カリン様からの贈り物(前編)
はじめに
この話は私が小学生時代、ファミコンゲームを通して同級生男子と交流した思い出を綴ったものです。昭和時代の風味もちょっぴり味わえます。
あの頃の私はいつもエゴに振り回されて苦しいばかりで黒歴史だと思ってたけど、周りの人にたくさん助けてもらっていたなあと改めて実感しました。
みなさんの黒歴史も一緒に昇華され成仏しますように、南無三(合掌)
転校生、あらわる!
小学生の頃、私のクラスにノンちゃんという男の子が転校してきた。
名前は佐々延暉(ささのぶあきら)、あだ名がノンちゃん。なんだか戦国武将のような名前だと思った。
のんちゃんはまだその頃には第二次性徴期前で、私も含めたいていの女子よりも背が小さくて、目がドラゴンボールに出てくるカリン塔のカリン様に似ていた。
なんだかちょっと猫背だし、喋り方もちょっとおどけててハイスクール奇面組の一同れい君に似てたし(『れいくんブツじょぉー!』みたいな)
でも他の男子みたいに乱暴したりしないし、
時々『ふにゅッ』みたいな声で鳴くのでなんだか色々と可愛かった。
ノンちゃんは、私の住んでいる地域の中でもいわゆるお金持ち世帯が住むような、新築の良いマンションに引っ越してきていた。
お友達のミサキちゃんが同じマンションに住んでたので、間取りはだいたいわかっていた(めざとい小学生である)
ある日、担任の先生がうっかり口を滑らせたところによると『佐々くんのおうちは、やんごとなき方たちに関係したお仕事をしてるのよねー?』らしかった。
今でもそのような仕事を正式になんと呼ぶのかはっきりとは分からないのだが、クラスの男子もみんな口々に驚きの声を上げ『のんちゃんスゲー!』と言っていた。
先生に親の職業をバラされたのんちゃんは、困ったような顔で苦笑いをしていた。今より個人情報なんてずっとゆるい時代だったのだ。
のんちゃんはお金持ちだけじゃない、まさしくお家柄もええとこの子だったのである。(今思えば名前の漢字がカッコいいのも納得である)
のんちゃんとのエピソードは、私の数少ないゲームやり込み話とリンクしている。
私は子供時代から既に人生に疲れていた今思うとエネルギーに敏感すぎたのだ。
何かにハマる、入り込むという事は楽しい一方、かなりのエネルギーを消費するんである。
お話の中に入り込んだり、ゲームにハマったり、それらは厳密にいうと『波長(バイブレーション)を合わせる』ということが必要で、これが時にはとっても疲れるのだ。
そして自分でゲームするより、誰か上手い人の技を横から「エーヤン、エーヤン!」と見てる方が楽しかったのだ。
そんな私がハマったゲームがいくつかある。
ファミコンジャンプ、水戸黄門、サラダの国のトマト姫、そしてチャイルズクエストだ。そう、ファン垂涎のゲームである。
それらのファミコンソフトは老後を迎えたら必ずやり込もうと心に決め、大切にゲオの袋に入れ実家の収納ボックスの中にしまってある。
のんちゃんとの絡みはここからだ。
寄り目のゴリラで鼻から牛乳事件

時は1980年代。
嘉門達夫の替え歌が爆発的ヒットをして、学校では子供たちが休み時間などに、昨日テレビで見たネタをわちゃわちゃと、楽しく真似していた。
私は3歳上の姉、ウニちゃんが面白番長であることや周りの男子に影響されて、いつも笑いをとるタイプだった。
「笑いを取れないものは生き残れない」
小学生ながらも、そこにはいつもお笑いサバイバルな強迫観念が渦巻いていた。
その頃の私の得意技は『寄り目のゴリラ』という顔芸だった。読んで字の如く『ゴリラ顔で寄り目をする』のである。
小学生が考えそうな安直なネーミング通りなのだが、なぜか男女ともにウケが良く、さらにはクラスで一番のひょうきんもの男子、ケロちゃんからも爆笑を取ったテッパンの持ちネタだった。
『まっこちゃん、あれやって!あれやって!』とせがまれたが、本当に破壊力が高く危険なので頻繁には披露しないようにしていた。
が、ある日の給食の時間中、私はその秘密兵器をノンちゃんに披露することにしたのだ。(ノンちゃんが何にでも笑ってくれることを心憎からず思っていたからだろう)
たまたまノンちゃんが牛乳を口に含んでいた時に、私は顔芸『寄り目のゴリラ』をお見舞いした。(ゴクリ…)
そう、確かに手応えがあった。班のみんなもノンちゃんも笑ってくれた。
しかしその破壊力は凄まじく、耐えきれず爆笑と共にノンちゃんは鼻から牛乳を吹き出した。
そう、まさに私たちはあの大ヒットギャグ『チャラリーン!鼻から牛乳〜』の現実での目撃者となったのである。
(ちなみに細かいことを言うと、私の地域では『ティラリーン、鼻から牛乳〜』がメジャーだったが)
その後は吹き出した牛乳にクラスのみんなが阿鼻叫喚したり、飛び散った牛乳の後始末だったり、私が先生に怒られたり、プチパニックとなった記憶である。
しかし鼻から牛乳を吹き出しても特にノンちゃんがいじめられるなどとゆうことはなく、それはひとえに班のメンバーの仲が良かったことと、そしてノンちゃんがそのお育ちの良さからなのか、誰にでも優しくて周りから好かれていたからだと思う。
そしてその日を境に、持ちネタ『寄り目のゴリラ』はますますお蔵入りとなったのである。
ドラクエマスター、ノンちゃん

ノンちゃんはけっこう頻繁に学校を休むことがあった。
体が弱いのかな?と心配になったが、ある日の授業中先生に
『この人はね、ドラクエばっかりやってて学校に来ないっちゅーね、もう!』と、またもや出席率の悪さと寝不足気味の原因をバラされていた。
ノンちゃんは気まずそうな顔をしていた。
(だからいつも眠そうなカリン様なのかあ…)
私は妙に納得した。
彼は小学生ながら、ドラクエの発売日に学校を休んで『発売から最短〇〇時間でクリアした』と記録を目指すようなお子様だったのだ。(今で言うとゲーマーになるのか?)
その頃ドラゴンクエストの大ブームは当時社会現象になり、大人も子供も発売日前に徹夜の行列してでもゲームを欲しがっていた。そしてゲットした後には速攻攻略してその最短記録を競い、すぐにゲームソフトを売却するという現象が巻き起こっていたらしい。
そんなことはテレビのニュースで見たり大きなお兄さん達が夢中になってることであって、まさか自分の身近で起こってるなんて…
のんちゃんが学校を休んだのはドラクエを攻略するためだったなんて…(心配したじゃんよー)
『ノンちゃんスゲー!』またもや私は思った。
この時にノンちゃんはゲームの達人であるという情報が私の脳裏に刻み込まれたのだ。
我、ファミコンジャンプにどハマりして廃人になりかける

(お、おもしれえ…)
時を同じくして、当時私はファミコンジャンプというゲームにどハマりしていた。
きっかけはお正月か誕生日か何かでゲームソフトを買ってもらえる事になり、秋葉原のゲーム屋さんで3歳年上の姉ウニちゃんに『何のゲームソフトが良いかなあ?』と頼んで、面白そうなゲームを選んでもらったところ『絶対にこれにしろ!』と言われたからだった。
(さすが我が姉君、選択を間違わない)
週刊誌のジャンプはあまり読んでなかったが(その頃の私はコロコロコミックか、島耕作に代表されるモーニング派だった)北斗の拳やドラゴンボール、お馴染みのアニメキャラクターが荒いDOSでテクテク動くことに感動し、学校をズル休みしてはファミコンジャンプをやりこんでいた。(ノンちゃんのことをあまりどうこう言えない)

(顔の中心部ふぐりのように見えるのは資料不足のせい)
占いババの館に行くと、この上なく鬱になるメロディが流れ、ますます将来が不安になったものだった。
そんなファミコンジャンプを無邪気に楽しむまっこちゃんの元に最大の難関が訪れる。
そう…レッドリボン軍のダンジョンである。
(そんなことより学校休む方が大問題だとゆうツッコミは読者の皆様のお心に留めておいて頂きたい)
今のようにインターネッツで攻略法をすぐにググったり出来ないし、Youtuberさんのゲーム配信なんてない時代である。ファミコンに夢中になった少年少女は、時々高橋名人がテレビ番組で魅せる連打に感嘆したものだった。
そして、何度挑戦しても抜け出せないレッドリボン軍のダンジョン…
私は頭を捻って策を講じた。
攻略法を奪取せよ!

このダンジョンのやつめがよおぉ…
(画像はイメージです)
その頃の私にとってゲーム雑誌といえば、近所の書店に置いてあるファミリーコンピューターと、週刊ファミ通が二大巨頭だった。
雑誌を毎週チェックして、レッドリボン軍のダンジョン攻略法を探した。
しかしポピンズの金子さんが出演しているゲーム番組でもその手がかりは得られなかった。小学生にとってそれは絶望を意味していた。
思い詰めたまっこちゃんは、ある日ファミ通の編集部にお手紙を書いた。当時何百円かの雑誌代と同じだけの切手を同封して。
そう、りぼんやなかよし(少女マンガ雑誌)の全員プレゼント作戦だ!
〜全員プレゼントとは?〜
少女マンガの「全員プレゼント」とは、特定の少女漫画雑誌の懸賞企画などで、応募者全員が何らかの景品を受け取れる企画のこと。通常、懸賞は抽選で当選者が決まりますが、全員プレゼントは文字通り、応募すれば必ず景品がもらえる点が特徴です。
(⬇️令和にも全プレが!の例)
https://www.hanayume.com/topics/?id=409
まっこちゃんは気づいていた。
お金の代わりに切手で払うだけで、これは全員がもらえる『子供むけ通信販売』なのだ、と。
そんなわけで私は編集部にお手紙を送った。
『わたしはどうしても、レッドリボン軍のダンジョンが攻略したいので、攻略法が書いてある本を売ってください』
子供の夢を壊さないでね、という圧と期待をふんだんに封筒に詰めこんで、私はファミ通編集部からのお返事を待った。
〜後編に続く〜
このお話には続きがあります!
ぜひ後編も読んでね!
⬇️カリン様からの贈り物(後編)
https://note.com/macco454/n/ne679c94fe784
