瀬戸少年院フィールドワーク&よりみちサロンin名古屋(2025/09/13)
久しぶりのnote!
どうやって書くんだか忘れてしまいました笑
今回は、愛知県での経験を記録しておきたいと思います。
少年院訪問と、子どもに対する支援を考える会への参加を通して、「環境を変容する力に乏しい立場である、子どもたちに対する支援と教育が、いかに社会の形成に大きく影響するのか」を学んだ一日となりました。
瀬戸少年院見学
愛知県瀬戸市にある、瀬戸少年院を見学させていただきました。
全体を通して、「少年院」というものに対して抱いていたイメージが大きく変化しました。
とても厳しくて、殺伐とした雰囲気の場所なのかと思いきや、まるで学校のように、教官の皆さんの少年に対するあたたかさと愛を感じる場所でした(これはひとと場所によるのかもしれませんが)。
少年院にはどこにでも院歌があるんだそうです。新しく入院していた少年がこの歌を知っていて、何故かと尋ねると、「酔っ払った先輩が歌ってたよ」と教えてくれたこともあったとか。
学校の校歌と同じで、歌った分だけ刷り込まれていくんだなと、歌の力を感じたほっこりエピソードでした。
施設見学では、朝礼をする広場や朝顔をプランターで育てている様子も見て、本当に学校のようにあたたかな雰囲気を味わうことが出来ました。
少年院とは
少年院は、家庭裁判所の審判により保護処分として少年院送致の決定を受けた、おおむね12歳以上26歳未満の非行少年を収容します。
罰を与えるということではなく、明るい環境と規律ある生活の下で、自覚に訴えながら在院者の特性に応じた適切な矯正教育その他の健全な育成に資する処遇を行うことにより、改善更生と円滑な社会復帰を図る施設です。
小学生で少年院に入ったケースは今までにはなく、現在では、18-19歳の特定少年が、少年院入院者の半数弱を占めているそうです。民法上の少年年齢は18歳未満となりましたが、少年法上は18、19歳も(特定)少年とされるので、一度家庭裁判所へ行き、刑罰を与えるか保護すべきかが判断されます。
家庭裁判所から検察官に送られた場合(刑罰を与えるべきとされた場合)は成人と同じく裁判所へ行き、少年刑務所や刑務所に収容されることとなります。保護すべきと判断された場合のうち、少年院送致は最も重い処置です。
少年院には、犯罪的傾向の進度や心身の著しい障害の有無等により第1種から第5種までの種類があります。瀬戸少年院は、第1種と第5種にあたります。
(1:全国の少年院の9割、非行が進んでおらず障害もない
2:非行が進んでいる
3:医療的措置が必要
4:少年刑務所に配属されたが、16歳まで少年院で保護するという制度の対象者が収容される。この制度ができた理由は、少年刑務所には18歳以上がメインで、14-16歳くらいの子にとっては馴染みにくい環境であるからだとか。ちなみに、この決定がなされてから一度も対象者は出ていないそう。
5:保護観察を受けていた18歳〜19歳の「特定少年」が、保護観察の遵守事項に重大な違反をして、社会内での改善が難しいと判断された場合に収容される施設。令和3年から導入。)
瀬戸少年院の歴史
日本における少年院は大正12年の東京多摩・大阪難波の2カ所に開設されたのが初まり。
その次3番目が昭和9年に開設された瀬戸少年院だそうです。
瀬戸少年院の別名は陶淘塾。「陶芸のまち」と「淘汰(綺麗なものを残して除きたいものを捨て去るという意味がある)」がその名前の由来なんだとか。
瀬戸少年院の規模
収容人数は定員122名(寮の個室、20人ほどの集団部屋数の合計)、現在は97名で収容率は約8割だそうです。
あまりに多すぎると個室・集団の調整がしづらくなるので、7-8割が適切だが、家庭裁判所の決定によりどうしても人数は変動するとか。
入院数は、全国でも瀬戸少年院でもそのトレンドは同じで、R4までは減少、R6まで増加の傾向にあるようです(理由はよくわからないとか)。瀬戸少年院の収容人数は、去年までは50名ほどだったのが現在では2倍近くに増えているそう。これは何か理由がありそうで、でも全く予想がつかなかったです。
瀬戸少年院で働く方々
職員は公安職80名、行政、医療職(医務課長、お医者さん)が1人づつ。
昔は男子の少年院には、男性職員だけが勤務していたそうですが、現在瀬戸少年院では職員のうちの女性の割合が17%になっています。
法務教官になるための資格試験があり、教員免許は必要がないそうです。採用は各施設ごとで行いますが、一度法務教官になると、立場によって異動があることもしばしば。
心理・福祉を学んだ学生、愛知県近辺は日本福祉大学卒業者が教官を目指すことが多いそうです。
院長の下に庶務、医務課と、教育、支援の首席専門官がおかれ、時々視察委員会の目が入っているとか。
医務官について
医務官とは、矯正施設で働く医師を指します。
専門は関係なく、瀬戸少年院で働かれている方は心臓血管外科が専門なんだそう。不眠、市販薬物の依存(ex)痛み止めのオーバードーズ)などが、少年が抱える医療課題のうち問題視されがちなものだそうです。
医務官の方とは別で、精神科の医師は定期的に診察しているとか。
医務官は、公務員と同じ給料であり、志望する人は少ないのが現状のようです。
矯正教育
矯正教育の内容は、生活・職業・教科・体育・特別活動の5つ。施設によってこの中身や数は異なり、さらに、段階や時期により一人一人にカリキュラムを組むそうです。
1、生活指導
特定生活指導とは、犯した罪に関連して、その習慣を変容させるための教育を行うことです。
薬物の指導など、いつ(自分がどんな状況の時に)使ってしまったのかを考えて、その時にできる別の対応を教育していくそうです。
そして、瀬戸少年院には、特有の「多文化共生プログラム」というものがあるそうです。
瀬戸市は、工場が多く、海外から来て働かれる方が多い地域です。そのお子さんなど、海外にルーツを持つ方が、収容者の1-2割を占めます。そういった方は、見た目が日本人と異なることから、日本で生まれ育ったのに「日本語わかる?」と聞かれることやいじめられることも多く、「肌の色も違う自分は周りから下に見られている」と生きづらさを抱え、不安を紛らわすために目立ちたい一心で地元の不良グループとつるむ....といった経路を辿ることも多いようです。この教育により、周囲とうまく付き合うための、そして自分を肯定するための術を身につけます。この教育を受け、海外にルーツを持つ少年が、「少年院で学んで1番変わったこと」として自分を好きになれたことを挙げていたとか。
2、職業指導
ガス溶接技能、高所作業車運転技能、ビルクリーニング技能など(建設関係が多い)の資格を取得させます。資格自体だけでなく、「自分で何かを挑戦して合格する体験をする」「勉強する習慣を身に付ける」ことが目的なんだとか。
ハーバリウム(瓶に特殊な薬液とドライフラワーを入れたもの)を制作し、販売戦略を考えたり、農業、陶芸、IT技術などの能力を身につけることが出来るそうです。
特に陶芸については、施設見学でその工房を見せていただきました。工房内に窯があり、その場で完成させることが出来る点や、作品の迫力と美しさに驚かされました。
3、教科指導
高卒認定試験を受けられます。
小学校低学年レベルの勉強からわからない、という子が多いが、少人数で教えることで、理解してくると勉強が好きになる子も多いとか。
4、体育指導
夏場は水泳を、7月から2ヶ月くらい行うそうです。親からの虐待で、水につけられた経験があると、水を怖がる子が多いというエピソードには衝撃を受けました。
5、特別活動指導
月に一回の年間行事があり、特に、10月の運動会は親御さんにも参加してもらうとか。
瀬戸市役所での福祉マルシェや、せともの祭りなど地域での活動には、少年たちの作品を出品することもあるそうです(ただ、その場は不特定多数の目に触れる場所なので、少年たちが実際に販売を行うことはほとんどないとか)。
また、社会福祉活動として保育園や介護施設で、庭園、車椅子の清掃ボランティアなどを行っているそうです。
社会復帰支援と親御さんとの関わり
少年院から出た子供たちは全員社会に出ることになりますが、受け入れ先がないと出て行くことは出来ません。面倒を見てくれる保護者がいることが多いですが、親御さんも問題を抱えている場合は、少年院所属の社会福祉士が相談を受け、家族全体の問題としてその少年の退院を計画します。
少年院に入院する子どもたちの中には、親との関係に問題を抱える子も多くいます。
少年院の機能として、親と子の間に距離を持たせて、子供が自分のことを見つめ直す時間を確保すること、また、親御さんへの負担を減らしてストレスが子どもへの対応に現れることを防ぐことが挙げられます。
退院後の親御さんの受け入れが難しい場合(1-2割)は、アパートなどの宿を準備し、引き受けてくれる企業(就労支援施設など)に協力を仰ぐこともあるそう。この場合、出所前から面会を重ねることで信頼関係を築いておくことが出来るようです。
しかし、事件内容によっては、退院後も監督が必要な場合があり、そうなると同居が求められることも。引受人として相応しいかどうかは、保護監察場が決定し、条件が難しいと入院期間が伸びることもあるとか。
働くことが出来る年齢の場合は、このように少年院内で就職先を決めることが出来ます。退院後、仕事があるか否かで再度非行に走るかどうかが2倍近く変わるとも言われています。
一方で、働くことのできない中学生がどこに出ていくかは難しい問題なんだとか。親元に帰れない場合は、児童福祉、児童養護施設に行きたいところだが、少年院を出た後で受け入れてくれる施設は少ないのが現状なんだそうです。
このように、少年院にいたという経歴はそれ以降の人生に大きな影響を及ぼしかねないので、その個人情報については、厳重に管理されるべきものです。
少年院では、退院者からの相談を随時受け付けており、近況報告を受けることもあるとか。
職員の方が少年と関わる上で気をつけているポイント
子供と接するときには、あまり高く、大きな声を出さないように、ゆっくり低い声で話しかけるようにしたり、急な動きをしない、怖がらせないことを心がけているそうです。
人はすぐには変われないことを常に意識しつつ、動機付け面接のアプローチ、オープンダイアローグやリフレクティングを通して、一方的な指導ではなく、少年の話をよく聞き、本人に頭を使って考えてもらうことを目指しているとか。
少年院は、逃げられない場所です。
入院する少年の中には、職員を今まで接してきた大人と比較して「尊い大人に見える」という子も多いようです。
これは、少年院の中では、「最初は少し避けられてもしつこく追いかけることができるから」なのではないかと仰っていました。
社会では一度逃げられてしまうとそれ以上後を追うことは難しいことです。
粘り強く、長く関係を続けることが、子どもと信頼関係を築く基礎になるのではないかと思いました。
よりみちサロンin名古屋

愛知PFS協会について
少年院見学が終わって、ホテルに着いて爆睡。想像以上に疲れていたみたいです。
会場だった愛知PFS協会についての説明を受けました。PFSはpersonal future supportの略。
「何だか怪しそう」というのが名前の決め手になったと仰っていたのが面白かった(笑)。
愛知PFS協会は実に様々な事業に取り組まれていますが、今回施設見学にあたっては、
通信高校の補助校の機能について、詳しくご説明いただきました。
一般的な通信高校の補助校には学費が高額で通えない人が多いそうですが、相場の半額(maxで60万くらい)の学費としているそうです。
尚且つ、全体のうち6-7割の生徒に、申請を受けたら必ず補助を出しているそう。補助によって、さらに利用費は安くなり、月額15000円、年間18万くらいの学費で参加でき、高卒の資格が得られるようになるとか。補助の財源は寄付がメインなんだそう。
建物の3階は3つにゾーンが分かれていました。ピンクは机が並にテストを受けたり勉強したりするスペース、グレーは図書館(ちょっと静かに)、奥は何でも食べたりゲームしたりして休憩できるスペース。生徒数は60名程度ですが、1日あたり20人ほどが過ごすそうです。
寄付が足りなくても、補助は必ず出して運営しているので、年間300-500万の赤字を出している事業となっているとか。
その赤字の部分を、複数の事業を設けることで補填できるようにしているそう。
他にも、繁華街である栄の街中を夜中に歩いて、「なんかのむー?」と支援者らしくない声の掛け方をしながら、相談に乗る活動や、少年院での面会なども行われているとか。
少年院での面会は、法務省が行う、SF(soft landing)モデルという事業に基づいて行うこともあるそう。少年院からお金をもらって、少年と時間制限なしで面会を行います。面会室とは限らず、様々な場所で対話を行い、本人が信頼できる大人を作っていくことが主な目的のようです。少年訪問についてお話を伺う中で印象に残ったエピソードは、「男の子は、女性が行くことでたまにしか話さないことをポロポロ声に出してくれることもある、母性のようなものを感じるのかもしれない」というお話でした。
だからこそ、女子の入院者のところには同性の支援者が面会に行くことが多いようですが、
男子だと男性だけでなく女性を連れて行くことも多いとか。
文化的再生産論
楓の丘こどもと女性のクリニックの新井先生から、児童精神科医として働かれる中で得た知見についてお話をいただきました。
最も印象に残っているのは、
「学校には階級をシャッフルする側面があるが、学校での勉強をよしとする性向、態度は、就学以前に獲得される文化資本である」
というお話でした。
ちょうど先日、学校でSDHに関する授業を受けたこともあって、子どもは環境を変容させる力に乏しく、その影響を本当にもろに受けてしまうということを学んだばかりでした。
そんな中で、手を差し伸べてくれる大人がいるか、それを受け入れられるかどうかで、人生が大きく左右されると思っています。
基本的な教育をきちんと受けることは子どもたちが自分自身の力で将来歩む道を選択していくために必要不可欠だと考えています。
どのようにして、苦しい環境にいる子どもたちと関わりを持つのか、そして対話し、その苦しみや悩みを引き出せるのか、それらを実践されている方々からお話を伺えたのは、非常に貴重な経験だったと思っています。
一方で、中途半端には関わることが出来ないという責任の重さも感じました。継続的に、そして時間をかけて関わるからこそ、信頼関係が築けます。求められた時にすぐに応じられる余裕がなければ、本当に困ったときに相談しやすい相手にはなれないでしょう。
また、広く手を広げて受け入れ体制を維持しておくことが大切である一方、金銭的に考えると赤字になりがちな事業になると思います。
どのように持続的な形を保つのかも難しい課題だと感じました。
慎重に相手の気持ちを想像すべき
また、私たちが医学生という立場で、「学習、経験のため」という目的で彼らと関わることに関しても、様々な意見があると思います。
以前、愛知医科大学の学生が、歌舞伎町で課外実習を行ったという記事を読みました。
それに対する反応として、
「金持ちが弱者を煽っている」「社会の一面だけしか捉えていない偽善の奉仕活動に見える」「様々な事情がある人達を興味で覗き見している行為である事を理解したほうがいい」
という意見も見られました。
周囲の方の意見ももちろんですが、実際接した相手がどのように感じるかも、慎重に考えなければならない問題だと感じました。
これらのことを考えると、何も提供できない私たちでも出来ることは、支援ではなく繋がりを作ることなのではないかと思いました。
不特定多数に対してアプローチするのではなく、苦悩を抱える、出会ったひとりひとりの方と知り合って、その後もつながり続けるということなのではないかと思います。
ぜひ皆さんのご意見も伺いたいです。
おわりに
本当に色々なことを考えさせられました。
そして、自分が関心を持つ領域を再確認することが出来ました。
これからも子どもと社会の関わり、そこで形作られる生活習慣や価値観と、健康との関わりを学んでいけたらいいなと感じています。
お話してくださった皆さん、そして素敵な機会を下さった皆さん、ありがとうございました!

