別システムで管理していた会員情報とも連携できるため、「一部の顧客はカード、別の顧客はLINE」という並行運用期間を設けながら段階的に移行することも可能です。

PAL(パル)のケース

LINEミニアプリによるデジタル会員証を導入したアパレル企業の中で、国内で特に規模の大きい事例として、株式会社パル(3COINS、Lattice、Discoatなど約900店舗を展開)があります。

パルが直面していた課題は、本稿で述べてきた内容と重なります。既存ネイティブアプリのダウンロード率の低迷と、レジ前での案内に費やすスタッフのコストです。

LINEミニアプリデジタル会員証の導入後の成果として確認されているのは、会員数が約3倍に増加したこと、サービス開始から1ヶ月で友だち数が10万人増加したこと、そして会員登録にかかる時間が5秒に短縮されたことです(クラスメソッド支援事例)。

「レジ前で『アプリ入れてください』がなくなり、お客様もスタッフもストレスフリーになった」という現場スタッフの声が、この施策の本質を端的に示しています。効率化の前に、体験の改善がある。

自社に導入する前に確認しておきたいこと

デジタル会員証への移行を検討する際、以下の点を事前に整理しておくことをおすすめします。

1. 既存の会員データはどこにあるか
基幹システムやポイント管理システムとの連携が前提になります。データの所在と形式を確認することが出発点です。

2. 店舗スタッフへのオペレーション変更をどう設計するか
「会員証を見せてください」という声かけが変わるわけではありませんが、QRコードの案内場所やPOP設置について事前に設計が必要です。

3. LINE公式アカウントと会員証の連携設計はできているか
デジタル会員証の本来の価値は、友だち追加と同時に会員データが紐づく点にあります。登録後のコミュニケーション設計を会員証と一体で考えることが重要です。

4. まだデジタル化に着手していないのであれば、今が動きやすいタイミングかもしれない
競合他社がデジタル会員証に移行してからでは、顧客側に「もうひとつ別のアプリ(会員証)」という認識が生まれてしまいます。デジタル空白の状態にある今こそ、顧客のLINE上にポジションを取りにいく好機です。

まとめにかえて

ポイントカードが機能していた時代のロジックで会員制度を維持し続けることの限界は、多くの企業が感じ始めています。顧客がすでに使っているインフラに乗ることが、会員化率を上げる現実的な道です。

会員制度の再設計に取り組みたいが何から始めればいいかわからない、という場合は、ぜひ一度お話しできればと考えています。


このシリーズの前回記事はこちらです。アパレル業界全体のデジタル化の構造課題を扱っています。


デジタル会員証の導入を検討している方へ

会員カードの持参率低下と、それによるデータ空白の課題。この現実は、多くのアパレルチェーンが同時に直面しています。来店顧客のLINE上に会員証を置く選択肢は、新たにアプリをダウンロードさせることなく、会員化率を引き上げるための現実的なソリューションです。

【デジタル会員証の詳細・導入事例をみる】
グロースパック for LINE デジタル会員証

【会員制度の再設計に関連する業界別資料】

  • アパレル業界向けDX活用ガイド
    whitepaper-apparel-2026.pdf
    本稿で扱う会員制度の課題を含む、アパレル業界全体のデジタル化戦略をまとめています。

  • 百貨店・商業施設向けDX活用ガイド
    whitepaper-department-2026.pdf
    複数テナントをまたいだ統一会員制度の設計・運用事例を解説しています。

  • EC業界向けDX活用ガイド
    whitepaper-ec-2026.pdf
    オンライン会員データの店舗とのシームレス統合について、実装ポイントを解説しています。

では、おつかめ!

いいなと思ったら応援しよう!