eギフト×新規顧客獲得 小売・飲食が「贈られた人」を会員にする方法
こんにちは。リテールアプリ共創部で事業企画を担当しているかめだです。
矢野経済研究所の調査によると、eギフト市場は2017年の909億円から2025年予測で4,057億円に達し、わずか8年で4倍超に膨らんでいます。
ソーシャルギフト市場全体では2.7兆円、ギフト市場全体では11兆3,510億円という規模感です。
この急成長の波は、小売・飲食のマーケティング担当にとって「ギフトを贈られた人をどう顧客にするか」という新しい論点を突きつけています。今回は、eギフト市場の構造変化と、それを自社の顧客獲得に活かす方法について書いていきます。
LINEギフト4倍成長 カジュアルからフォーマルへ市場構造が変わった
eギフトと聞くと、誕生日にLINEでスタバのチケットを贈る、あのカジュアルなイメージが浮かぶかもしれません。実際、20代の約4人に1人がeギフトの利用経験があり、満足度は8割超(とても満足31.5%、まあまあ満足50.5%)。
若い世代にとっては「住所を知らなくても贈れる」手軽さが当たり前になっています。
ところが、ここに来て地殻変動が起きています。高島屋が2023年にソーシャルギフトに参入し、のしを付けて贈れるサービスを提供しています。
つまり、お中元やお歳暮のようなフォーマルギフトまでデジタルで贈る時代に突入しているということです。友人へのちょっとしたお礼だけでなく、取引先への贈答品までカバーし始めた。「相手の住所を知らないから贈れない」という制約が外れたことで、贈答シーン自体が増えている。市場の「天井」が一段上がったわけです。

LINEギフトの数字がこの流れを裏付けています。累計ユーザー3,500万人超、年間利用者約1,900万人、流通総額は前年比29%増。
母の日の流通額は前年比60%増、父の日は68%増と、イベントギフトでの利用が加速しています。
出店ショップ約1,500店舗、取扱商品約40万点。消費者は「LINEで贈る」という行動にすでに慣れているのです。
「贈られた人が消える」 口コミが新規獲得につながらない構造的課題
ここで、小売・飲食の担当者の立場から考えてみます。
たとえば、あなたの会社のロイヤル顧客Aさんが、友人Bさんに自社商品をギフトとして贈ったとします。従来のギフトでは何が起きるか。商品が届いて、Bさんが「おいしいな」「いいものだな」と感じる。でも、そこで終わりです。Bさんは会員登録もしないし、連絡先もわからない。次にBさんが自分で買いに来るかどうかは、完全に偶然任せ。
これは、料理を振る舞ったのに名刺交換しなかった営業パーソンのようなものです。せっかく相手が「おいしい」と感じてくれたのに、次の接点がない。
従来のギフトには3つの構造的な限界がありました。配送コストがかかること、受取人の住所が必要なこと、そして受取人のデータがまったく取れないこと。とりわけ3番目が深刻で、「ロイヤル顧客の紹介力」という資産を完全に取りこぼしていたのです。
ギフトの本質は「信頼する人からの推薦」です。広告よりもはるかに信頼性が高い。友人から「ここのケーキ、おいしいよ」と手渡されたときの信頼感を、Web広告のバナーで再現するのは不可能です。なのに、その推薦を受けた人を顧客として迎え入れる仕組みがなかった。個人的に、ここが小売・飲食にとって最も大きな機会損失だったと思います。
ソーシャルギフトが「紹介→会員化」チャネルに変わる瞬間
この構造的な課題に対して、eギフトのテクノロジーが解決策を提示し始めています。
たとえばグロースパック for LINEのギフト機能では、自社商品をURLひとつでデジタルチケット化できます。贈る側はLINEやSNSのDMでそのURLを送るだけ。配送は不要です。
ただ、配送がなくなること自体は話の半分でしかありません。コスト削減だけならAmazonギフト券でも済む話です。
受取人がそのURLを開くと、LINEログインを通じて会員登録が促されます。つまり「誰が受け取ったか」がデータとして可視化される。ここが決定的に違うポイントです。先ほどの例で言えば、Bさんが商品を受け取った瞬間に、あなたの会社の会員になっている。次のクーポン配信、セグメント配信、すべての施策の対象に入るということです。
もう少し噛み砕くと、友人の家でごちそうになった帰り際に「うちの店のLINE登録しておきませんか?次回使えるクーポンもありますよ」と自然に声をかけられるようなイメージでしょうか。おいしかった直後だから、登録する心理的ハードルが極めて低い。
外部ギフトプラットフォームとの違いも整理しておきます。外部プラットフォーム経由の場合、受取人データの活用範囲はプラットフォームの仕様に依存するため、自社の顧客管理システムとの統合が難しいケースが多い。自社のギフト基盤を持つ場合、自社ブランドのUIで受取体験を提供し、顧客データも自社で保有できます。ロイヤル顧客→友人→新規会員という紹介チャネルを、自社の顧客管理基盤の中に組み込めるわけです。

飲食・小売・体験型サービス、それぞれのインパクト
この仕組みが業界別にどう効くかを見ていきます。
飲食チェーンの場合、ドリンクチケットやデザートチケットのデジタル化が真っ先に思い浮かびます。紙のギフト券は印刷・在庫管理・有効期限管理にコストがかかるうえ、誰が使ったかのデータが残りません。デジタルチケットなら管理コストはほぼゼロ。さらに、チケットを受け取った人がLINE会員になれば、その後の来店促進施策にそのまま乗せられます。1杯のドリンクギフトが、新しい常連客の入り口になる可能性を秘めています。
小売では、お友達紹介キャンペーンの仕組み化に直結します。これまで紹介キャンペーンは「紹介者にポイント付与」が主流でしたが、紹介された側のフォローが手薄でした。ギフト機能を使えば、紹介者が商品サンプルやクーポンをギフトとして贈り、受取人が自動的に会員化される。SNSキャンペーンでも、当選者にURLを即時送付するだけで特典付与と会員登録が同時に完了します。
体験型サービスも面白い領域です。エステやスパの体験チケットをギフトとして贈れば、受取人はまず「体験」から入ります。体験の満足度が高ければ、そのまま自分でリピートする流れが自然にできる。体験型店舗が増えている今、「体験をギフトにする」という発想は広がりそうです。過去に「体験型店舗の顧客囲い込み|来店客をLTVに変えるLINE会員化の仕組み」でも書きましたが、来店体験を一回きりで終わらせない仕組みづくりが鍵になります。
明日から動くために 紹介の仕組み化2ステップ
eギフト市場は成長の途中にあり、LINEギフトは5年間で毎年前年比130%以上の成長を目標に掲げています。
この波に乗るために、まず取り組めることは2つあると思います。
ひとつは、自社商品の中で「ギフト化できるもの」の棚卸しです。飲食ならドリンクやデザート、小売なら人気商品のミニサイズやお試しセット、サービス業なら体験チケット。配送不要でデジタル完結できるものから始めるのが現実的です。最初から全商品をギフト対応にする必要はなく、まず1つか2つ、人気商品で試してみるだけで十分です。
もうひとつは、既存のロイヤル顧客の「紹介力」を活かせているかの振り返り。あなたの会社のファンは、すでに友人や家族に自社の商品を薦めてくれているはずです。その行動を仕組みとして受け止め、紹介された人を顧客として迎え入れる導線があるかどうか。なければ、せっかくの口コミが空振りしている状態です。
「アパレルEC・広告費に頼らない集客設計——D2C移行後に売上を維持する3つの仕組み」で触れた「広告依存からの脱却」とも通じる話ですが、ギフト経由の新規獲得は広告費ゼロの顧客獲得チャネルになり得ます。1人の新規顧客を獲得するコストが上がり続ける中で、ロイヤル顧客の信頼を新規獲得に変換できる仕組みは検討する価値があると思います。
では、おつかめ!

